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「もうからないけど必要」無償の学習教材eboardが目指す“学びをあきらめない社会”

「もうからないけど必要」無償の学習教材eboardが目指す“学びをあきらめない社会”

「もうからないけど必要」無償の学習教材eboardが目指す“学びをあきらめない社会”

 「授業に集中できない」「授業の内容についていけない」

 子どもたちが多かれ少なかれ抱えているであろう、学習についての悩み。しかしその背景や理由は1つではありません。障害や特性、不登校、言語の壁⋯⋯さまざまな環境に置かれた子どもたちに対し「学びをあきらめてほしくない」という思いから活動する団体があります。

 NPO法人eboard(イーボード)。主に小中学生に向け、映像授業とデジタルドリルからなるICT教材eboardを、無償で提供しています。

【元の記事はこちら】

■ 無料で学べるだけではない!eboardが重視する「学びにくさを解決するための機能」

 解消できない学習への悩みが苦手意識へと変わり、いつしか「学習をあきらめる」という判断に至ってしまう子どもたちは少なくありません。そうした状況下でeboardが目指すのは「学びをあきらめない社会」の実現です。

 その主軸となっているのが、無料で利用できるICT教材eboard。年間利用者数は200万人を超え、1万2000か所以上の学校・教育現場にも提供されています。

ICT教材「eboard」

 扱っている分野は小学生が4教科(算数、理科、社会、漢字)、中学生が5教科(数学、理科、社会、国語、英語)。また高校課程においては数学Ⅰと英語のコンテンツも扱っています。

小中学生向けの教材を中心に提供

 いずれも、動画とデジタルドリルがセット。動画で学んだ内容をすぐにドリルで復習することができます。

デジタルドリル

 世の中に無料の学習教材・サービスがさまざま存在するなか、eboardが重視しているのは「学びにくさを解決するための機能開発」。

 動画教材は1本あたり7〜10分の長さで、また画面中には講師は登場しません。シンプルな構成によって、集中しやすい環境が整備されています。

動画教材

どの学年・分野からでもはじめられる

 また、どの学年・単元からでも始めることができ、学び直しや、あるいは興味がある分野の先取りも容易に行うことができます。

■ ろうや難聴、外国ルーツの子にも配慮した「やさしい字幕」という機能

 そうした各種機能の中でも、eboardを特徴づけているのが「やさしい字幕」という機能。

やさしい字幕

 字幕は言葉や文法のレベル、文章の長さに配慮した「やさしい日本語」を元に制作されており、ろうや難聴、外国にルーツを持つ子、学びの困りごとを抱えた子を主な対象として、学習のハードルが下がるように編集されています。

 現在は他サービスでも行われている授業動画への「字幕」ですが、その先駆けとなったのはeboardでした。

 動画への字幕というのは映画やドラマなど映像コンテンツでは一般的な機能です。だからこそ動画教材にあってもおかしくない、と考えてしまいます。

 しかしeboardが動画教材への字幕に注目した2020年当時、その時点ですでに国内には多くの動画教材がありましたが、字幕がつけられていたものがありませんでした。

 なにが字幕という取り組みを阻んでいたのか、なぜeboardは字幕をつけようとしたのか。担当者に詳しくお話をうかがってみました。

■ 「もうからないけど絶対に必要」eboardが先駆けとなった、動画教材への“やさしい字幕”追加

――「やさしい字幕」の取り組みは、何をきっかけに始まったのでしょうか。

 コロナウイルス感染拡大による一斉休校期間中、ICT教材eboardのサイトには、のべ100万人のアクセスがあり、利用者が急増しました。同時に、聴覚障害の方や保護者、先生方から「映像授業に字幕をつけてほしい」という要望のメールをいただくことが増えました。

――動画教材での「字幕」は、その当時はなかったとうかがいました。

 団体として調査をした結果、(2020年当時)「教科の内容を広くあつかった動画教材で、字幕がついたものは1つもない」ということが判明しました。

 すでに多くの動画教材・映像授業などがあるなか、字幕がついているものがないということは「企業による取組みでは、コストパフォーマンスに合わない」つまり「もうからない」ということなのだろう、と私たちは判断しました。

――「もうからない」にもかかわらず導入を決めたのはなぜでしょうか?

 ICTによる教育機会保障の動きが進む中で、「取り残される子どもたち」がいる、映像授業の字幕は、もうからないけれど絶対に必要なものだと考え、NPO法人として取り組むことを決めました。

――ただの「字幕」ではなく「やさしい字幕」にすることを決めた背景をお聞かせください
 普通の字幕(発声した音声をそのまま字幕にしたもの)を作成してみたところ、手話を第一言語とするろうの子にとっては理解が難しいことが分かりました。

 そこで、字幕を分かりやすくすること、また、ろう・難聴の子だけでなく、他の理由から学びづらさを抱えている子にとっても、学習のハードルを下げるような分かりやすい字幕を作ったら良いのではないだろうか?と考えました。

 そうして「やさしい日本語(外国人や高齢者、子どもにもわかるように、難しい言葉を簡単な表現に言い換えた日本語)」をもとにした「やさしい字幕」を作ることにしました。

■ やさしい字幕は機械学習ではつけられない⋯⋯導入には1000人以上のボランティアが尽力

――「やさしい字幕」の導入にあたって、どのあたりがハードルになったのでしょうか?

 それまでの色々な検証の結果、(当時の技術では)「やさしい字幕」は機械学習等による自動化等ではつけることができないこと、eboardの映像授業約2,000本に字幕をつけるには、膨大な時間と予算が必要であることが分かりました。

ボランティア1000人の協力を得て展開

――導入のハードルは、どのようにして乗り越えたのでしょうか

 団体としてオンラインボランティアを募集したところ、個人および企業の皆さま1000名以上にご協力をいただくことができました。

 こうしたお力添えがあって、2021年8月末、約2,000本の映像授業に字幕がつき、字幕による学習機会の保障を実現しました。これらの映像授業と字幕には、すべて無償でアクセスすることができます。eboardはこの取り組みで、第5回「ジャパンSDGsアワード」(主催:SDGs推進本部、本部長:内閣総理大臣)において、SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞しました。

 字幕は作って終わりではなく、教材の改定や追加などにともなって維持管理が必要です。現在でも、こうした字幕の維持管理にはボランティアの皆さまが継続的にお力を貸してくださっています。

* * *

 学習に悩む子どもたち個人の「成績を上げる」ことは、もちろん大事です。しかしeboardが見据えているのは、さらにその先の社会。

 学ぶことをあきらめるのは子どもたちの可能性をせばめ、ひいては社会全体の可能性をもせばめてしまう恐れがあります。

 どんな環境に置かれた子どもたちでも自分にあった形で学習に取り組むことができ、学ぶことをあきらめずにいることができるのなら、社会はよりよく進んでいけるに違いありません。

 ICT教材eboardは、ご家庭での利用については無料で利用可能。経済的な事情や障害・特性などによって学習に困難を抱えている子であれば、個人アカウントを発行し、学習の記録をつけることもできます。詳細は公式HPをご確認ください。

<記事化協力>
NPO法人eboard
公式X(@eboard_jp
公式HP
教材ページ

(ヨシクラミク)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By ヨシクラ ミク | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026042001.html

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