大分県にある日出生台演習場の静寂が、耳をつんざく爆音とともに、地獄へと変わった。
4月21日午前、陸上自衛隊が誇る最新鋭の「10式戦車」が、実弾射撃訓練中に突如として暴発。凄まじい衝撃波が砲塔を襲い、搭乗していた4人のうち3人が死亡、1人が重傷を負うという、自衛隊史上でも類を見ない大惨事が発生した。
1両約20億円といわれる「ハイテクの塊」で、なぜ前代未聞の大事故は起きたのか。どうにも不可解な謎がある、と話すのは軍事ジャーナリストだ。
「通常3人乗りの車内に、なぜ4人がいたのか、という点です。10式戦車の最大の特徴は、高度な自動装填装置によって乗員を3人(戦車長、砲手、操縦手)に削減した点にある。しかし事故当時は『安全係』としてもう1人が搭乗していた。安全係というのはいわば、教官のような監視役ですからね。本来は安全を担保するための存在が乗っていながら、なぜ惨劇を防げなかったのか。むしろ狭い砲塔内に4人がひしめき合っていたことが、人的被害を拡大させる要因だったのではないのか、との指摘があります」
謎はもうひとつある。なぜ「砲塔内爆発」という前代未聞の破裂が起きたか、だ。
通常、砲弾は堅牢な砲身を通って外へ放たれる。したがって、陸上自衛隊トップの荒井正芳陸上幕僚長が記者会見で「記憶にない」と漏らした通り、砲弾が発射される前に砲塔内部で破裂する、という事例は極めて異例だというのだ。
10式の射撃訓練は中止…90式も空砲のみの異常事態に
「もし砲身に土などの異物が詰まった状態で発射すれば、行き場を失った圧力が逆流し、砲塔を内側から破壊する腔発(こうはつ)を招きます。過去にも古い戦車で砲身内の障害物や部品の強度不足によるトラブルはあったものの、10式は陸自が誇る最新鋭の戦車ですからね。今後は設計上に致命的な欠陥はなかったのか、あるいは素材の劣化はなかったのかなどの徹底的な調査が行われることになるでしょう」(前出・軍事ジャーナリスト)
今回の事故を受け、陸自は10式の射撃訓練を全面中止した。旧式の90式ですら空砲のみという異常事態に陥っているが、10式はネットワーク戦の要。その訓練が止まれば、日本の防衛力に穴が開くのは避けられない。
つまり今回の惨事は、単なる戦車一台の事故では済まされない、国産技術への信頼と国防の根幹を揺るがす、極めて深刻な事態なのだ。
亡くなった3人の隊員は、いずれも精鋭。彼らの命を奪った火の手の正体は何だったのか。防衛省による徹底した原因究明が求められる。
(灯倫太郎)

