
【北中米W杯出場国紹介|第38回:オーストリア】革新的な戦術家のもとで復権。激しいプレッシングで奪い、鋭いショートカウンターで仕留める
北中米ワールドカップで7大会ぶり8度目の出場となるオーストリア代表は、1934年大会で4位、50年大会で3位という実績を持つ欧州の古豪だ。
長らく国際舞台から遠ざかっていた時期もあったが、近年は組織力と戦術的な完成度を武器に再び存在感を高めている。その復権に尽力しているのが指揮官のラルフ・ラングニックだ。
ラングニック監督は現代サッカーにおける革新的な戦術家。彼が掲げる守備戦術は「エクストリーム・プレッシング」とも呼ばれ、前線からの組織的かつ連動した守備戦術を体系化した人物として知られる。
この思想は、現在ドイツ代表を率いるユリアン・ナーゲルスマン監督をはじめ、多くの若手指導者に影響を与えてきた。オーストリア代表は、ラングニック監督の哲学を高いレベルで体現できるタレントを揃えており、今大会におけるダークホースの一角として注目されている。
基本システムは4-2-3-1。最大の特長は前線からの激しいプレッシングと、それによって奪ったボールを即座にゴールへと結びつけるショートカウンターだ。ボールを失った瞬間に一気に奪い返す「即時奪回」の意識が徹底されており、相手に自由なビルドアップを許さない。
一方で、1-0で勝利した3月の韓国戦でも見せたように、試合の流れや時間帯に応じてブロックを形成し、自陣でのポゼッションを交えながら試合をコントロールする柔軟性も備えている。
チームの精神的な支柱にして戦術リーダーが、キャプテンのダビド・アラバ(R・マドリー)だ。長年トップレベルで活躍してきた万能型ディフェンダーで、戦術理解度の高さとリーダーシップは群を抜く。
ただし近年は負傷が多く、本大会でどれだけ稼働できるかは不透明だ。それでもEURO2024では負傷によりプレーできないなかでもスタッフとして帯同するなど、ラングニック監督の信頼はこの上なく厚い。
前線ではベテランのマルコ・アルナウトビッチ(ツルベナ・ズベズダ)が献身的な守備と狡猾なフィニッシュワークで存在感を放つ。アラバ不在時にはキャプテンを務めるなど、精神面でもチームを牽引する。
2トップを採用するケースでは、193センチのミヒャエル・グレゴリチュ(アウクスブルク)がアルナウトビッチと並び立つが、ウイングも担う20歳のニコラウス・ヴルムブラント(ラピド・ウィーン)はブレイクが期待される新星だ。
2列目には運動量と戦術遂行能力に優れたタレントが並ぶ。マルセル・ザビッツァー(ドルトムント)は攻守両面でハイパフォーマンスを発揮し、ミドルシュートや飛び出しで得点にも絡む。
クリストフ・バウムガルトナー(RBライプツィヒ)はスペースを見つける能力と決定力を兼ね備え、プレッシングのスイッチ役としても機能する。パトリック・ヴィマー(ヴォルフスブルク)はスピードとドリブルでサイドを活性化し、攻撃の幅を広げる。
中盤の底では、20歳の新鋭パウル・ヴァナー(PSV)が注目株だ。高い技術と判断力を備え、プレッシング後の展開役として重要な役割を担う。パートナーのクサーファー・シュラーガー(RBライプツィヒ)は豊富な運動量と対人の強さで中盤に強度をもたらし、攻守のバランスを保つ。
最終ラインでは右サイドバックにコンラート・ライマー(バイエルン)が入り、攻撃参加と守備強度の両面でチームに貢献する。本職は中盤ながら、その運動量と戦術理解力を活かしてサイドからゲームに影響を与える。
センターバックは本来アラバが軸だが、同じ左利きのマルコ・フリードル(ブレーメン)も安定した守備を見せ、ビルドアップにも貢献する。
北中米W杯のグループステージではJ組に入り、アルゼンチン、アルジェリア、ヨルダンと対戦する。実力的に2位以内での突破は十分に可能だ。
組織的な守備戦術が、アルゼンチン相手にどれだけ通用するかは注目ポイントだが、躍進の鍵を握るのは初戦のヨルダン戦だ。
堅守速攻を武器とする相手に対し、前線からのプレッシングをどこまで機能させられるか、そしてボール保持時に冷静さを失わず崩し切れるかが問われる。久々の世界の舞台でもあるだけに、勝点3とともに自信を得る初戦にしたいだろう。
文●河治良幸
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