
空を飛ぶ翼竜でも、地上をダッシュして獲物を追いかけることはあったようです。
米テキサス大学オースティン校(UT Austin)の最新研究で、韓国にある白亜紀の地層から見つかった足跡化石を分析した結果、大型の翼竜が小さな動物を追跡していた可能性が示されました。
一体どんな足跡が見つかったのでしょうか?
研究の詳細は2026年4月16日付で学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。
目次
- 足跡が物語る「追跡劇」
- 翼竜は空だけのハンターではなかった?
足跡が物語る「追跡劇」
今回の発見の舞台は、約1億600万年前の韓国・晋州にある白亜紀前期の地層です。
ここで研究者たちは、非常に保存状態の良い足跡のセットを発見しました。
注目すべきは、2種類の足跡が同じ場所に残されていたことです。
1つは小型の脊椎動物のもの。
もう1つは、それよりはるかに大きな生物のものです。
小型動物の足跡を詳しく追っていくと、最初はゆっくりと歩いていた様子が分かります。
しかし途中で、急に進行方向を変え、走り出しているのです。
この「突然の変化」が意味するものは何でしょうか。
【発見された足跡の画像がこちら】
その答えのヒントが、すぐ後ろに残された大型の足跡です。
そこには、地面を蹴るように進む大型の翼竜の足跡が、斜め方向から接近し、小動物の進路を追うように並んでいました。
つまりこの岩の上には、「逃げる小動物」と「それを追う捕食者」という、わずかな時間の出来事がそのまま刻まれていたのです。
もちろん、足跡だけでは捕食が実際に起きたと断定することはできません。
しかし、足跡の時間的な近さ、進行方向の一致、小動物の急激な動きの変化などを総合すると、偶然同じ場所を通ったとは考えにくく、両者の間に何らかの相互作用があった可能性が高いと研究者たちは結論づけています。
このとき、小動物が無事に逃げ切れたのか、それとも捕まってしまったのかは分かりません。
岩の記録は途中で途切れており、結末は想像するしかないのです。
では、この「追跡者」の正体は何だったのでしょうか。
翼竜は空だけのハンターではなかった?
大型の足跡の主は、明らかに翼竜の一種でした。
翼竜は恐竜時代に空を飛んでいた爬虫類ですが、今回の足跡は既知のどの種にも一致しませんでした。
そのため研究者たちは、この足跡の主を新たな属・種として「ジンジュイクヌス・プロケルス(Jinjuichnus procerus)」と命名しています。
この名前は発見地である「晋州(Jinju)」と、「足跡」を意味するギリシャ語由来の「イクヌス(ichnus)」を組み合わせたものです。
また「プロケルス」はラテン語で「細長い」を意味し、足跡に見られる長い指の特徴を表しています。
【チームが復元した、獲物を追いかける翼竜のイメージ画像がこちら】
さらに重要なのは、この翼竜が属すると考えられるグループです。
足跡の形状から、この動物は「ネオアズダルキア類」と呼ばれるグループに分類される可能性が高いとされました。
このグループは、地上を四足で歩くことができ、コウノトリのように地面で獲物を探していたと考えられている翼竜です。
実際、今回の足跡からはこの翼竜が時速約2.9キロメートルで移動していたと推定されています。
決して全力疾走ではありませんが、空に適応した動物であることを考えれば、地上でも十分に機敏に動けたことが分かります。
つまり翼竜は単なる「空のハンター」ではなく、飛行と歩行を使い分けながら、地上でも積極的に獲物を探していた可能性があるのです。
トカゲや小型哺乳類、さらには若い恐竜などを狙っていたという説とも一致します。
今回の発見は、翼竜の生活像を大きく書き換えるものではありませんが、そのイメージをより具体的にしてくれます。
翼竜は空を飛ぶだけでなく、地上に降り立ち、静かに忍び寄り、時には追いかける捕食者でもあったのです。
参考文献
Ancient Footprints Suggest a Flying Predator Was Chasing Prey on Land
https://www.sciencealert.com/ancient-footprints-suggest-a-flying-predator-was-chasing-prey-on-land
元論文
New large pterosaur tracks from Korea and their implications on terrestrial behavior
https://doi.org/10.1038/s41598-026-48019-y
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

