高市政権の政策に反対し、憲法改正阻止や「首相を辞めろ」と求めるデモの参加者が増えている。4月19日には国会前に約3万6000人が集まったと主催団体が発表。見た目でも国会前に抗議目的でこれだけの人が集まったのは2015年の安保法制反対運動以来ではないかとみられる。中でも目につくのが女性と若者だ。彼女らはなぜ今回デモに足を運んだのか。
「“オタクですけどデモに参加してます”って言うために来ました」
市⺠団体「戦争させない・9条壊すな!総がかり⾏動実⾏委員会」などが呼び掛けた国会前デモは4月8日も主催者発表で約3万人が集まった。
19日は国会前だけでなく全国160か所以上で同様のアクションが行なわれ、「面」でも拡大している。
その国会前デモでは最寄りの地下鉄の駅の女性トイレに毎回長い列ができる。現場でも明らかに女性が多い印象で、若者も多い。
クラブミュージックが流れる集会はシュプレヒコールと演説だけだった過去のデモとは少し様相が違う。
実際、スマートフォンアプリの位置情報で得られる⼈流データを共同通信が分析すると、8日の国会デモでは女性が参加者の6割超を占め、年代別では20代と30代が合わせてちょうど5割になったという。
そのデモでみられた「新しい文化」がある。奇抜な団体名のノボリを持ったスタンディングだ。
「全日本食パン30枚切り推進委員会」「散歩中の犬をニコニコ眺める友の会」「ぬいぐるみを抱っこして寝る会」……。
50本以上が林立する政治とは関係のない名前のノボリ。それを持つのも女性が多い。
着物姿で「もんぺは嫌だ着物を着隊」と書いたノボリを持った自称・ゲームオタクの30代の女性・やよいさん(仮名)に話を聞いてみた。
「これまでデモに参加したことはなかったです。なぜ今回は、っていうと、高市政権って底が抜けてる感じがするんですよね。
『いくらなんでも戦争はしないでしょ』って友人に言われたことがあるんですけど、彼女は過去ずっと『(戦闘員には)最後まで戦っていただく』みたいな発言をしてきたことがわかり、(戦争を)やらないとは言い切れないって思ってます。
そういう発信をSNSですると『オタクは政治の話をするな』みたいに何回も炎上して、それに腹が立って、“オタクですけどデモに参加してます”って言うために来ました」(やよいさん)
「昭和のヤンキーみたい」女性たちが抱く政権への違和感
ゲームと着物と刀剣にハマっているというやよいさんは、なぜ「戦争」に敏感なのか。
「コロナの時に舞台や映画が観られなくなり、オタクは自分たちが楽しんでいる文化って、何かあれば真っ先に不必要だって削られると学習したんですよ。
戦争になれば自分が好きなアイドルが徴兵されちゃうかもしれない。家でぬくぬく漫画読んだりしてられるのも平和だからだって、その時に分かったんですよ」(やよいさん)
デモでヘンな団体名を名乗るのは、「誰かに動員されてきたのではない」という思いを示すためだという。
ペンライトとともに韓国で戒厳令を宣布した尹錫悦前大統領の弾劾を求め拡大したデモから起こったムーブメントで、存在しないと誰でもわかる団体名の旗を掲げることで自発的に来たとアピールし、デモの現場で笑いも取り合っている。
「BLとぬいと平和を愛する会」を名乗る40代のAさんは、
「私はあくまで1人で来ました。誰かの意見で、っていうのではありません。
NHKなんかはこのデモを少し前までは『市民団体などが集会を開き』みたいに報じていましたが、私は“市民団体”のメンバーではないことを示したいです。
ノボリはネット注文で1700円、ポールは800円でできましたよ。
これまでの政権も支持しなかったですが、今回デモに来るようになったのは、メディアが高市政権の支持率が高いって大仰に報じて、それを見た人の中で『そうなんだ、高市さんを支持する人が多いんだ、じゃあこれが正しいんだ』みたいな同調圧力ができるのでは、と危機感を持つからです」
と話す。
女性初の首相となった高市早苗氏は「ガラスの天井を突き破った」存在ではないのかと聞くとAさんは同意しない。
「中身は“昭和のおっさん”“昭和のヤンキー”ですよね。閣僚に『私に恥をかかせるな』と言ったりとか、もう耐えられないです。
すぐに改憲に手をつけそうで、イランとの外交もしっかりやらず、全然討論にも出ない。何をやってんですかって感じです」(Aさん)
ノボリは持たずに抗議の輪の中にいた海外在住経験が多いフミさん(33)(仮名)も、
「(高市首相は)男性中心の権力構造の中でその価値観に寄り添う形で上がってきた人なのかなと感じることもあります。
夫婦別姓への理解もすごく低いなと思います。海外で研究している友人なんかは本当に困って事実婚を選ばざるを得ない人もいるので、今の社会に合った制度をちゃんと考えてほしい」
と話し、女性に不利な社会構造の転換に高市首相が無関心であることに失望を隠さない。

