
テレビアニメ「あかね噺」(毎週土曜夜11:30-深夜0:00ほか、テレビ朝日系ほか/ABEMA・Netflix・ディズニープラス・FOD・Huluほかにて配信) の第四席「喜びの先」が4月25日に放送された。桜咲朱音(CV.永瀬アンナ)の教育係となった兄弟子・阿良川享二(CV.阿座上洋平)の落語が披露された今回は、彼の突き抜けた真面目ぶりが話題に。“真面目も個性”が多くの視聴者に突き刺さった。(以降、ネタバレが含まれます)
■“気働き”を身に付けての再挑戦、生き生きと落語をする姿に視聴者も絶賛
前回、朱音にとって二度目の寄席は、噺はできても一人よがりな高座となり、享二からは客を見ていない“傲慢”な落語だと諫められた。考えてみればそれも当然だ。朱音は阿良川志ぐま(CV.てらそままさき)に稽古を付けてもらっていたとはいえ、人前での落語の経験は初高座の一度きり。噺の技術だけを磨いてきたことで生まれた偏りが、そのまま弱点として表れていた。
落語は相手を喜ばせる芸。そのために必要なのが、相手の様子を見て先回りする“気働き”だ。享二に紹介された居酒屋「海」での接客を通してそれを学んだ朱音は、一週間後、老人ホームでの高座に臨む。観客は前回と同じく高齢者たち。この日選んだのは、前回と同じ前座噺「子ほめ」だった。
失敗した前回と似た条件、朱音の変化ははっきりしていた。前回はテンポも含めて観客を置いていく形になってしまったが、今回はまずマクラから一人一人の反応をつかみ、場を温めるところから入る。そのうえで徐々に自分のペースへと引き込み、自然な調子でギアを上げていく。

“気働き”をしっかり身に付け、見違えるような成長を見せる朱音に享二も目を見張り、生き生きと落語をする姿には視聴者からも、「朱音ちゃんの成長が見られる一席だったよ」「相手の目を捉える技、すごい」「朱音ちゃんの成長、前話と聞き比べると確かに違うんだよ」といった感想が多数寄せられていた。
なお、冒頭で朱音は老人ホームという場に驚いていたが、落語家の高座はなにも寄席だけに限らない。刑務所や病院への慰問、学校や企業のイベント、小さな集まりなど、さまざまな場所がある。享二が言った通り、座布団一つあれば演じられる芸だからこそ、場所や客層に応じた対応が求められる。老人ホームであれば高齢者、学校であれば落語に触れたことのない若い世代と向き合う、落語家の力量が試される高座でもあるのだ。

■真面目も突き抜ければ立派な武器になる…享二が見せた落語スタイル
後半は、享二が兄弟子としての高座を見せる場面へ。前話でクセ強と話題になった志ぐまの弟子の一人、志ぐま一門の“お奉行様”と呼ばれる享二はどんな落語スタイルなのか、視聴者の注目も集まる中、享二が披露したのは「三方一両損」という演目だ。
金三両の入った財布を拾い、親切心から持ち主に届けた男と、宵越しの銭を持たない主義の落とし主。受け取れ、受け取らねえと互いに引かず、江戸っ子らしい意地の張り合いから揉め事となり、ついには奉行所へ持ち込まれるというもの。
正直者同士のやり取りに頭を悩ませた南町奉行・大岡越前守は、双方に一両ずつ負担させ、自らも一両を出すことで決着をつける。結果として三方がそれぞれ損をする形となるが、丸く収まるという“粋な裁き”が見どころの噺だ。
高齢の観客にもなじみのある演目とあって、会場には早くも笑いが広がる。袖で見ていた朱音も引き込まれながら、享二の落語を「ただの真面目じゃない、真面目過ぎるんだ!!」と目を輝かせる。小粋なしゃれで人様を笑わせられるほど、お前は器用な男じゃねえだろ、真面目にやれ」「真面目過ぎれば面白くなる。突き抜ければ個性」。それが、志ぐまの教えを愚直に守り、磨いてきた享二の落語だった。
そんな享二の落語には視聴者も惹きつけられ、「真面目も過ぎれば個性、私もソッチ側だから何だか自分事のよう、カミナリ落された」「享二兄さんも、落語の在り方に試行錯誤を重ねて今の生真面目な落語家になったのかな。だからこそ『言葉に力を宿すは人となり』という言葉に重みがある」と、心に刺さった視聴者たちの感想が集まっていた。
ラストでは、互いの呼び方をめぐるやり取りも描かれた。享二は自分のことを「享二兄さん」と呼ぶよう伝え、自身も「君」から「朱音」へと言い方を変える。朱音のことを妹弟子としてだけでなく、一人の落語家として認めたことが感じられる場面だった。
◆文=鈴木康道


