「伝説の背番号10番」が、サッカー日本代表に戻ってくる。
先ごろ、中村俊輔氏が日本代表コーチに就任することが発表されたのだ。
現役時代は日本代表の10番を背負い、左足から繰り出す正確なキックで日本の勝利に貢献してきた。彼の加入によって日本代表のセットプレー強化はもちろんのこと、攻撃力にも大きな戦力になりそうだ。
もともと中村コーチの代表入りは、2022年カタールW杯後の第2次森保ジャパン発足時に、専属コーチではなく代表戦の期間のみ帯同する、ロールモデルコーチとして打診があった。当時の中村コーチは現役を引退して、横浜FCのコーチに就任したばかり。最終的には実現しなかったが、森保監督にとって3年越しの願いが叶ったことになる。
森保監督は中村コーチを「PK担当の責任者」という言い方をしているが、なにもPKだけの指導で招集したわけではない。攻撃面にも大きな期待がかかるのだ。
現代サッカーでは約25%の得点が、セットプレーから生まれている。だからこそ現役時代、セットプレーを得意としていた中村コーチの加入は大きい。
現在、セットプレーは前田遼一コーチが担当している。前田コーチは現役時代、ストライカーとして活躍しており、セットプレーではキックを受ける側だった。そこに蹴る側の中村コーチが加われば、セットプレーに幅が出てくる。
再会を誰よりも楽しみにしている選手は…
それだけではない。今の日本代表世代は、中村コーチの現役時代のプレーを見て育っており、誰もが一度は憧れた存在だった。現に3月のイギリス遠征に、中村コーチは「U-NEXT」の解説者として、現地で取材していた。
スコットランド戦後の三笘薫(ブライトン)にインタビューした際、三笘は笑顔を見せ、両手で握手していた。イングランド戦の前日インタビューでは堂安律から話を聞き、いきなり堂安が笑顔で「僕(会うの)初めてですよね」と言いながら、これまた両手で握手。この世代にとっては別格の存在なのである。
海外組がほとんどの今の日本選手にとって、レッジーナ(イタリア)、セルティック(スコットランド)、エスパニョール(スペイン)でプレーし、セルティック時代のマンチェスターユナイテッド戦で伝説のフリーキックを決めている中村コーチは、身近な存在だ。いろんな話を聞いて、アドバイスを受けたがっていることだろう。
同じレフティーの堂安、久保建英(レアル・ソシエダ)などは中村コーチの考え方やキックの仕方など、聞きたいことは山のようにあるはず。特に久保はWOWOWの番組で2021から2023年まで、夏に3回も対談している。特に2度目はグラウンドに立って、フリーキックを目の前で実演している。久保は中村コーチとの再会を、誰よりも楽しみにしていることだろう。
W杯開幕2カ月前に飛び込んできたビッグニュース。中村コーチが日本代表チームに合流する日、チームの空気がどう変わるのか。楽しみしかない。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。

