
池脇千鶴さん(2008年9月4日、時事通信フォト)
【画像】「えっマジか」コチラが『ばけばけ』フミ(池脇千鶴)が「育った」とんでもない場所です
神話から怪談まで知識豊富なお母さん
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は1890年に来日し、『怪談』『知られぬ日本の面影』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、再話文学のもととなる数々の怪談を語った妻の小泉セツさんの生涯をモデルにした物語です。
モデルのセツさんと同じく、主人公「松野トキ(演:高石あかり/幼少期:福地美晴)」は怪談が大好きな少女として描かれています。その彼女が怪談を語って貰う相手は、主に母の「フミ(演:池脇千鶴)」です。父「司之介(演:岡部たかし)」がウサギの商売に失敗して巨額の借金を作り、学校に通えなくなったときも、悲しみのなかでトキはフミに怪談をねだっていました。
それにしても、なぜフミはあそこまで怪談に詳しいのでしょうか。劇中では特に語られていませんが、『ばけばけ』公式サイトを見てみると、フミは「出雲大社の上官の家で育ち、出雲の神々の物語や生霊・死霊の話、目に見えないモノの話に詳しく、トキにもよくお話を聞かせてあげる」と説明されています。
出雲大社といえば、6話で婿を探すトキが「どうかよき縁談を」と祈っていた「出雲の大社(おおやしろ)様」のことで、こちらは日本神話に登場する神々(国津神)のなかでも主宰神と呼ばれる「大国主(オオクニヌシ)」が祀られている、日本最古の神社のひとつです。
そこの高官の娘であれば、フミが不思議なものにまつわる話に詳しいのも納得がいきます。また、セツさんの母も、実際そのような人物だったそうです。
※ここから先の記事は、『ばけばけ』の今後の展開に関わる史実の情報に触れています。
トキのモデルの小泉セツさんは、1868年2月4日に生まれ、生後7日で小泉家の親戚で子供のいなかった稲垣家に養子に出されました(1890年、小泉家に復籍)。その彼女を大事に育てたのが、養父の金十郎さん、養祖父の万右衛門さん、そして養母のトミさんです。トミさんは1843年生まれで、『ばけばけ』7話の1886年時点では43歳になっています。
トミさんは松江藩の北堀町に住む原忠兵衛さんという武士の家に生まれ、幼い頃に現在の出雲市の一部にあたる杵築町の高浜家の養女となりました。高浜家は出雲大社の社家(世襲の神職の家柄)で、トミさんもさまざまな神話や怪談を聞いて育ったそうです。
トミさんがセツさんに話した物語は、出雲の神話や人びとの生活に根差した生霊、死霊の話、祈祷や神楽にまつわる話など多岐にわたり、すっかり物語好きになったセツさんは、トミさん以外にも周囲のさまざまな大人に話をねだるようになったといいます。彼女の物語好きは20歳を超えても続き、その豊富な知識がのちに夫となるラフカディオ・ハーンさん(1896年に小泉八雲に改名)の創作活動に大いに貢献しました。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『セツと八雲』(著:小泉凡/朝日新聞出版)、『小泉セツ 八雲と「怪談」を作り上げたばけばけの物語』(三才ブックス)
