【LiLiCoオススメ肉食シネマ 第328回】『これって生きてる?』
アレックス(ウィル・アーネット)とテス(ローラ・ダーン)の夫婦は、2人の子供にも恵まれるも、中年期を迎えて、これまで置き去りにしてきたそれぞれの夢が、結婚生活を終わりへと向かわせる。そんな失意の中、何気なく訪れたニューヨークのコメディークラブで、思いがけずステージに立つ機会を得るアレックス。夫婦の赤裸々な関係を笑いに変えながらステージを重ねるうちに、新しい生きがいを見いだしていく。
夫婦崩壊に決定的な理由はない
独身、既婚、事実婚、同棲…どんな環境かによって、この作品の受け止め方が変わると思います。
夫のアレックスと妻のテスは2人の子供にも恵まれ、生活は順風満帆に見えた。だけど、子供も大きくなり年齢を重ね、これまですべての時間を家族に充てていた2人はどこかしっくりせず、夫婦関係が終わりそう。
絶望を感じながら、たまたま飲みに行ったクラブで、スタンダップコメディーにエントリーしてしまうアレックス。戸惑いながらも、ステージ上で破綻した結婚生活のリアルな話をすると、少しだけウケた。
自分の不幸を話すことで、なんだか気持ちが楽になるようで、この経験は確実に彼の心に何かをもたらした。ステージに立つ楽しさにハマり、次第に仲間も増え、人生が少しだけ明るくなったと感じる日々。一方、妻のテスは、自由に好きなことをやりながら生活。“女性の方が意外とあっけらかんとしてる?”とか思ったりして…。
この夫婦が、こうなったきっかけは? と思うかもしれないけど、夫婦の仲が悪くなるのに“これ”といったきっかけなどありません。
積み重なったものや気持ちの変化、自分のために生きたいという願望。
だから、私はこの作品がリアルだと感じました。一番、特別な他人だからこそ、そんな気持ちにもなる。その夫婦には夫婦なりの積み重ねがあって、他の夫婦とは比べられない。理由なんてどうでもいい、彼らの人生の一部を覗き見してる気分で見てほしい。
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心の曇りを洗い流す良質な物語
劇中に仲間たちが『アメイジング・グレイス』を歌いながらご飯の支度やテーブルセッティングをするシーンがあって、その雰囲気がとっても素敵で、“仲間って最高だなぁ”と改めて思いました。
長年連れ添った人たちがどれだけ大事かもこの作品で感じますし、もしもあなたにパートナーがいて、最近何かがしっくりこないことに悩んでいたら、この1本を見れば、そんな気持ちが洗い流されると思います。私は夫に優しくできました! へへ。
『アリー/スター誕生』のブラッドリー・クーパー監督作。日本でも大人気で、本作にも出演しています。一緒にご飯したときに真面目な方だなぁと感じましたが、この作品にも表れています。しっかりと描く! それが彼のスタイル。この結婚生活を覗き見したら、あなたも得られる何かがきっとあります。
『これって生きてる?』
監督・脚本・製作:ブラッドリー・クーパー 出演:ウィル・アーネット、ローラ・ダーン、アンドラ・デイ、ブラッドリー・クーパー、クリスティーン・エバーソール、キアラン・ハインズ 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 4月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他全国公開
「週刊実話」4月23日号より
LiLiCo(リリコ)
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。
