
ネアンデルタールの子供は、現生人類より超速で成長していたようです。
このほど、イスラエル北部のアムッド洞窟で発見されたネアンデルタール人の乳児骨格を分析したところ、彼らの子どもは現代人(ホモ・サピエンス)よりもはるかに速いペースで成長していたことが、イスラエル・テルアビブ大学(TAU)により示されました。
どのくらい速かったのでしょう?
また、なぜ彼らは急いで成長していたのでしょうか。
研究の詳細は2026年4月15日付で学術誌『Current Biology』に掲載されています。
目次
- 歯は「6カ月」体は「14カ月」、不一致が示した異様な成長
- なぜ「速く成長する」必要があったのか?
歯は「6カ月」体は「14カ月」、不一致が示した異様な成長
ネアンデルタール人は、約40万年前から約4万年前までユーラシア大陸に生きていた絶滅人類の一種です。
本研究の鍵となったのは、「アムッド7」と呼ばれているネアンデルタール人の乳児の骨格。
約5万年前の個体で、100点以上の骨片から復元されました。
通常、考古学者は歯の発達や骨の大きさを手がかりに子どもの年齢を推定します。
現代人では、歯と体の成長はある程度そろって進むため、この方法は比較的信頼性が高いとされています。
ところがアムッド7では、奇妙な結果が出ました。
歯の発達から推定すると、この個体は「約6カ月」の乳児に相当します。
しかし、腕や脚、胸部などの骨の成長を見ると、なんと「約14カ月」の子どもに近い状態だったのです。
つまり、体の成長だけが異常に速く進んでいたことになります。
このような歯と体の発達のズレは、単なる個体差では説明しにくく、ネアンデルタール人特有の成長パターンを反映している可能性が高いと考えられました。
さらに分析の結果、新生児の段階ではネアンデルタール人と現代人に大きな違いは見られないものの、幼児期(1〜6歳頃)に入ると、ネアンデルタール人は体の成長が急激に加速することが示唆されました。
なぜ「速く成長する」必要があったのか?
では、なぜネアンデルタール人はこれほど速く成長する必要があったのでしょうか。
研究者たちは、その理由として「環境」を挙げています。
ネアンデルタール人が暮らしていたユーラシア大陸の環境は、氷期の影響を受けた寒冷で過酷なものでした。
こうした環境では、幼いままでは体温維持や生存そのものが難しくなります。
そのため、できるだけ速く体を大きくし、環境に耐えられる状態になることが有利だったと考えられます。
実際に今回の研究では、ネアンデルタール人は乳幼児期に急速に体を発達させ、その後の成長段階では現代人に近いペースに落ち着く可能性が示されました。
これは言い換えれば、成長の初期に「一気に加速」し、その後にバランスを取るという独自の成長戦略です。
私たち現代人は、歯や体が比較的バランスよく、ゆるやかに成長していきます。
それに対してネアンデルタール人は、序盤にリソースを集中させる「短期決戦型」の発達パターンを持っていた可能性があるのです。
ただし研究者たちは、この結果がすべてのネアンデルタール人に当てはまるかどうかはまだ断定できないとしています。
乳幼児の化石は非常に少ないため、今後さらなる検証が必要です。
成長の違いは「生き方の違い」を映していた
今回の研究が示しているのは、単なる成長スピードの違いではありません。
それは、ネアンデルタール人と現代人が「どのように生き延びてきたか」という戦略の違いそのものです。
ゆっくりと学習しながら成長する私たちに対し、ネアンデルタール人は厳しい自然の中で素早く体を完成させる道を選んだのかもしれません。
もし私たちが氷に覆われた世界で生まれたとしたら、今と同じように、ゆっくり成長する余裕はないかもしれません。
その問いに対する一つの答えが、5万年前の赤ちゃんの骨の中に刻まれていたのです。
参考文献
Neanderthal toddlers grew faster than modern humans, probably because of the harsh environment they evolved in
https://www.livescience.com/archaeology/neanderthals/neanderthal-toddlers-grew-faster-than-modern-humans-probably-because-of-the-harsh-environment-they-evolved-in
元論文
Rapid growth in a Neandertal infant from Amud Cave in Israel
https://doi.org/10.1016/j.cub.2026.03.054
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

