
監督交代直後の浦和に完敗した川崎。不甲斐ない内容へサポーターからの発破に脇坂泰斗は「当たり前」残り5試合で進化は見せられるのか
[J1百年構想リーグEAST第13節]浦和 2-0 川崎/4月29日/埼玉スタジアム2002
“解任ブースト”という言葉がある。
監督交代に踏み切ったチームは、気持ちの入ったパフォーマンスと戦い方の整理で一時的に好成績を収める現象だ。
そこから一気にV字回復するチームと、またも苦戦を強いられるチームに分かれるが、試合前日にマチェイ・スコルジャ監督と双方合意のうえでの契約解除を発表し、クラブレジェンドである田中達也U-21チーム監督兼トップチームアシスタントコーチが百年構想リーグの終了まで暫定的に指揮を執ることになった浦和は、川崎戦で意地の勝利を掴んだ。
一方の川崎にとっては、苦しいゲームとなった。切り替えがすこぶる早く、インテンシティの高い浦和の守備に多くの場面で窒息させられ、大半の時間を自陣に押し込まれて完敗を喫したのだ。
主な3つのスタッツでは川崎から見て、ポゼッション率は31パーセントと69パーセント、シュート数は6本と18本[枠内シュートは1本と6本])、パス成功数は307本と529本と、すべてで劣ったことからも厳しい戦いであったことがよく分かる。
確かに、浦和は監督交代の起爆剤を得ていた状況で、イレギュラーなシチュエーションであったのは川崎にとってエクスキューズである。現に約1か月前のホームでの浦和との一戦に川崎は3-2で勝ち切っている。
もっとも、その背景を差し引いても、「相手のほうが良かったと思いますし、自分たちはあまり良くなかったと思います」(長谷部茂利監督)と、改めてマイナス面が大きく表われてしまうゲームとなった。
何より不安に映ったのは、長谷部体制2年目において、なかなか明確な上積みが感じられない点だ。いや、少しずつ前進しているのは分かる。ただ、それが試合内容になかなか反映されないことにやきもきしている人は多いに違いない。
13試合を戦って7勝(PK勝利は2)6敗(PK負けは1)のEAST5位(首位の鹿島との勝点差は12)で、得点数はEAST4位タイの18、失点数はEASTワースト3位の22(首位の鹿島は7失点)。
本来、川崎の主体的なスタイルを維持しつつ、新たな得点パターンの構築と失点の減少が、長谷部体制でのテーマであったが、なかなか達成できず、クラブとして開幕前に掲げた「優勝でACLの出場権獲得」の目標も、逆転優勝の可能性は数字上では残っているものの、事実上、消滅している。
浦和戦でもこれまで課題としていた4-2-3-1の、サイドハーフの背後、ボランチの脇を上手く使われて前進を許しており、撤退して自陣に守備ブロックを敷く時間も多く作ったが、攻守にチグハグさが残った印象だ。
キャプテンの脇坂泰斗も振り返る。
「試合前に浦和さんの監督が代わったことや埼スタの雰囲気を考えると、相手がガツガツ来るのは予想していたので、自分たちに矢印を向けて自分たちのことに集中しようと入りましたが、前半は特に押し込まれる時間が続いたなか、38分くらいから(ハーフタイムに入るまで)耐える方向にシフトしました。ただ、そこに至るまでに前進する術を持っておかなくちゃいけないですし、ボールを少し放棄するようなプレーが、それはゴール前のクリアは別にして、そういったプレーがあったので、そこは後半改善できたところもありましたが、前半の35分くらいまでに改善し、前進できていれば、ああいった前半にならなかったと思います。
ただあれだけ攻められて(前半は)ゼロに抑えられたのも、やりたくない展開でしたが、耐えられたのは、以前だったら2点とか取られてもおかしくなかったので、成長と捉えつつ、自分たちが目指している展開ではないので、もう少し敵陣で進めたかったと思います。
うちのサイドハーフの背後を意図的に狙ってきていたので、それは自分たちの弱点と相手に捉えられていると思うので、それを上手く同サイドに圧縮して奪いにいかなくてはいけなかった。そこに至るまでの前の選手の限定もよくないし、今日は全部がハマらなかったというのはあります。
向こうのホームなので多少は相手にとってアドバンテージになりますし、そこはありましたが、もう少し強気で全体でボールを奪いにいっても良かったのかなと思います。引いてひっかけるのもありますが、そこからなかなかカウンターで出るのは、リスクもありますし、目指している形ではないので、守備も攻撃も敵陣でやれれば良かったのかなと」
また、新体制となった浦和に対し、長谷部監督が「大きくは変えられないし、変わらないと思っていましたが、2つ、私のなかでは違ったなと感じました。ボールのつなぐところが少し違っていたなと。長いボールを少なく、入りは少しありましたが、そういうところが少し変わったのかなと。もうひとつは、相手チームのことであまり細かくはあれですが、8番(マテウス・サヴィオ)、10番(中島翔哉)が、我々のサイドハーフの後ろで、ボールを受ける形を作ってきた。我々が少し困ったところだと思うし、彼らが上手く前進する、アタッキングサードにより良い形で入って来られる、しかもボールを持っている選手がキープレーヤーだというところ、浦和さんに分があったと思います」と変化を言及するなか、ピッチ内で有効な解決方法を見つけられなかったのも課題に映る。
左SBの三浦颯太も「試合を通して修正がきかなかったなと。それがあれだけ押し込まれる結果になってしまった。まとまって力を出すことができなかったゲームかなと思います。どこかのタイミングでコミュニケーションを取って、このやり方でやろうとか、上手くカチっとハマるようなやり方があれば、もっと違ったと思いますし、それを試合中に選手が見つけ出せなかったのが課題だと感じます」と口にする。
現代サッカーにおいてはスカウティングや相手の分析は必須項目で、それが成果に表われているかは別として、川崎でもより守備面での明確なタスクや、攻め方など、相手の分析を踏まえたうえでの戦い方が以前にも増して選手に授けられている印象だ。それは必要なことだろう。
ただ一方で「相手を見て、味方を見て」と、ピッチに立つ選手たちが、自分の“目”で状況を判断し、その場のアドリブで打開を試みる川崎の真骨頂が薄れていることにも不安を感じる。
相手をあざ笑うかのように憎たらしく、逆を突くのは、“止める・蹴る”を合言葉に、技術力の向上に弛まぬ努力を注ぎ込んでいたからであり、ボールを止められるから相手を見る余裕が生まれる相乗効果もあったが、その色もかなり薄まり、相手と真っ向からぶつかり、止めきれない、ボールを前進させられないシチュエーションも少なくない。
ただ、海外移籍が当たり前になった昨今、ないものねだりをしても仕方なく、本来はこれまで築いた“色”を失って欲しくはないが、監督や選手、はたまた強化部らの顔ぶれが変われば、スタイルが変わってしまうのも致し方ないこと。必要なのは何度も書いてしまっているが、志を持ち、どんなスタイルを目指すのか、改めて指針を明確にすることだろう。
試合後、雨のなか応援をし続けたサポーターのもとへチームが挨拶に向かうと、一瞬、拍手はまばらで、発破をかける声も起こった。もっとも、その後は改めて“フロンターレコール”や拍手が注がれた。その光景を脇坂も神妙な面持ちで述懐する。
「当たり前だと思います。今日のゲームをして、当たり前の行動だと思いますし、応援してくれていた姿も含めて、自分たちが連戦であることも分かってくれており、次は多摩川クラシコと分かったうえでの声援だと思うので、それを自分たちの力に変えなくてはいけない。(次の対戦相手のFC東京は)ホームでやられている相手ですし、好調の相手なので、次のゲームから連勝できるように、頑張りたいです」
百年構想リーグも残り5試合。果たして川崎は夏からの新シーズンにつながるキッカケを掴み、それを表現することができるのか。周囲が求めているのは結果でもあり、今後へ希望を持てる戦い方でもあるのは間違いない。このタイミングではあるが、明確な所信表明を目にできれば、多くの人が安心するはずである。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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