
「鹿島に貢献したいという気持ちは誰よりも強かった」盟友・内田篤人との深い絆「辞めてほしくなかった」【伊藤翔のサッカー人生⑨】
2025シーズン限りで現役を引退した伊藤翔にロングインタビューを実施。19年のキャリアを振り返ってもらった。全11回のシリーズで、第9回は同じ時代を生きた内田篤人との関係性について。
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1988年生まれの伊藤の同世代には、2014年ブラジル、18年ロシア、22年カタールとワールドカップ3大会に参戦した吉田麻也、ロシア大会で2ゴールの乾貴士、89年の早生まれで代表の元10番・香川真司など錚々たる選手が揃っている。
その1つ上にあたるのが、88年3月生まれの内田篤人。伊藤にとっては10代の頃からよく知る盟友。4月3日の引退会見にもメッセージ動画を寄せたことでも分かる通り、2人は特に深い絆で結ばれているのだ。
「ウッチーと初めて会ったのは、2004年夏にU-16日本代表で参加した豊田国際ユース大会。布啓一郎監督のチームで最初の方から呼ばれていたんですけど、ウッチーは後合流で、試合の1日前か2日前に来た。大した練習もせずに試合に出ることになりました。
右のハーフをやっていたと思いますけど、僕はどんな選手かまったく分からなくて、どうしたもんかなと思っていました。そこでコーチの安達亮さんが『ウッチー、速いぞ』と。その一言で『ああ、速いんだ』というのが分かった。それをよく覚えています」と彼は22年前の記憶を口にする。
直後の9月に藤枝で2005年U-17W杯のアジア最終予選に参戦したものの、チームはまさかの敗退。地元開催の予選で期待されていただけに、世界切符を逃した衝撃は大きかった。
「北朝鮮が思ったより強くて、出会い頭に負けたという感じ(苦笑)。ボランチが青山隼君と鈴木達矢君だったと思いますけど、2人とも守備的なプレーヤーで、攻撃的な選手が1人いたら、また違ったのかなという感想はありました」と伊藤は冷静に分析する。内田がもう少し早く入っていたら、攻撃のキーマンになった可能性も少なからずありそうだ。
その後のU-18、U-19でも一緒に戦っていたが、伊藤がグルノーブル入りして以降は、長らく共闘する機会はなかった。
それが再び巡ってきたのが2019年。伊藤が鹿島アントラーズに移籍する前の18年に、内田はドイツでの生活に区切りをつけ、古巣に復帰していた。
それから内田が引退する2020年8月末までの約1年半、伊藤は10代の頃を知る懐かしい仲間とともに戦うことができたのである。
「ウッチーの引退はもちろんショックでした。あれだけ値打ちのある選手がピッチを去るわけですからね。でも自分が決めたこと。その前からある程度、腹は決まっていたのかもしれません。『俺、もう辞めようかな』『どうしようかな』と言っているのを何度か聞いていましたから」
引退の意向を固めていたとしても、シーズン終了まで待ってから、というのが一般的なケースだろう。ただ、内田はシーズン中にそのキャリアに幕を下ろした。
「ウッチーとは一緒に車で東京まで行ったりすることが多くて、いろんな話をしましたけど、膝がもう難しかったんでしょうね。鹿島に貢献したいという気持ちは誰よりも強かったし、できることならそうしたかっただろうけど、膝が100%じゃないことにもどかしさを感じていたはず。その葛藤は凄まじいものがあったと思います。
僕もグルノーブル時代を筆頭に怪我で苦しんできた分、その気持ちは誰よりもよく理解できた。正直に言えば、辞めてほしくないという思いもありましたけど、お見送りすることになりましたね」と、彼はコロナ禍で揺れ動いた6年前の日々に思いを馳せた。
内田の場合、2014年2月のハノーファー戦での大怪我からずっと本調子でないまま選手生活を続けていたが、海外で怪我と向き合うことの難しさを如実に示した事例ではあった。
「前にも少し話しましたけど、欧州がメディカル的に進んでいるという感覚は、僕自身は持っていないです。良い治療法やトレーニング方法は日本にもありますし、僕自身も日本に戻ってきてから最適解を見出すことができました。ウッチーもそれを模索し続けた結果の2020年の引退だったんでしょうね。本当に怪我というのは簡単なものではないんですよ」と伊藤はしみじみと語っていた。
30代後半になってもピッチに立ち続けられる吉田や乾、香川らは恵まれた一握りの選手なのだ。「無事之名馬(ぶじこれめいば)」という言葉もある通り、丈夫な身体というのは1つの才能と言っても過言ではないかもしれない。
※第9回終了(全11回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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