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〈遺族がいない死者〉増える無縁遺骨と、家族葬、直葬、ゼロ葬の広がりが示唆する「葬儀儀礼」に対する価値観の揺らぎ

〈遺族がいない死者〉増える無縁遺骨と、家族葬、直葬、ゼロ葬の広がりが示唆する「葬儀儀礼」に対する価値観の揺らぎ

葬送儀礼への価値観が揺らぎ始めている

葬儀の形態だけでなく、その本質そのものが変化してきているとの指摘もある。文化人類学者の波平恵美子氏は、現在の葬儀では「葬送」の「送」の部分の儀礼が、ほとんど意味を持たなくなっていると述べている。

本来、仏式であれ神式であれキリスト教式であれ、死者をこの世からあの世へと送るために葬儀は行われてきた。しかし、人々の「死者の世界」に対するイメージが希薄になり、死後の世界がぼんやりとしたものになってしまったことで、「死者を送る」という考え自体が不明瞭になっているという。

かつては、きちんとした葬儀を行わなければ「故人が浮かばれない」、すなわち故人の魂が成仏できず、この世をさまようといった意識があったが、そうした感覚も失われつつあるのかもしれない。

私が喪主経験者500人を対象に実施した2024年の調査では、回答者の約2割が「葬儀は大切ではない」、約3割が「通夜は大切ではない」と答えており、葬送儀礼そのものに対する価値観が揺らぎ始めているといえる。

民俗学者の新谷尚紀氏は、葬送儀礼において供養という要素が弱まり、死を穢れと捉える感覚も薄れ、死者との記憶や交流を重視する新たな段階に入ったのではないかと指摘している。葬送儀礼の中心は故人ではなく遺族となり、死者への供養ではなく、遺された者の心の安定が儀式に求められるようになってきているという。

こうした葬儀を含む葬送儀礼の変質は、「世俗化」や「私事化」と呼ばれる。同朋大学特任教授の蒲池勢至氏によれば、葬儀の世俗化とは、葬送儀礼における宗教性が薄れ、葬儀が商品化されることであり、伝統的あるいは宗教的な形式から、遺族のニーズに応じて葬儀が演出されるようになってきたことを指す。

また、「私事化」とは、葬儀の簡素化や多様化が進み、社会的な儀礼や慣習であった葬儀が、故人や家族の意思を優先した形で実施される傾向を意味している。

文/坂口幸弘 写真/Shutterstock

人は生きてきたように死んでいく 「死の準備」してますか?

坂口 幸弘人は生きてきたように死んでいく 「死の準備」してますか?2026/3/18990円(税込)240ページISBN: 978-4334109257死や死別は誰もが経験する。切な人とのつらい別れを経験した人も少なくないだろう。「多死社会」を迎えつつある日本で、どのように自分の死を迎えるか、大切な人の死に向き合うかの現実味は増しているが、迫りくる死や予期せぬ別れに直面して戸惑い、どのように向き合えばよいのか分からず途方に暮れることもある。臨床死生学・悲嘆学を専門とする著者が死に関する研究データなどをもとに現代における死との向き合い方を考察。

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