「『家庭を安全基地にする』ことが先決」
今回のような「無視」は、心理学的には「社会的排除」と呼ばれ、強い孤立感や不安を生む行為だという。
「『仲が良いと思っていた相手に裏切られた』という経験は、その後の人間関係における基本的な信頼感を損なわせ、対人不安を植え付ける可能性があります。
さらに『遊びだから』『ドッキリだから』という言葉が、攻撃を正当化する免罪符として機能し、集団心理をエスカレートさせます」
栗本氏は、語彙の少ない低学年が発するSOSの特徴についてこう説明する。
「身体症状としては、朝の腹痛、頭痛、嘔吐感が挙げられます。
また、登校前に動作が極端に遅くなる、大好きだった遊びを止める、寝つきが悪くなるといった行動の変化があらわれたり、赤ちゃん返りのような行動が見られることもあります。
さらに、文房具の紛失や破損が増えたり、持ち物や衣類に不自然な汚れのあとがある場合もあります」
同氏は、子どもが学校に行きづらくなった時は「家庭を安全基地にする」ことが先決だという。
「『無理して行かなくていいよ』などと伝えます。そして子どもの話をさえぎらずに聞き、いつ・どこで・誰に・何をされたかをメモをして、心身の休養を優先し、エネルギーを回復させます。
スクールカウンセラーや地域の教育相談窓口など、第三者の専門家を早めに巻き込んでください」
いじめ問題に関する相談環境の整備に取り組んでいるのが、匿名相談アプリ「STANDBY」を提供するスタンドバイ株式会社代表取締役の谷山大三郎氏だ。
谷山氏自身、幼少期にいじめを受けた経験がある。
「いじめは、苦しくなればなるほど相談できなくなるという面があります。でも本当は、苦しくなればなるほど相談できるほうがいい。
いじめに限らず、そういう社会を当たり前にしたいという思いがあります」
アプリでは、子どもが学校外の大人に匿名で悩みを相談ができ、「誰かを助けたいけど、次に自分が被害者になるのが怖いから言えない」というときの相談にも利用できるという。
「いじめがゼロになるのは本当に難しい」
ほかにも、WEB健康観察アプリ『シャボテンログ』や『チェンジャーズ』というマンガ教材の制作も行なっている。
マンガ教材には指導案や動画が付いており、リアルな事例を取り上げているのが特徴だ。
「制作する際に現職の先生に聞き取りを行ない、実際に学校で起こっているような内容を取り上げ、子どもたちが話し合えるような形の教材にしました」
こうした事業を手掛ける谷山氏は、いじめ対応で最も大事なのは「子どもに二次被害を与えないこと」だという。
「子どもの話を真剣に聞いてあげて一回解決したとしても、その後も子どもにとってつらさは残り、『やっぱり学校に行きたくない』という気持ちも出てくるでしょう。
その時に『もう忘れなよ』などと言ってしまいがちですが、言われた子どもは『悪いのは私なの?』と感じてしまいます。
ある程度時間が経ってもなお子どもが悩んでいたら、まずは耳を傾けてあげることが必要です」
さらに、いじめの重大事態の発生件数が高止まりしている現状を例に挙げながら、いじめを「深刻化させない」ことも重要だと同氏は話す。
「語弊を恐れずに言えば、今の国の法律の定義に則すと、いじめがゼロになるのは本当に難しい。それよりも『深刻化させない』ということが大事だと考えています」
そのうえで、大人の果たすべき役割について次のように指摘する。
「子どもに対して『頑張って相談しよう』と促すよりは、子どもが悩んだりしたりしている時に、大人がどれくらい『相談したい』相手だと思われるかが大事です。
普段から子どもとよく雑談したりしていくなかで良い関係性を築けば、子どもは『この人に相談しよう』と思ってくれるのではないでしょうか。そういう意味で、私たち大人の責任は大きいです」
最後に、子どもたちに向けて谷山氏はこう呼びかける。
「いじめを受けた側は『きっと私が悪いからだ』と思いがちですが、どうか自分を責めないでほしいと思います」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

