
降り注いだ拍手とブーイング。「時が経っているだけだともったいない」「このままズルズル落ちるのは悔しい」多摩川クラシコ敗戦の川崎は“言われているしやっている”守備を改善し浮上できるのか
[J1百年構想リーグEAST第14節]FC東京 2-0 川崎/5月2日/味の素スタジアム
前節はアウェーで指揮官が交代したばかりの浦和に完敗を喫し、挽回を誓った川崎だったが、FC東京に0-2で敗れ、百年構想リーグでは多摩川クラシコで2連敗という悔しき結果を突き付けられた。
俯く選手たちに、サポーターからは拍手とブーイングがまぜこぜになったような声援が送られた。
いつものようにベンチの近くに立ち、選手たちを見守った長谷部茂利監督も「このクラシコでどれだけの想いで応援をしてくれているか、申し訳ない気持ちでスタンドを見ていました。選手と一緒に一礼しましたが、こういうことが起こってはいけないし、シーズン2敗ですから、申し訳ない気持ちだけです」と振り返る。
浦和戦から大幅に選手を入れ替え、エリソンと神田奏真を2トップで組ませる4-4-2で臨んだ一戦は、同じく4-4-2を採用するFC東京とのミラーゲームとなり、前半は互いにコンパクトな陣形から相手のボールを奪うなど、どちらが先に折れるのか“我慢比べ”のような展開になった。
だが、41分、0-0で試合を折り返したかったなか、ボールを前進させようと、気を利かせて中央に入った左サイドハーフの宮城天が相手ボランチ、常盤亨太のプレッシャーを受け、パスをミス。FC東京の自慢の高速カウンターを受けると、最後は佐藤恵允に決められて失点。
気を付けていたはずの形で先手を取られると、57分には後方からの佐藤龍之介の素晴らしい縦パスをダブルボランチの間に刺され、その流れから野澤零温に決められて2失点目。反撃も実らなかった。
それでもCBで先発した佐々木旭が「前半の守備は良かったと思います。エリソンと(神田)奏真が限定してくれて中盤(ボランチ)の(橘田)健人くんと(河原)創くんも気を利かせて、(2トップの一角から落ちる)佐藤龍之介選手を見てくれる時と、相手の中盤に当てはめに行く時と使い分けていたので、そこは(CBの)僕とマルくん(丸山祐市)も常に声を掛け合いながらやっていて、手応えはありました。だからこそあの時間帯の失点を含めてもったいない試合でした」と語ったように、失点するまでの守備は、長谷部監督のチームらしく、組織立ち、誰もが足を止めずにプレスに走り、見ていて美しさがあった。
ただ、前述したとおり、徐々にFC東京にプレッシャーをかけられ、効果的にボールを運べていない状況に焦れるように、ミス絡みで失点してしまったのが痛く、長谷部監督も「何回かに一回はカウンターを受けてしまいますが、ああいうところで止められないようでは、ファウルで止めろとは言わないですが、そこは『そういうミスをするな』ですし、力不足だった」と振り返ったが、個人の責任だけにはできない。佐々木や、キャプテンの脇坂泰斗も語る。
「ミスをしてはいけないチーム、こだわっているチームだからこそ、チャレンジすることは良いことですが、ミスの仕方、場所など、そういうのを含めて悪かったのかなと。でも(宮城)天、ひとりの責任ではないですし、チームとして取られたのはセンターサークルあたりなので、まだ守れる距離はあった。チームとしての意思統一が大事でした」(佐々木)
「チームとしてどう前進していきたいかを感じてのプレーだったと思うし、各々が反省するところ。チームとして(宮城)天に入るまでに苦しいパスになったんじゃないかというところもある。それは個人、チームとしてゴールから逆算しなくてはいけない。有効だったのか考えなくちゃいけない」(脇坂)
2失点目も前述したとおり、かつての川崎を見るかのようなFC東京の佐藤龍之介の素晴らしい縦パスをまずは褒めるべきだろう。
もっとも、対応がかなり難しかったはずだが、左ボランチの河原がサイドの選手の警戒を強めた矢先に、中央に入り込んだ佐藤恵允にパスを通された形からの失点を、脇坂は指摘する。
「ブロックを引いたら中をやらせないという基本のところをやられているので、間違いなくそこは出ている選手の責任だし、言われていることを実行できていない。そこはあると思います」
昨季、長谷部体制となり、守備の改善を図ってきたはずだが、なぜ、基本事項が損なわれてしまうのか。その疑問をぶつければ、脇坂はこう返してくれる。
「そこは意識で変わると思うし、全員が守備して攻撃しないと、勝てない時代なので、ひとりが一瞬でも気を抜くと、抜いているつもりはないでしょうけど、中に刺されて決定機を作られてしまう。そこは意識のところで変わるはずなので、それプラスでやり方であったり、技術、スピード、パワーが付いてくると思うので、それをぶつ切りにならないように、選手一人ひとりがつながっていかなくてはいけない。そこは必要かなと。
(練習や普段から守備のベースは)言われているし、やってはいますが...、パッと出ちゃうのはそういうことだと思うので、課題が残り続けている。ただ、すぐ試合がくるので、引きずらないというのは間違いなく大事だと思うので、次のゲームにどう活かせるか。連戦だしやっていきたいです」
意識の重要性を説くのは佐々木も同様だ。
「(2失点目の)あの時間帯、ちょっと身体が動かくなってきた時に、サボってはないですが、足が止まってしまう選手が多い。それが今のチームの現状だと思います。シゲさん(長谷部監督)がやりたい守備をやるには足を止めちゃいけないと思いますし、勝ちたいならそういう時間をなくさなくちゃいけない。ちょっとそういう時間帯が多いと言うか、90分通してやらなくちゃいけないことを疎かにしてしまう面があると思うので、そこは隙だと感じる。そこをなくさないと勝っていけないのかなと」
そして「苦しい時に自分が走って、球際で戦って鼓舞するところは常に意識していますし、副キャプテンとしてチームを引っ張っていかなくてはいけない。その姿勢を見て、感じてくれるチームメイトがひとりでも増えてくれたら良いなと思います」と話す佐々木はこうも続けた。
「(改善するには)意識でしかないと思います。チームでやっているので、みんなに声をかけるところもそうですが、動くのは自分なので、自分の意識のところ、ちょっとキツイ時でもチームのために走るとか、そういったところは自分を含めもっとやらなくちゃいけないと思います」
苦しい状況のなか、まずは危機感を誰もが持ち、意識を変える必要があるのだろう。脇坂も「やりながら時が経っているだけだと、もったいない。時が経っているだけのゲームが浦和さんのゲームを含め続いている。そこはもったいないですし、次のホームゲームで、時間は3日あるので、まずは姿勢のところと、それプラスでプロセスで勝ちに持って行くところが大事なので、シンプルに選手の能力や勢いだけで勝てるチームではないので、プロセスを踏んでしっかりやっていきたいです」とも口にする。
そしてまた佐々木も続ける。
「僕はすごく危機感を感じると言うか、今までの多摩川クラシコと言えば、たくさんの人が来てくれていたと思いますが、僕たちから見ても空席があったと感じました。勝ち続けないといけないと思うし、負けたとしても闘う姿勢などを見せられない試合が多く続いているので、そこの危機感はあります。何人の選手が本気で優勝したいと思っているか。そこは巻き込んでいかなくてはいけないと思いますし、チームがこのままズルズル落ちるのは悔しい。なんとかヤスくん(脇坂)を中心に強いチームになれるように、残り試合少ないですが、頑張っていきたいです」
誰もが必死にやっているのは理解するが、佐々木の言葉通り、より勝利に貪欲にならなくてはいけない状況なのだろう。そのうえで、改めてどんなスタイルを目指すのかより明確にすべきだとも感じる。
FC東京戦の組織だった前半の守備は手応えを得られるものであったはず。昨年ACLエリートで準優勝のベースになったのも、粘り強い守備と、そこからの手数をかけない効率的な攻撃であった。
ACL後は、昨季リーグ最多得点&ワースト3位の失点数を喫するなど、点も取れるが失点もかさむ状態が続き、今季はよりボールを持ってゲームをコントロールすることに挑んだ印象だが、今は技術力を磨き、相手を見て、味方も見て、臨機応変に振る舞える“川崎らしさ”という言葉が呪縛のようになり、攻守にちぐはぐさが生じてしまっているように感じる。守備がなかなか改善できない原因もそこにあるのではないか。
このまま長谷部監督の下で進化を目指すなら、理想は“川崎らしさ”に、アジアの戦いでも勝てるようにシンプルな攻撃や、守備力、力強さを身に付けることだが、目先の結果を得るためには、個人的には相当残念であるが、一度、“川崎らしさ”から離れ、攻守は切り離せず、攻撃は個人の力頼みの傾向は強まるが守備に力を割く、割り切ったチーム作りに舵を切るのもひとつの手なのではないか。
もしくは、かつてのような“川崎らしさ”を貫き続けたいのであれば、少しずつの前進を覚悟を持って信じ、周囲を納得させるような手を打ち出すべきだろう。
クラブとして危機感を持ち、より明確な指針を打ち出さなくてはいけない時期に来ているのは間違いない。そのうえで、選手たちもより意見をぶつけ合い、意地と覚悟を胸に、チームとして最適なバランスに辿り着けるか。
脇坂の言葉のように「時間だけが経つ」試合を続けるのは、誰の得にもならない。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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