東京23区の南端、大田区にある大森駅は、高級住宅街と繁華街を併せ持つ。
東側の改札を出れば雰囲気のいい飲み屋もあるので、飲兵衛にとって穴場である。
『とん兵衛』はこの街でも有数の老舗。年季の入ったのれんに赤ちょうちんとすりガラスで、外から店内が見えないから、酒場に不慣れな人だったらおじけづくだろう。
店に入ると、左手の焼き台にコワモテの店主。
串焼きに集中している店主は常に無口で、接客は若い男性が担当するようだ。
看板メニューの「すやき」は一番人気のカシラ(豚の頭の肉)を串5本分使っている。焼き上がったら串から外して皿に盛り付け、ショウガと甘めのしょうゆをかける。
いたってシンプルな味付けだが、これがうまい。もつ焼きの常識が変わるくらいうまい。
焼き物の注文は3本から。まとめて焼くので肉から出た脂が煙となって肉全体を包み、さらに香り高く仕上がる。うまい店にはこういった味の秘密があるのだ。
今の店主が3代目で、最近は4代目も手伝いに入る。この一皿を守り続けてほしいと勝手ながら思うばかりだ。
東京都大田区大森北1-9-4
03ー3761ー2478
営業時間:17時~21時30分
休み:日曜日
撮影・文/キンマサタカ
週刊実話2025年10月16日号より
※情報は取材当時のものです
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