“アテ書き”してないのに、まさかの
■碧木愛莉:『サラバ、さらんへ、サラバ』では外山菜穂を演じる。2001年生まれ、千葉県出身。主な出演作に、『福田村事件』『痴人の愛 リバース』『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』『九十歳。何がめでたい』、Netflix『恋愛バトルロワイヤル』、テレビ朝日『顔に泥を塗る』など。2022年「POPEYE」ガールフレンド特集では巻頭メインキャストとして登場。特技はバレエ。
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碧木愛莉さん:おはようございます! 碧木愛莉です、よろしくお願いします。……あ!かわいい!監督! 髪が緑になってる!かわいい!(笑)
ホン監督:(動揺しながら)え、ええっ?!
──今、ちょうど碧木さんの演技の話とかを伺っていたところでした。碧木さんは蒔田さんとの絡みの中で、細かい心の機微を引き出したりする感じがすばらしくて。画面から、「この二人はきちんと存在して、こういう生活をしてきたんだ」っていう脈動感が伝わってきました。碧木さんは菜穂というキャラクターをご自身の中に宿らせるために心掛けたことなどはありますか?
碧木:私と菜穂では割と共通点があるんです。菜穂も体が弱いんですが私もあんまり体が強い方ではないんですね。あと、私、幼いころからバレエをやっていて、イギリスに15歳で留学したんです。一人で。
作中では菜穂も、自分のやりたいことのために16で海外に行くことを決めるんですが、今まで一緒にいた友達や家族、つまり大好きな人から離れるっていうのが全く一緒だったんです。
──えっ。この菜穂って(碧木さんを元にした)アテ書きじゃないですよね。オーディションですもんね。……鳥肌たちました(笑)。
碧木:作品に入る前に、監督からはキャラクターの詳細な設定をはじめ、どうやって生きてきたか、といったことも細かく共有してくださったんですが、そういうところからもインスピレーションを得ることができたので、役作りの面ですごく助かりました。
ホン監督:私自身、言葉で説明するのがちょっと苦手なタイプなんです。言語の問題じゃなく、性格的に。だから、映画の中で描かれていない人物の裏側の設定なんかは、細かく書いた資料を用意して、事前に読んでいただいた方が(役者さんにとっても)楽なのかな、って。
──撮影前の段階で、キャラクターたちはかなり完成されていたんですね。
碧木:そうでした!
ホン監督:ただ、菜穂は最初はちょっと暗めの女の子の設定だったんです。でも碧木さんと出会ったあとは、碧木さんの魅力でもある可愛らしさや愛される感じ、そういう魅力をどう活かせるか、ということをすごく考えながら現場に挑みました。
──設定を作り込んではいたけど、現場で役者さんの良さもマリアージュさせていって。
ホン監督:ほんとうにそうなんです。その状態自体が既に完璧だったんで、私は現場でずっと「ありがとうございます!」と言い続けるみたいな(笑)。本当に最高でした。
──作品が後半に進むにしたがって、キャラクターに対する共感度やリアリティがどんどん上がっていきました。二人の存在感がドキュメンタリーのそれに近いくらい。ラストシーンは演技的にも演出的にも、とても難しい種類のものだと感じましたが、受け入れてしまう説得力も強かったです。
碧木:ラストシーンは、(性質上)本当に一回しか撮れないシーンだったんです。「なるようになるよ」って思いながら突っ込んでいきました。出来るかな……って部分があったんですが、それまで撮ってきた茨城での積み重ねが全部出ました。
──象徴的でした。若い時にみんなが通ってきている葛藤、わかっているけど受け入れたくない何かとか、ぜんぶがそこにある場面でした。現場の雰囲気はいかがでしたか。
碧木:すごく明るくて、みんな「終わるの嫌だね」って。でもそれも監督の人柄が全てですね。監督が「疲れた、休みたい」って言って「じゃあ休もう」みたいになる(笑)。すごくいい雰囲気。
ホン監督:他の現場では、監督は「疲れた」ってあんまり言わないものだとは、以前助監督をした経験から知っていました。けれど、今回の現場で私は「なんか疲れた~」とか言って(笑)。でも、私が疲れたってことは、皆さんも疲れてるってことだと思ったんです。
撮影が始まる前、自分ができることって、明るく、真剣に向き合うことだと考えていました。だから「私ってこういうふざけた人なんです」というのも共有したうえで、みんなが笑える現場にしようと思っていました。
──監督の人柄がそのまま出た現場ですね。
碧木:全員、優しかった。素晴らしいし楽しかったです!
引き算しまくった結果の濃密さ
──そんな楽しい現場、今回はどのくらいの撮影期間だったんですか?
ホン監督:5日間でした。茨城がメインで東京が1日だけで。
碧木:結構短かったですね。
──もっと時間かけていると思っていました。びっくりしました。
碧木:撮った中で削ったシーンも結構あるんですよ。それを全部繋げたのも観てみたいなと思ったりしますね。
ホン監督:(笑)そうですね。パンフレットにも載っている脚本にあるシーンは全部撮ったのですが、尺を調整するために、編集する過程で泣きながら切っていました。そのままだと50分以上になる可能性もありまして。
──実際に今回の本編は30分に満たない尺でしたから、かなりの引き算をされたんですね。
ホン監督:そうですね。私自身、切りながら見やすいテンポ感になることも心がけました。シーンの順番なんかも(最初の脚本からは)大きく変えたりしています。
碧木:冒頭の神社のシーンも、もともと最初じゃなかったですよね。
ホン監督:台本では真ん中くらいだったシーンなんですが、二人の関係性を強調するにはいいシーンだったので前の方に持っていきましたね。
──グッとつかんでくるシーンでした。
ホン監督:書いておいて良かったシーンだな、って思います。おそらくあのシーンを見た瞬間に、観客の皆さんに伝わることを期待して。
碧木:私も完成したのを見た時、テンポも良くすごく観やすいな、切って良かったんだな、って思いました。作品として客観的に観ると、恋愛的な表現が日本ではあまり見ない表現でキュンとしました。「愛しているよ」って伝える方法が色々あるんだなあと。自分が出てはいるんですけど「なんか可愛いな、この二人!」って思いながら観ていました(笑)。
ホン監督:やったぁ~!(笑)
──映画祭での受賞もなされて、反響などはありますか?
碧木:海外のフォロワーさんが増えましたし、韓国の方からメッセージをいただいたりしていました。実はこの作品は2年前に撮っているのですが、日本にいる方たちは「どこかで観られないのか」と言ってくださってたので、ようやく届けられるな、と思っています。
──日本でも劇場公開がされるということですので、より多くの方と共有できますね。
ホン監督:本当そうだったんです……。最近も映画祭で韓国に行ってきたんですけど、7回観てくださった方もいらっしゃって。ソウルに住んでるのに、上映する地方まで足を運んでくださる方が居たりして本当にありがたいです。
──次回作の構想はあるんですか?
碧木:あるんですか?
ホン監督:あります。最近、いろんな家族の形があると思っているので、レズビアンの文脈を踏まえた家族のあり方をテーマに、今、脚本を書いています。長編で撮れたらいいなってことも考えつつ。
──次回も楽しみにしています! まずは、本作を色々な人に見てもらいたいですね。
ホン監督:バルト9などで上映が始まっているんですが、下北沢や他の劇場でも上映する予定が有るようですので、是非、ご覧いただければと思います。
碧木:よろしくお願いします!
──ありがとうございました!
