JRAは当該週の全てのレースが終了した当日の夕方、次週に行われる特別レースの登録馬を発表している。筆者は毎週、発表と同時に欠かさずチェックを入れているが、皐月賞デーの4月19日に公表された登録馬一覧には驚かされた。
トレーナーリーディングトップの杉山晴紀調教師(栗東)が管理するレディントン(騙5)が、コースも距離も全く違う4つのレースに出走登録されていたからだ。
コースと距離が似通った条件違いのレースにダブル登録されるケースは、よくある話。ところが、である。レディントンは4月25日の天王山ステークス(オープン、京都・ダート1200メートル)のほか、翌26日のGⅡ・読売マイラーズカップ(京都・芝1600メートル)とL・オアシスステークス(東京・ダート1600メートル)、さらには同日のモルガナイトステークス(福島・芝1200メートル)にまで同時登録されていたのだ。
少なくとも筆者の知る限り、こんな「珍事」は目にしたことがない。
レディントンは芝の1600~1800メートル戦で、それなりに安定的な成績を収めてきた馬だが、デビューから12戦目でダートに転向。初挑戦となったアハルテケステークス(オープン、東京・ダート1600メートル)で2着と好走し、続くマリーンステークス(オープン、函館・ダート1700メートル)でも3着に食い込んだ。ところが、その後に臨んだダート戦(1400~1600メートル)では2ケタ着順が続いていた。
与えられた至上命題は「とにかく稼げるだけ稼げ!」
デビュー以降、芝の1600メートル戦に限れば、9戦して「1着4回、3着2回、着外3回」と、なかなかの成績。今回、読売マイラーズCに出走してくるようなら、「ひょっとして」との期待を抱いていたのだが、結局、同時登録していた全てのレースで出走は叶わなかった。
出走に至らなかった理由は不明だが、3勝クラスを勝ち上がっただけの身ゆえ、おそらく賞金不足でことごとく弾かれてしまったのだろう。
レディントンが去勢され、騙馬となったのは前々走。一般に去勢の目的は「気性の改善」などにあるとされているが、今回の4レース同時登録は前走のダート戦での大敗を挟み、去勢手術から数えて2戦目の挑戦にあたっている。
種牡馬への道を閉ざされてしまった騙馬にとっての至上命題は「とにかく稼げるだけ稼げ!」に尽きる。渥美清主演の寅さん映画「男はつらいよ」ではないが、もしレディントンが口を利けるとしたら、厩の陰で「騙馬はつらいよ」とボヤいたかもしれない。
それはともかく、去勢後のいずれかの時点でガラリ一変するケースは少なくない。ならば今後、レディントンがアッと驚く激走劇を演じる可能性は大いにあるのではないか。この際、覚えておいて損はない視点だと、筆者は思うのだが。
(日高次郎/競馬アナリスト)

