
豪ミュージアムズ・ビクトリア(Museums Victoria)の研究チームはこのほど、人間の子供ほどの大きさを持つ巨大ハリモグラを発見しました。
またこのハリモグラの化石は、新たに発掘されたものではありません。
実は約120年前に採集されながら、長いあいだ見過ごされていた「わずか7センチの頭骨の断片」です。
この小さな骨片が、巨大な絶滅動物の存在を改めて浮かび上がらせました。
研究の詳細は2026年4月13日付で古生物学誌『Alcheringa: An Australasian Journal of Palaeontology』に掲載されています。
目次
- 子供サイズの巨大ハリモグラはどんな動物だったのか
- 見過ごされていた化石が語る「もう一つの発見」
子供サイズの巨大ハリモグラはどんな動物だったのか
この巨大ハリモグラは「メガリブグウィリア・オウェニー(Megalibgwilia owenii)」という学名の絶滅した既知種です。
M. オウェニーは、更新世(約258万〜約1万1700年前まで)の一時期に生息していた単孔類(卵を産む哺乳類)の一種で、現在のハリモグラの近縁にあたります。
しかし、その姿は現生種とは大きく異なっていました。
体長は約1メートル、体重はおよそ15キログラムと推定されており、これは4歳児ほどの大きさに相当します。
現代のハリモグラの約2倍に達する、まさに“巨大版”といえる存在です。
骨の特徴から、この動物は非常に筋肉質で力強い体をしていたことがわかっています。
肩や前肢には強い筋肉の付着痕があり、硬い土を掘ったり、倒木を引き裂いたりする能力に優れていたと考えられます。
また、長くてまっすぐな歯のないくちばしを持ち、口の中には独特な骨の隆起がありました。
こうした構造は、現代のシロアリ食中心のハリモグラとは異なり、昆虫の幼虫などを掘り出して食べる生活に適応していた可能性を示しています。
【巨大ハリモグラの発見された化石の画像がこちら。画面一番左がそれで、右2つは他種のハリモグラ】
さらに重要なのは、この種の分布です。
これまでM. オウェニーの化石は、オーストラリア各地で断片的に見つかっていましたが、今回の化石が採集されたオーストラリア南東部ビクトリア州からの確実な記録はありませんでした。
この化石が見つかったのは、ビクトリア州東部の「フォール・エア・ケーブ(Foul Air Cave)」という洞窟内で、時期は今から約120年前です。
この洞窟は、天然の落とし穴のような構造をしており、多くの動物が落下して死亡し、さまざまな骨が堆積していることで知られていました。
今回の巨大ハリモグラの化石は、彼らの分布域の空白を埋める決定的な証拠となり、この巨大ハリモグラがより広い範囲に生息していたことを初めて示したのです。
見過ごされていた化石が語る「もう一つの発見」
今回の研究の最大のポイントは、新しい場所から化石が発見されたことではありません。
むしろ、すでに博物館に収蔵されていた標本が、現代の視点で再検討されたことで、初めてその価値が明らかになった点にあります。
約120年前に採集されたこの化石は、長いあいだ正体がわからないまま保管されていました。
しかし、近年の比較研究や資料整理によって、ようやくその正体が特定されたのです。
この事実は、古生物学において重要な示唆を与えています。
すなわち、新たな発見は野外調査だけでなく、既存のコレクションの中からも生まれるということです。
さらに、ビクトリア州や南オーストラリア州では、M. オウェニーのとは異なる特徴を持つ大型ハリモグラの化石も報告されています。
これらが同種の変異なのか、それとも未知の別種なのかは、今後の再検討に委ねられています。
もし別種が存在したとすれば、更新世のオーストラリアには、複数の巨大ハリモグラが共存していた可能性すら浮かび上がります。
参考文献
A Child-Sized Echidna Once Roamed Australia, Century-Old Fossil Reveals
https://www.sciencealert.com/a-child-sized-echidna-once-roamed-australia-century-old-fossil-reveals
元論文
The first Victorian record of Owen’s Giant Echidna Megalibgwilia owenii from Buchan Caves in East Gippsland, Australia
https://doi.org/10.1080/03115518.2026.2643598
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

