プロ野球12球団のうち、2球団だけが「ハブられて」いる。クレジットカードのJCBが4月16日から6月15日にかけて展開する「第2弾プロ野球ファン応援キャンペーン」のページを開いたプロ野球ファンは、そこで奇妙な光景に直面する。対象は10球団。セ・リーグ5球団に加え、ソフトバンク、楽天、オリックス、日本ハムが並ぶ。だが、西武とロッテの名前だけが、どこにも見当たらない。
キャンペーン自体は、相当な力の入れようだ。5万円の利用で1口、プレミアムシートなどの観戦チケットが当たる抽選形式で、新規入会なら口数4倍、ゴールド会員は2倍、プラチナ・クラス会員には3倍の優遇が用意されている。
中でも日本ハムには「プレミアムコース」「プレミアムキッズコース」という独自コースが別枠で設けられており、他球団とは明らかに格が違うのだ。
というのも、JCBは日本ハムのオフィシャルスポンサーであり、本拠地エスコンフィールドでは「JCB ORIGINAL SERIESナイター」と銘打った特別試合まで組まれる間柄だ。その分厚い関係と比べれば、西武とロッテの「不在」がいかに際立つかは言うまでもない。
ではなぜ、2球団は対象から外されたのか。答えはそれぞれの本拠地の歴史と、財布の中のカードにある。
西武の本拠地ベルーナドームのバックネット裏には「アメリカン・エキスプレス プレミアム ラウンジ」が鎮座し、チャンピオンフラッグの展示からブッフェエリアまで備えた豪華施設が、アメックスの名を冠している。セゾンカードのゴールド以上の会員向けには、プレミアムシートの優先販売までが実施されている。
ちなみにセゾンアメックスカードは、クレディセゾンとアメリカン・エキスプレスの提携によって発行されているものだ。
アメックスが「西武ベンチ内練習見学会」特典で囲い込み
セゾングループはもともと、西武百貨店を中核とした西武流通グループが発展して生まれた企業集団であり、クレディセゾンはその一翼を担った。2000年代にグループは解体され、資本関係はほぼなくなったが、ベルーナドームのラウンジに刻まれたアメックスの名には、その残像が透けて見える。
しかも2026年現在、アメックスは西武との新規入会キャンペーンをなお継続しており、7月末までに10万円以上を利用した新規会員には、ベンチ内練習見学会などの特典まで用意されている。JCBが「西武抜き」のキャンペーンを打つまさにその同時期に、アメックスはベルーナドームで着々と会員を囲い込んでいるのだ。
一方のロッテは、三井住友カード(VISA)と組んだ「千葉ロッテマリーンズ VISAカード」を公式展開しており、スタジアム優待からポイントでのグッズ交換まで、球団公認の体制が整っている。JCBとVISAは、国際決済ネットワークの競合関係にある。ロッテがJCBのキャンペーンに乗れば、長年の公式パートナーとの関係が複雑になるのは想像に難くない。
「JCB×アメックス・VISA」は野球ファンへの還元キャンペーンだが、その実態はクレジットカード各社による球団争奪戦の戦況報告である。西武ファンが球団公認カードを手にしようとすれば、自然とセゾン系のライオンズカードに行き着く仕組みが整っている。
カード選びはもはや、ファンにとって野球観戦の下調べと同じだ。どの球団を応援するかによって、持つべき一枚が決まる。
(ケン高田)

