ビーチバレーは、世界的な人気スポーツとして親しまれている。日本の場合、登録選手数は近年増加傾向にあるものの、まだまだ競技そのものが盛り上がっているとは言い難い。
マイナースポーツとも言える競技だけにその活動は選手自らの努力によるところが大きい。気になる活動資金や実情について、注目の“あみすずペア”に話を聞いた。
デュアルキャリアという選択肢
プロ選手であっても、ビーチバレーだけで生計を立てられるケースは少ない。そのため、競技に打ち込みながら企業に所属し、業務もこなす「デュアルキャリア」という働き方を選ぶ選手もいる。
「大学卒業後、プロ志望でチームに所属して活動していましたが、『この先、ビーチバレーだけで食べていくのは難しい』と、思い知らされました。それだけではなく、一社会人として周囲の社会人1年目とのギャップを感じて、今後のキャリア形成について考えさせられました」
そう語るのは、ビーチバレー選手の福田鈴菜。そこで、彼女は6歳上の大学のOGである白幡亜美に相談した。白幡は当時、すでに「デュアルキャリア」を実践している数少ない選手の一人だったからだ。
「亜美さんから『仕事はしておいたほうがいい』というアドバイスを受け、私もデュアルキャリアができる所属先を探しました」(福田)
「デュアルキャリア」は、アスリートが競技生活と並行して、学業や仕事など「もう一つのキャリア」を同時に築くライフスタイルだ。一般企業で実際に働きながら、アスリートの活動もこなす、言わば文武両道。競技引退後もその企業で働き続けることができるという利点もある。
現在、福田はスポーツ学生向け就活支援サービス「体育会ナビ」を運営するガーディアンシップに、白幡は不動産会社ハウスコムに勤務している。
2人がデュアルキャリアを選択した背景には、競技を取り巻く厳しい現実があった。白幡はこう語る。
「ジャパンツアーの賞金は最高額でも100万円。メジャーな他競技と比べると、低いかもしれません。そのため、日本のビーチバレーを第一線で引っ張っていた選手たちも、引退後に苦労しているケースがあります。そうした姿を見て、『自分はどうやって進んでいくべきか』を考えました」
競技と仕事を両立しながら、限られた時間の中でパフォーマンスを維持する。そのためには、日々のスケジュールも綿密に組み立てる必要がある。
「月・火はフル出勤で、水・木・金は午前中に練習し、午後に仕事をしています。私は茅ヶ崎で、亜美さんは東京なのですが、練習のために茅ヶ崎まで片道1時間半かけて来てくれています。本当感謝です!」(福田)
大会エントリーから宿泊や航空券も自分たちで
にこやかに笑う2人がペアを組むに至った背景には、それぞれの転機が重なっていた。
「当時、私はビーチバレーを辞めようとしていた時期で、前向きになれなかったんです。そんなときに亜美さんから大会に誘ってもらい、一緒に出た大会で初めて楽しいと思えたんです。後ろ向きな思考の私でも、亜美さんといると『できないこともできる』と思いました」(福田)
白幡も、福田のプレーや姿勢に強い魅力を感じていたという。
「心からビーチバレーに楽しそうに取り組んでいるすずの姿がいいなと、前々から思っていました。本当は大学卒業のタイミングで最初に組みたかったのですが、すずは別なチームメイトと組むことが決まっていて。そっと控えていました(笑)」
こうして2人は別々のペアで活動していたが、同時期にペアを解消する。
「そこで私からすずに声を掛けてみたら、すずも同じように思ってくれていて、びっくりしました! すごく嬉しかったですね(笑)」(白幡)
そして、2人は2024年秋ごろに「あみすず」ペアを結成。「ジャパンツアー・ワールドツアー優勝」を目標に、国内外の大会へ継続的に挑戦している。
しかし、競技生活の裏側には、地道なやりくりの積み重ねがある。ビーチバレーは遠征費の負担が大きく、日々の活動は常に資金との戦いだ。
「遠征では交通費、宿泊費、大会へのエントリー費、そしてコーチ代がかかります。私たちは2人でコーチをお願いしているため、それぞれがその費用を負担しています。大会に帯同してもらう場合は、コーチの交通費や宿泊費もかかりますし、日常的な指導費用も必要になります」(白幡)
実業団などと違って、選手がほぼ全ての費用を自己負担で捻出する。楽しいだけでは続けていくのが難しい世界ではあるが、2人の表情は明るい。最近の失敗も「いい勉強になりました」と明かす。
「今春、オーストラリアに遠征した際、シドニーから次の会場への移動で、本来は車で行ける距離だったのですが、飛行機を予約してしまい、2人で3万円ほど余計にかかりました……。おかげで『絶対に優勝して賞金勝ち取るぞ!』と燃えましたね(笑)」(白幡)
お金以外の負担も決して小さくない。競技運営に関わる手続きの多くも彼女たちが担っている。
「宿泊先や移動手段はすべて自分たちで手配しています。大会へのエントリーも自分たちで行ないますが、海外の大会は英語で案内が届くため、アプリで翻訳しながらという感じです……(笑)。スケジュール確認や現地とのやりとりも含め、すべて自分たちで対応しているので、いい意味で経験値が増えますね!」(福田)
彼女たちの活動資金を支えているのは、勤め先からの給与だけでなく、それぞれについているスポンサーからの支援もある。現在、白幡にはエレクトロニクス専門技術商社の「RYODEN」と、福田には自動車用樹脂部品の設計・製造を手がける「イオンインダストリー」とスポンサー契約を結んでいる。
しかし、「あみすず」ペアとしてのスポンサーはまだ決まっていない。「ぜひお待ちしてます!」と2人は笑いながら声を弾ませた。

