人と同じことをしていても、自分より賢い人には一生勝てない
武井 坂口くんは、受験で意識していたことなどはありますか。
坂口 さっき亜樹さんが言っていた「先生が言ってることが私にとっての正解かわからない」と通ずるものがあるのですが、僕なりにうまくいった方法としては、自分に最適化した勉強をすることですね。高校に進むと「僕より賢い人ってこんなにいるんだ、普通にこのまま同じことをしていても勝てないな」と思いました。その頃から才能の有無みたいなものは、嫌ほど実感していましたね。
僕は高校教育って、より多くの人をボトムから引き上げるために確立化された授業だと思っていて……ただその中で、同じことを同じ時間で教わって同じ宿題をしてきても、アウトプットできる力って人それぞれなんですよね。だから同じことをしていても、僕より賢い人たちには一生勝てない。
ですから、自分の弱いポイントを重点的にやったり、中学高校以外の勉強を始めたりして個人にフォーカスした知識を入れていかないと、己を高めることにおいては足りないのだとすごく意識していました。
ただ、僕が才能があると思っている人も、他の場所に置かれたら才能がないと思うこともあるはずです。結局は、自分の目標としているものに対して足りない部分を自分の中で言語化なり可視化して補っていくことが、受験においては大事だと思います。
あとは、さまざまな人と交流して気づきを得て自分に還元することは、自分にとって深い学びが得られますし、友達を巻き込んだほうが情報の取得はしやすいです。一方で、最後の最後に馬力で暗記するとか、テキストを1周するといった部分については個人戦だと思うので、情報は広く集めるけれど、努力の遂行は1匹狼でやるというスタンスでしたね。
ひとつの物事に血眼になって取り組む経験は、大人になってからなかなかできない
武井 次は、大学の必要性について話していきたいと思います。今は昔よりは学歴至上主義ではなくなっているものの、私自身はやっぱり大学、東大に行ってよかったなと思うんです。それは東大の教育そのものの話ではなく、大きくいうと「肩書き」の話です。
独立して自分がやりたいこと(宇宙事業や女性活躍推進)がまだ世の中で広まっていない中で、東大卒や元経済産業省という肩書きが、自分の間口をすごく広げてくれました。人から信用してもらって最初の扉を開けてもらう上で、大学というマイルストーンは大事なのだと、フリーランスになって実感しました。OG・OBの方に親しみをもってもらえる場合もあります。
坂口 僕の場合は医学部で、大学のカリキュラムを経て医師免許を取るのでちょっと特殊かなとは思いますが、大学では高校時代にできなかったような、部活を通じて縦社会を学んだり医学部の先輩と仲良くなったりしたことが、勉強以外の部分で成長に繋がったと思います。
では、一般的に大学4年間とはどのような時間だろう?と考えてみると、周りのみんなを見てみると「自分と向き合う時間」だと思うんです。さまざまな時間を過ごす中で、本当に自分が何がしたいかというのを見極める時間なのかな、と。
武井 「合法的に与えられた自分を知る4年間」ですよね。なんでもトライできるし、学生という肩書きもあるから、いろんなことをして失敗もいくらでもできる。
坂口 高学歴だと就職だったり、さっき亜樹さんが言っていたような有利に働く機会は日本においてはやっぱりあるので、迷ったら勉強したほうがいいんじゃないかと思います。努力するのは勉強でもスポーツでも芸術でもなんでもいいのですが、何かに打ち込むという時間があったほうが、人生において絶対に実りがあると思います。
PDCAを回す、つまり自分は何が得意でどうしたら成果を出せるのかを見つめる上で、受験はすごく役に立った経験でした。もし望む結果が得られなかったとしても、そこを目指すプロセスの中で得たものを自分の中で活かせる。だから受験には意味があると、僕は思いますね。
武井 確かにそうですね。あんなに血眼になって何かに取り組む経験を学生時代にしておいたのは、人生の中ですごく貴重な期間だったなと改めて思います。当時は怒りっぽいし、肌も荒れるしで大変だったんですけど(笑)、あれくらい努力してよかった。大人になればなるほど、やらなければいけないことが多すぎて「これだけ!」と集中することがなかなかできないから。受験は人として深みが出る、成長できる経験かなと思います。
>>後編では、武井亜樹さん×北森聖士さん(起業家)のトークセッションの様子をお届けします!
