現在、リーグ・アンにはレアル・マドリーとバルセロナから、それぞれリヨンとモナコにレンタル移籍中の若きストライカーがいる。エンドリッキとアンス・ファティだ。しかし、両者が置かれている立場は大きく異なる。それは移籍形態に端的に表われており、前者がシーズン終了後にレンタル期間満了を迎えるのに対し、後者には1100万ユーロ(約20億円)という、かつてのエース候補からすれば格安と言える買い取りオプションが付帯している。
アンスの成長をストップさせたのは、言うまでもなく怪我だ。モナコ加入後も負傷癖は払拭されておらず、データサイト『Transfermarkt』によると、今シーズンすでに3度の戦線離脱を経験している。ただ、その期間はそれぞれ5日、40日、12日と、バルサ時代の長期離脱に比べれば深刻な事態には至っていない。そして、そんな中でも、全コンペティションで25試合に出場し9得点を記録している。
スペイン紙『AS』のパリ駐在特派員、アンドレス・オンルビア記者は、「不動のレギュラーというわけではないが、左サイドから中央までこなす万能性と得点感覚の鋭さは、モナコが買い取りオプションの行使を検討するにあたって、納得させるに十分な属性となっている」と伝えている。
最大のネックは年俸額だ。『L’Équipe』紙によれば、アンスが現在受け取っている給与は手取り月額で25万ユーロ(約4700万円)にのぼる。レンタル元のバルサは今夏の補強の最優先事項の1つに「9番」を掲げているが、アンスの名前は完全に忘れ去られているのが実情だ。復帰したとしても、もはや居場所を確保するのは極めて困難と言わざるを得ない。
バルサ寄りのスポーツ紙『SPORT』は、「カンプ・ノウで頭角を現わし始めた当時の爆発的な力強さはいまだ示せていない。フットボール界は、彼が不死鳥のように復活する奇跡を切望している」と強調。オンルビア記者は、「モナコに残るかどうかは、本人が待遇の見直しを図るクラブの条件を呑めるかどうかにかかっている」と結論づけている。
一方、1月にエンドリッキがリヨンに迎えられたのは、14年間タイトルから遠ざかっているチームにとっての「請負人」としてだった。本人も入団会見でその使命を自覚する言葉を口にしており、マドリーで出番に恵まれなかった悔しさをぶつけるかのように躍動。デビューから公式戦5試合で5ゴール2アシストという驚異的な数字を叩き出し、1月のリーグ・アン月間最優秀選手賞に輝いた。 リヨンのテクニカル・ディレクター、マテュー・ルイ・ジャンは当時「彼は非常にうまく、そして迅速に適応した。ここにいるのは偶然ではない。我々は攻撃に勢いをもたらしてくれるストライカーを緊急に必要としていたし、リヨンは彼のようなレベルの若き9番が成長するのに適した場所だと信じていた。考え方はシンプルだ。彼にとっても我々にとっても、ウィンウィンの関係にならなければならない」と語っていた。
しかし、そのペースが落ち始めるのと時を同じくして、リヨンはクープ・ドゥ・フランス(フランス杯)とヨーロッパリーグから立て続けに敗退。タイトル請負人という目標はあえなく絵に描いた餅となり、リーグ戦でも現時点で5位とCL出場圏外に位置している。
フランスメディアの風当たりも強まる中、2月22日にストラスブールに1-3で敗れた後、元フランス代表監督のレイモン・ドメネクはこう言い放った。「エンドリッキにはがっかりだ。アタッカーであれば誰もが守備の仕事をこなし、パスを引き出し、奥行きを作るプレーをしなければならない。彼はそのどれ一つとしてできていなかった」
そんな中、リヨンのフォンセカ監督が試合前日の記者会見で「さらにレベルを上げなければならない」と発破をかけた直近のロリアン戦(2-0)で、エンドリッキは2点に絡む活躍を見せた。ここまで全コンペティションで6得点・6アシストを記録している。好不調の波があるとはいえ、持ち前のシュートへの意欲の高さ、得点力を発揮しているのは間違いない。
米メディア『The Athletic』のマリオ・コルテナガ記者によると、マドリーはライバル関係にあったゴンサロ・ガルシアを、将来的な優先交渉権や買い戻しオプションを維持する形で放出。これによりFWの陣容を整理し、来シーズンのスカッドの一員としてエンドリッキを迎え入れる意向だという。
タイトル請負人とまではいかなかったが、実戦で試合勘を取り戻した収穫は大きい。そのアピールのかいあり、3月には1年ぶりにブラジル代表に復帰。クロアチア戦(3-1)では後半の途中出場から2得点に関与。目標とするW杯出場にも着実に近づいている。
文●下村正幸
【動画】ブラジル対クロアチア 親善試合ハイライト【動画】敵地で1-0勝利! 日本がイングランドを倒した歴史的一戦
【動画】ボスニア、スウェーデン、トルコ、チェコが勝利! 激闘となった欧州予選プレーオフ決勝4試合のハイライト

