イランはこうして長い年月をかけ高濃縮ウランを確保してきたが、それを爆弾にするための起爆装置の開発をしていないことをもって、自分たちは核兵器を開発していない証拠としている。しかし、そちらはそれほど難しい技術ではない。関連の軍民共用技術を開発していたこともあり、本格的に乗り出せば、半年あるいは1年あれば完成できると推測されている。イランの「核兵器開発はしていない」という言葉には、こうしたウラがあるのだ。
イランの対外的なテロ行為もひどいものだ。イランはレバノンのヒズボラ、パレスチナのハマス、イラクのシーア派民兵、イエメンのフーシ派などを「支援している」としているが、「助けている」というレベルの話ではない。
筆者は中東のテロ問題をカバーしており、イランの工作機関の対外テロ支援問題はもう30年以上も追っているが、イランはこれらの“手下”勢力を育成するにあたり、全面的に背後で黒幕として暗躍している。もともと外国の反乱分子をリクルートし、組織化と組織運用を指導し、武器と活動資金を供与。軍事訓練を施し、闘争方針を指導し、作戦・戦術を教えている。単なるスポンサーではなく、一からの指導者という立場なのだ。かつてイラン工作員がシリアのアサド政権の兵士たちを指導している動画を見たことがあるが、上からの、まさに鬼軍曹のような態度で命令していた。支援者=被支援者という関係ではなく、完全な上下関係なのだ。
イランはこうした外国人の手下たちを使い、多くの破壊工作を行ってきた。90年代にはヒズボラを使い、欧州や南米などでユダヤ人やイラン反体制派を狙った暗殺や爆弾テロを数多く行ってきた。00年代以降はイラクでシーア派ゲリラを育成し、万単位のスンニ派住民を殺害させてきた。10年代はシリア内戦にヒズボラや外国人シーア派民兵を送り込み、万単位の虐殺を実行させた。
現在の中東の大紛争は、もともと23年10月のハマスのイスラエル南部襲撃テロから始まっているが、このテロも、イラン工作機関がハマスに武器と資金を供与し、ヒズボラとの共闘を指導し、戦術を指南していなければ実行できなかった。実際、中東で発生する流血の事件の背後のほとんどにイランの破壊工作の痕跡がある。イランは中東紛争の元凶と言っていい。
黒井文太郎(くろい・ぶんたろう)/1963年福島県生まれ。大学卒業後、講談社、月刊「軍事研究」特約記者、「ワールドインテリジェンス」編集長を経て軍事ジャーナリストに。近著は「日本黒幕大全」(徳間書店)。

