
野生では絶滅認定された鳥が、いま再び命をつないでいます。
アメリカのサンアントニオ動物園で、グアムカワセミのヒナが誕生しました。
この鳥はすでに野生では絶滅したとされている種ですが、飼育下での繁殖によってかろうじて命をつないでいます。
今回の誕生は、単なる「かわいいニュース」ではなく、絶滅からの復活を目指す重要な一歩です。
目次
- 外来種によって消えた「グアムカワセミ」
- ヒナ誕生が示す「復活への現実的な一歩」
外来種によって消えた「グアムカワセミ」
グアムカワセミは、太平洋のグアム島にのみ生息していた固有種です。
青い翼とシナモン色の体を持つ美しい鳥ですが、魚ではなく昆虫や小動物を捕らえる、やや陸生寄りのカワセミとして知られていました。

しかし、この鳥は20世紀半ばに急激な危機に直面します。
原因は、人間の活動によって持ち込まれた外来種、ブラウンツリースネークでした。
貨物に紛れて島へ侵入したこのヘビは、卵やヒナを次々と捕食し、個体数は急激に減少していきます。
その減少はあまりにも速く、1980年代には野生での生存が確認できなくなり、1988年には「野生絶滅」と認定されました。
つまり自然の中ではすでに存在しない種になってしまったのです。
しかし完全な絶滅は回避されていました。
野生で姿を消す5年ほど前に、わずか29羽が人の管理下に移され、動物園などでの繁殖プログラムが始まっていたからです。
この判断が、現在につながる唯一の命綱となりました。
ヒナ誕生が示す「復活への現実的な一歩」
今回誕生したヒナは、その飼育繁殖プログラムの中で生まれた個体です。
グアムカワセミは交配相手の選り好みが激しく、繁殖が難しいことで知られています。
そのため、ヒナが無事に孵化すること自体が大きな成果といえます。
特にサンアントニオ動物園では、1985年からこの種の保全に関わっており、今回のヒナは通算で数十羽目にあたる重要な個体です。
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またシンシナティ動物園でも新たなグアムカワセミのヒナが誕生しており、複数の施設が連携して個体群の維持に取り組んでいます。
さらに現在は「ただ増やす」段階から、「野生へ戻す」段階へと進みつつあります。
2024年には、9羽のグアムカワセミがパルミラ環礁へと放たれました。
この島は外敵がほとんどいない安全な環境で、野生復帰に向けた実験的な場所とされています。
すでに現地ではペア形成や産卵も確認されており、約40年ぶりに「野外で卵が産まれる」という出来事も起きました。
ただし、元の生息地であるグアム島から大きく離れているため、国際的には依然として「野生絶滅」と分類されています。
それでも、ヒナの誕生と再導入の進展は、この種が単に延命されているだけでなく、再び自然に戻る可能性を現実のものにしつつあることを示しています。
参考文献
Extinct-In-The-Wild Kingfisher Hatches At San Antonio Zoo, One Of Less Than 150 In Human Care
https://www.iflscience.com/extinct-in-the-wild-kingfisher-hatches-at-san-antonio-zoo-one-of-less-than-150-in-human-care-83282
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

