
大ヒット映画の続編となる映画「プラダを着た悪魔2」が、5月1日に日米同時公開されたアン・ハサウェイ。20代で演じた当たり役を40代になってどう見せるのか期待が高まる中、日本での公開初日動員27万494人、興行収入は3億5632万700円を記録し、2026年に公開された洋画No.1の大ヒットスタートを切った。この4月には米・ピープル誌による「世界で最も美しい女性」に選出されるなど、20年たっても変わらぬ美貌にSNSでも称賛の声が続々と寄せられている。そこで、今回はあらためて彼女のキャリアを代表作から振り返ってみたい。(以下、出演作のネタバレを含みます)
■プリンセスをキュートに演じた映画デビュー作が大ヒット
1982年生まれのハサウェイ。1999年にドラマシリーズ「Get Real」の主人公に抜てきされた後、2001年の映画「プリティ・プリンセス」の主役でスクリーンデビュー。「プリティ・プリンセス」は、母親と2人暮らしのさえない女子高校生・ミアが、亡き父がヨーロッパにあるジェノヴィア(※架空)という国の女王の息子であることを知り、唯一の王位継承者としての日々が始まる物語だ。
ドジで内気な女子高校生が華やかに生まれ変わる様子をキュートに演じてヒットに導いたハサウェイは、そこから“プリンセス”のイメージが定着。その後に同作の続編や「アン・ハサウェイ 魔法の国のプリンセス」(ともに2004年)が制作されるほどのハマり役だった。
ただ、そのイメージをすぐに払拭する。2人の青年の20年に及ぶ愛を描いたアン・リー監督の秀作「ブロークバック・マウンテン」(2005年)で、ジェイク・ギレンホール演じるジャック・ツイストが他の男性を思いながらも結婚する相手役で、ブロンドヘアになって出演。出番はそれほど多くないながらも、複雑な感情をにじませる演技で鮮烈な印象を残した。
■「プラダを着た悪魔」で世界中の女性を熱狂させる
そして、彼女の代表作の一つとなり、2026年に続編が公開された「プラダを着た悪魔」(ディズニープラスで配信中)へと続く。ただ同作への出演は決して順調なものではなく、9番目の候補であったことを2021年に出演したリアリティー番組でハサウェイは明かした。それでも役を引き寄せ、演じた自身と同年代のアンディことアンドレア・サックスを世界中の女性たちに愛されるキャラクターにした。
ジャーナリストを志望して大学卒業後にニューヨークに来たアンディ。就職活動が思うようにいかない中、ようやくある出版社から返事をもらえて、面接に向かったのが一流ファッション誌「ランウェイ」の名物編集長・ミランダ(メリル・ストリープ)のアシスタントの仕事だった。
ミランダの興味を引いて採用されたものの、デザイナー名もブランド名もまったくちんぷんかんぷんな上、昼夜問わずミランダの指示が飛ぶ。なんとか食らいつこうとするも、うまくできても褒めてもらえず、失敗すれば“悪魔”のようなミランダに怒られる。そんな状況に陥りながら、ミランダの右腕的存在であるナイジェル(スタンリー・トゥッチ)の喝とサポート、そして横暴な面の裏にあるミランダの高い職業意識に触れて成長していく。
やぼったいファッションに身を包んでいたアンディが、プラダやシャネルなどのハイブランドの洋服を身にまとい、やがてその仕事ぶりがミランダの認めるところになるという姿は、働く女性たちにパワーを与えた。映画デビューは文字通りのプリンセスストーリーだったが、本作は変身していく様が現代版“シンデレラ”ストーリーのようでもあった。
ただ、本作が名作となったのは、ハサウェイが体現したアンディが自分という芯を貫いているところだ。ミランダの元を離れる決断をしたアンディの潔さ。背筋をピンと伸ばしたハサウェイの、凛とした演技が光った。
■11kgの減量で挑んだ「レ・ミゼラブル」でオスカー女優に
世界的ヒットでスターへの階段を駆け上がったハサウェイ。プリンセス役で得たアイドル的人気から、着実に演技の幅を広げていく。その証として受賞・ノミネート歴を挙げるならば、薬物中毒の主人公を演じた「レイチェルの結婚」(2008年)で第81回アカデミー賞主演女優賞にノミネート、また難病に冒されたヒロインを務めた「ラブ&ドラッグ」(2010年)でゴールデン・グローブ賞の主演女優賞(映画/コメディ・ミュージカル部門)へのノミネートを経て、ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画「レ・ミゼラブル」(2012年)で、見事に第85回アカデミー賞助演女優賞を獲得した。
“オスカー女優”の仲間入りを果たした「レ・ミゼラブル」は、同名小説を基にブロードウェーをはじめとする世界各地の劇場でロングラン公演されていたミュージカルを映画化。ハサウェイは主人公に愛する娘を託す薄幸の女性・ファンテーヌ役。娘との生活のために髪の毛を売り、娼婦となるファンテーヌ。ハサウェイは、つややかな髪をベリーショートにし、11kgも減量した。
そしてミュージカルということで歌の特訓をした上での、名曲「夢やぶれて」を切々と歌い上げたシーンは予告編だけでもすごさが分かるという前評判だったが、本編ではそれ以上の出来栄えで、アカデミー賞を現実のものとした。
■バッシングの時期を経て、公開待機作も多数の復活劇
キャリアを積み重ねる中、アカデミー賞受賞と前後して、バッシングを受けることにもなった。彼女の名前と憎悪を意味するヘイトを組み合わせた「ハサヘイト」という言葉ができてしまった。SNSでの拡散力もあって、その発端がどこなのか、どうしてそうなったのかは明確なことは分からないが、アカデミー賞のスピーチをはじめ、頑張り過ぎる、優等生過ぎる、あざといという妬みに近い感情からくるもののようだった。
深く傷つきながらも、ハサウェイが演技の道を閉ざすことはなかった。SF作品に挑戦した「インターステラー」(2014年)、ロバート・デ・ニーロと共演した「マイ・インターン」(2015年)などを経て、オール女性キャストで犯罪チームを描いた「オーシャンズ8」(2018年)では、オーバーな話し方や身のこなしで世間の注目を集め続ける天性の女優役の熱演が絶賛された。
SNS時代の宿命は拡散も早いが、収束も早い。そんな中でハサウェイは、その演技力でバッシングを抑えて、地位を不動のものにした。真摯(しんし)に役に向き合い、そこから生まれた役が見る者を引き付ける。「プラダを着た悪魔」のアンディのように、自分という芯を持ち続けるハサウェイの魅力がそれを成り立たせているのではないだろうか。
2012年に結婚し、2人の息子の母にもなったハサウェイ。しばらく仕事のペースを落としていたようだが、2026年は4月に注目の映画スタジオ・A24が手掛ける主演映画「Mother Mary」が公開されたほか、当たり役が40代になった姿を見せてくれる映画「プラダを着た悪魔2」もこのほど公開に。
さらに、名匠クリストファー・ノーラン監督による映画「オデュッセイア」が日本でも年内に公開予定であり、“最旬女優”として出演作が続いている。ますますの活躍で、今後どんなキャラクターを見せてくれるのか、楽しみだ。
◆文=ザテレビジョンシネマ部

