【スージー鈴木の週刊歌謡実話第30回】
キャンディーズ『微笑がえし』
作詞:阿木燿子
作曲:穂口雄右
編曲:穂口雄右
1978年2月25日発売
48年前を思い出させるラストシングル
「あれから48年も経ったのか!」と驚きます。というか、毎年4月になると驚く。今年は48回目の驚き。
キャンディーズ解散コンサートが行われたのが1978年の4月4日でした。あの大騒ぎから今年で48年。
その大騒ぎぶりをリアルに思い出させるのが、私の持っているLP『キャンディーズ ファイナルカーニバル プラス・ワン』。音が悪いのなんの。ちょっとしたブートレグ(海賊盤)よりも音質が劣悪。でもその分、あの大騒ぎ、あの熱狂がひしひしと伝わってくるのです。
今週取り上げる『微笑がえし』は、そんな大騒ぎの解散劇を決定的に盛り上げた、彼女たちのラストシングル。この曲を聴くと、48年前を思い出させるどころか、意識が48年前にタイムトリップしてしまいます。
キャンディーズをブレイクさせた『年下の男の子』(’75年)、『春一番』(’76年)を手掛けた穂口雄右が作曲。キャンディーズのヒット曲のタイトルや歌詞を散りばめた、けれん味たっぷりの作詞は阿木燿子。
ですが、この曲から強く立ち込めてくる「78年臭」は、歌詞の設定にあると思うのです。「同棲歌謡」とでもいうべき状況設定。
「同棲」! ザ・70年代ワード。
今では普通のこととなっている(らしい)同棲ですが、当時は、かなり攻めた行動でした。「結婚前なのに一緒に住むなんて!」親や周囲から白い目で見られた時代に、そうですね、小田急線の経堂駅から徒歩12分ぐらい、六畳一間のアパートで一緒に住むのです。
部屋にないのは風呂。あるのはちゃぶ台、14型のテレビ(室内アンテナ付)、灰皿(底にコーヒーのかすが敷き詰められている)、そして服を収納するファンシーケース(検索を)。
【スージー鈴木の週刊歌謡実話】アーカイブ
シングル売上が約83万枚の大ヒット
そんな風景を描いた「同棲歌謡(フォーク)」の代表作は、何といってもかぐや姫『神田川』(’73年)ですが、布施明『積木の部屋』(’74年)やチューリップ『サボテンの花』(’75年)も忘れられません。
しかし『微笑がえし』が特異なのは、同棲を解消して、アパートを引き払う日を舞台にしていることです。
「机本箱 運び出された荷物のあとは 畳の色がそこだけ若いわ」――まぁ何とリアルで切ない「同棲解消アパート引き払い歌謡」でしょうか。
当時、台頭していたピンク・レディーは小学生のファンが多かったのですが、対してキャンディーズに多かった「同棲解消アパート引き払い感覚」が通じる大学生ファン(その中の1人が慶応大学の石破茂くん)を意識しているようにも感じるのです。
そんな『微笑がえし』。歌詞の特異さに合わせるように売れ方も特異でした。
約83万枚のシングル売上は、オールキャリアでダントツ。そしてラストシングルにして初、そして念願のチャート1位を獲得するのです――と、今でもありありと思い出せる劇的な解散劇がもう48年前かぁ。
「週刊実話」4月23日号より
スージー鈴木/音楽評論家
1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。
