こうした話が複数筋でささやかれ、球界ではただの偶然では片づけられない空気になっているという。
「もともと麟太郎は花巻東時代から注目度が高く、過度な視線に悩まされ、それが異国の大学進学を目指すきっかけになったとされている。だからこそスタンフォード大入学は“反NPB”の決断に見えた。ところが球界では、そうした定説を逆手にとって『実はソフトバンクが、最も長く一番近い位置で見ていた』という話になっている。米国進学とホークス指名は、最初から同じ線上に並んでいたのです。スタンフォードで箔をつけ、もちろんMLBドラフトをにらみ、それでも高評価が得られなければ日本へ戻る。その保険となる、受け皿がソフトバンク。壮大なシナリオは“出来レース”とも言える」(セ・リーグ球団関係者)
メジャー優先という、ソフトバンクにとってはリスクしかないシナリオにも見える。しかし、先の極東担当スカウトは言う。
「麟太郎の打力は魅力でも、米球界の評価軸で見ると『一塁専任型の大型左打者』は競争相手が多すぎるからね」
米大学球界には同タイプの強打者が山積。MLBドラフトは、日本の知名度で札が入る世界ではない。守備位置、機動力、対応力、木製バット適応─すべてを横並びで見られた時、佐々木が“絶対に欲しい上位候補”として扱われる保証はないというわけだ。
「そこをいちばん理解しているのは父親でしょう。佐々木監督はメジャーがどれほど高い壁か、嫌というほどわかっている。奇跡的にMLBから高い評価が出れば行く。出なければ日本へ戻る。その際にいちばん座りがいいのは、すでに交渉権を持っているソフトバンクという話になる」(極東担当スカウト)
ここで無視できないのが、ソフトバンクが過去に示した「米国経由」の成功例だ。カーター・スチュワート・ジュニア(26)は18年MLBドラフトでブレーブスから全体8位指名を受けながら、右手首のメディカル評価を巡って契約に至らなかった。翌年に6年推定700万ドル(約7億7000万円)という契約でソフトバンク入りしている。
結果的に日本球界で活躍するのにも時間はかかったが、マイナーリーグで苦労するようなことはなく、文句なしの条件でプロ入りし、手厚い育成を受けて花開いたのだ。

