
かつての『和製アンリ』が実感「今はもう“和製”はいらない」。日本サッカーが世界トップに肩を並べる瞬間を心待ちに【伊藤翔のサッカー人生⑪】
2025シーズン限りで現役を引退した伊藤翔にロングインタビューを実施。全11回のシリーズで、ラストとなる本稿では、日本サッカーへの大きな期待感などについて語ってもらった。
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中京大学付属中京高校を卒業した伊藤が、グルノーブルの門を叩いてから約20年。当時は数えるほどしかいなかった欧州で活躍する日本人選手が、今では50人を超えるほどになっている。
日本代表の森保一監督も「毎週、100人近い選手をチェックしている」と話していたが、欧州5大リーグでプレーする日本人選手は決して珍しい存在ではなくなっている。それは伊藤自身も感じるところだという。
「僕が海外に行った頃は、『和製~~』と言われた選手がけっこういました。自分も『和製アンリ』と言われましたけど、元祖は『和製ロナウド』の矢野隼人君ですよね。森本貴幸もそう言われたことがありましたけど、そういう呼び名が当時は流行っていた。僕自身もそれで世に出してもらったと思っています。
でも、今はもう“和製”はいらない時代。長友佑都君がインテルで活躍したり、今は遠藤航君がリバプール、伊藤洋輝君がバイエルン・ミュンヘンという世界のトップクラブでプレーしていますし、そういう言葉が必要なくなったのは確かでしょう。
三笘薫君(ブライトン)のことを、誰も『和製クリロナ』とは言わないですからね」と伊藤は日本サッカーの発展を噛みしめながら語っていた。
FWに関しても、顕著な進化が見られているのは確か。その筆頭が今季オランダ1部でゴールを量産し、得点ランキングでトップに立っている上田綺世(フェイエノールト)だろう。
これまでも、フランクフルト時代にドイツ・ブンデスリーガ1部で二桁ゴールを達成した高原直泰、マインツ時代に2年連続二桁ゴールをマークし、レスター時代にイングランド・プレミアリーグ制覇を果たした岡崎慎司といった点取り屋は出現していたが、欧州主要リーグで得点王となれば、また違ったインパクトと言えるはずだ。
「綺世が点を取れるのは、まずフィジカル的に優れていることが大きいですね。もちろん、フィジカルが優れているから、必ず点を取れるわけではないですけど、彼はボールがどのへんから来たら合わせられるかという範囲が広いと思います。
『味方が良いセンタリングを上げてくれても、自分はここしか合わせられません』という選手はどうしても限定的になりますけど、彼は身体能力も高いし、幅広いゾーンに対応できる。左右両足に頭とパターンも豊富ですし、ポストプレーもハードワークもできる選手。すごく伸びていますね」と、伊藤はFW目線で日本代表のエースストライカーを分析する。
北中米ワールドカップでは上田が主軸となるだろうが、伊藤が横浜FCで共闘した小川航基(NEC)、町野修斗(ボルシアMG)、若手のホープ後藤啓介(シント=トロイデン)らも戦力となりそうだ。
「航基はヘディングに特化した印象はないですけど、ヘディング力が魅力なのは確かですね。町野君や後藤君は多彩な仕事をこなすイメージですね。彼ら全員に通じることですけど、今のフォワードは、あれもこれもやらなければいけないという状況にある。その負担と得点のところにどう折り合いをつけていくかが、1つのポイントになると思います。
いずれにしても、フォワードが点を取りたいと思うなら、点の取れるポジションにいないといけない。良いポジショニングが一番重要ですね。あとはゴール前に入っていくタイミングも大切になると僕は考えています。シュートのコツは、彼らならば分かっていると思うので、これからもシュートを叩き込んでほしいです」
伊藤が強調しているような重要な部分を、日本代表レジェンドの前田遼一コーチが選手たちに指導していると見られるが、日本代表が過去のW杯で超えられなかったベスト16を突破し、上位に躍進していこうと思うなら、やはり最前線の選手がゴールを数多く奪っていかないと厳しいだろう。
「正直に言えば、僕自身もワールドカップには出てみたかったですね。基本的に僕は知らないことを知るのが好きなんで、最高峰レベルの大舞台を経験してみたかったのは確かです。
僕は引退した時に自分のキャリアが正解だったのか、不正解だったのか分かると思っていたんですけど、今になってもその答えはよく分かりません(笑)。でも、回り道して大変な思いをしてきたからこそ、得たものもあるし、引き出しも増えた。今後の人生でワールドカップに行けなかった分を回収していこうと思います。
もちろん、今回のワールドカップは一サッカーファンとして応援します。松本山雅に呼んでくれた名波(浩)さんがコーチを務めていますし、俊さん(中村俊輔)も参戦するんですよね。今からすごく楽しみです」
“和製アンリ”と呼ばれた男は、日本サッカーが本当に世界トップに肩を並べる瞬間を心待ちにしている。
※このシリーズ了(全11回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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