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海底に沈む「謎の黄金球体」の正体が判明

海底に沈む「謎の黄金球体」の正体が判明

海底で見つかった黄金の球体の正体は? / Credit:Steven R. Auscavitch(Smithsonian Institution)et al., bioRxiv(2026). CC0

2023年、太陽の光が届かない海底で、謎の物体が発見されました。

アメリカのスミソニアン博物館などの研究チームは、この金色に輝く球体の正体を突き止めるため、形態観察と遺伝子解析を組み合わせた調査を行いました。

その結果、数年の時を経て、この物体は未知の生物でも卵でもなく、深海に生息するイソギンチャクの一種が残した「外皮」であることが明らかになったのです。

この研究は2026年4月21日に、査読前論文として『bioRxiv』で公開されています。

目次

  • 深海で見つかった「黄金の球体」は、深海イソギンチャクが残した外皮だった
  • なぜ“黄金の球体”は残されたのか

深海で見つかった「黄金の球体」は、深海イソギンチャクが残した外皮だった

海底で見つかった黄金の球体 / Credit:Steven R. Auscavitch(Smithsonian Institution)et al., bioRxiv(2026). CC0

問題の物体が見つかったのは、アラスカ湾の水深約3250メートルの海底です。

そこは光が一切届かず、極めて低温かつ高圧という、人間にとって簡単には近づけない世界です。

調査にあたっていた研究者たちは、遠隔操作型無人探査機(ROV)で海底を観察している最中に、岩にぴったりと張り付いた「金色の球体」を発見しました。

この物体は直径およそ10センチほどでした。

地上に持ち運んで明るい場所で観察すると、表面は滑らかに光を反射しており、さらに一部には穴のような開口部も見られました。

この異様な見た目から、当初は「深海生物の卵ではないか」という仮説が有力視されました。

ほかにも、海綿やサンゴの一部ではないかといった推測も出されており、研究者たち自身も正体を即座に判断することはできませんでした。

では、なぜこれほどまでに正体の特定が難しかったのでしょうか。

その理由のひとつは、この物体が「生物らしい構造」をほとんど持っていなかったことにあります。

通常、動物であれば口や消化器官などの明確な特徴が見られますが、この球体にはそうした構造が確認できませんでした。

さらに、集めたかたまりの中には微生物などいろいろな生き物のDNAが入り混じっていたため、簡単なDNA検査ではどの生き物のものか特定できなかったのです。

そこで研究チームは、より詳細な分析へと踏み込みます。

顕微鏡観察の結果、この球体の表面には「スピロシスト」と呼ばれる刺胞が存在することが分かりました。

これは刺胞動物の中でも、イソギンチャクやサンゴを含む「六放サンゴ亜綱」に見られる刺胞の一種です。

この時点で、球体が何らかのイソギンチャクやサンゴに近い生物と関係している可能性が強まりました。

さらに決定打となったのが、より深い遺伝子解析であり、この物体は深海に生息するイソギンチャクの一種と極めて近い遺伝的特徴を持つことが明らかになりました。

こうして研究者たちは、発見から3年後に、この「黄金の球体」の正体を突き止めます。

それは未知の生物でも卵でもなく、深海イソギンチャク「Relicanthus daphneae」が残した外皮(クチクラ)と組織の残骸だったのです。

では、この奇妙な構造はどのようにして海底に残されたのでしょうか。

なぜ“黄金の球体”は残されたのか

黄金の球体は、深海イソギンチャク「Relicanthus daphneae」が残した外皮だった / Credit:Steven R. Auscavitch(Smithsonian Institution)et al., bioRxiv(2026). CC0

この研究で明らかになったのは、球体の正体だけではありません。

研究者たちは、なぜこのような形の「外皮」が海底に残されるのかについても検討しています。

まず考えられているのが、「移動の痕跡」という仮説です。

イソギンチャクは一見すると岩に固定された生物のように見えますが、実際にはゆっくりと移動する能力を持つものもいます。

観察記録からは、生きた個体の下に似たクチクラが見える例もあり、研究チームは、このイソギンチャクが移動する際に外皮を残す可能性を考えています。

つまり黄金の球体は、「海底に残された皮」のようなものだと考えられます。

もうひとつの仮説が、「無性生殖の途中段階」です。

一部のイソギンチャクでは、体の下部を残して本体が移動し、残された部分から新しい個体が育つ増え方が知られています。

研究チームは、黄金の球体の丸い形が、このような不完全な無性生殖の痕跡である可能性も挙げています。

ただし、この種で実際にその過程が確認されたわけではありません。

さらに興味深いのは、この「残された外皮」が単なる死骸ではないという点です。

研究によると、球体の内部や表面には多種多様な微生物が存在しており、特に、分解で出てくるアンモニアを別の物質に変える微生物が多く見つかりました。

これは、球体が深海の小さな「分解と栄養循環の場」になっていた可能性を示しています。

今回の研究から分かるのは、私たちが「未知の生命体」だと感じたとしても、実は既知の生物の知られざる側面に過ぎない可能性があるということです。

深海は未踏の領域であると同時に、すでに知られている生物の理解がまだ十分でない場所でもあります。

黄金の球体は、新しい生物の発見ではありませんでした。

しかしそれは、深海に生きる生物の振る舞いが、私たちの想像以上に奇妙で奥深いことを示しています。

参考文献

Mysterious Golden Orb at The Bottom of The Ocean Finally Identified
https://www.sciencealert.com/mysterious-golden-orb-at-the-bottom-of-the-ocean-finally-identified

元論文

The Curious Case of the Golden Orb – Relict of Relicanthus daphneae (Cnidaria, Anthozoa, Hexacorallia), a deep sea anemone
https://doi.org/10.64898/2026.04.17.719276

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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