
「エースはお前だ!」「驚きの発見」蘭レジェンドたちも絶賛する8戦8発の上田綺世、わずか2か月の“進化と変化”に絶好調の真相を見る【現地発】
10月4日、フェイエノールトは83分に痛恨の失点を喫し、ユトレヒトに2-2と追いつかれてしまった。
「ここは勝ちに行く」。そう決断したロビン・ファン・ペルシ監督は86分からカナダ代表ストライカー、サイル・ラリンを投入し、上田綺世とツートップを組ませた。2分後、このコンビが結果を残す。ラリンからの柔らかなワンタッチパスをゴール前で受けた上田は倒れ込みながら右足で、値千金の決勝ゴールを決めた。こうして3-2で勝利したフェイエノールトはしっかり単独首位の座を守った。
上田のゴールをアシストしたラリンは「最初のワンタッチがアシストになった。出場時間が短くとも、時にはそれでインパクトを残すことができるんだ」と笑顔を見せた。
ユトレヒト戦の上田は20分にもゴールを決めていた。ユトレヒトの最終ラインと3列目の間でフリーのポジションをキープしていた上田は、アンカーのウサマ・タルガリネがボールを持った瞬間、フリーランニングでDFの背後を取った。そこへタルガリネの絶妙のスルーパスが通り、GKをかわした上田は無人のゴールにシュートを流し込んだ。
試合後の記者会見でファン・ペルシ監督は「前半はタルガリネがフリーマンになって、いいプレーを見せた。綺世へのスルーパスは素晴らしかった」と23歳の若きMFに賛辞を送った。
NOS局のフランク・スヌークスは上田の1点目を「上田綺世の今季7ゴール目です! タルガリネから来た、適正なスピードと正確さを持った知性あふれるパスを受けた彼はGKをかわしてから仕留めました。上田がチャンスを逃すことは滅多にありません」と、上田好調の秘密をコンパクトに実況。劇的決勝ゴールのシーンでは「またしても彼だ! 上田綺世が今季8得点目! 上田はヨゼフ・キプリッチのようなステータスをフェイエノールトで得るでしょう。ボックス内の上田は本当に脅威です」と、1989年から6年もの長きに渡ってフェイエノールトでプレーしたハンガリー人レジェンドのように、上田がファンから愛される選手になり得ることをリポートした。
その夜、NOS局の『ストゥディオ・フットボール』は前週に引き続き、上田の話題で持ち切りになった。
ビム・キーフト「ここまで上田がやるとは、まったく期待してなかった。過去2シーズン、サンティアゴ・ヒメネスの控えだった上田を見たとき、私は『うん、これはちょっと』と思った。だけど今の彼はたくさんゴールを決めて自信が漲っていることから、狭いスペースでのプレーがとても良い。彼はペナルティーエリアの中でスペースを探し出すことができるんだ。ヘディングが彼の武器。背丈はないが、良いところに入ってくる。彼は常に動き続けている。私にとって驚きの発見だ」
キーフト同様、オランダの名ストライカーとして活躍したピエール・ファン・ホーイドンクが続けて言う。
ファン・ホーイドンク「よく『選手にとってチーム内競争はいい』と言われる。ただし、ストライカーというポジションは、競争がポジティブに働くとは限らない。(アヤックスで競争が機能しない)ブロビー&ウェフホルスト(2024-25シーズン)、ドルベリ&ウェフホルスト(25-26シーズン)がそうだった」
2025年2月にファン・ペルシがフェイエノールトの指揮官に就いてから、上田はエースストライカーとしての地位を確立させている。おそらくクラブ内ではまだ信用を勝ち切ってなかったことから、夏の市場ではさまざまな噂が飛び交ったが、現場ではプレシーズンから上田がずっと正ストライカーだった。
フェイエノールトが夏の市場で獲得したストライカーは、デンマーク人FWカスパー・テングステッド、そしてラリンのふたり。テングステッドは10月2日のブラガ戦(EL)で先発に抜擢されたが期待に応えられず、かつての名MFラファエル・ファン・デルファールトは「彼を獲得したスカウトはすぐにクビだ!」と辛辣な意見を述べている。
スペインのマジョルカから買い取りオプション付きで9月2日にフェイエノールトと契約したラリンは、これからコンディションを上げて本調子を取り戻そうとしているところ。ファン・ホーイドンク以外にも、オランダ国内では「正位置を争うライバル不在が、上田の不安を取り除いている」という声がかなり多い。
「エースはお前だ」という指揮官からの信頼、ゴールを重ねることで生まれた自信、「綺世にパスを出せばアシストが付く」というチームメイトの期待――。これらが噛み合って、今のフェイエノールトは全員が上田との成功体験を共有し合っている。すると、さらに上田のプレーコンテンツが上質なものになっていく。ユトレヒト戦の上田は、前線に張ることで作ったスペースに自ら降りて、頻繁にビルドアップの経由基地になっていた。また、スローインを近くで受けたり、遠くで胸トラップしてから逆サイドに展開したり、ヘディングで競り勝ったり、スローインのファースト・ターゲットになっていた。
今から2か月前、エクセルシオール戦で、前線に張ってチームに奥行きを作るタスクを実行した上田と、こういう話をした。
――上田選手は自分にあんまりボールが入らなくても下がらない。
「相手のCBと戦うことがチームのビルドアップで求められていること。なるべく高い位置を取って、中盤にスペースを作って。そのスペースを自分が使ってもいいけれど、僕はビルドアップに参加して、降りて組み立てるタイプでもない。だから逆に空けておいて自分がプレーしているエリアを確保している。そうしたら味方もうまく使えますしね。だから、自分は下がらないようにして、相手を高い位置で止めるように意識してます」
最近のアストン・ビラ戦(EL)後、私が彼に「引かなくなりましたよね」と訊くと「いえいえ、まあ」と一旦、間合いを入れてから「フォワードらしいプレーを、フォワードらしく求められるようになりました」と答えた。その「いえいえ、まあ」の一言に、「細かく言うと違うんだけど」というメッセージを受け取った。というのも、アストン・ビラ戦の上田は、中盤でパスを受ける前にターンして相手を置き去りにしたり、中盤に引いてからスルーパスを通したりしていたからだ。
そのことをヒントにユトレヒト戦の上田を見ると、ユトレヒトのDFとMFのライン間にポジションを取って、安定したポストプレーを披露していた。また、彼がもともと得意としている相手の背後を突くフリーランニングでも、ちょっと引いた位置からスプリントを開始している。タルガリネのスルーパスを受けて、先制ゴールを決めたシーンもそう。ユトレヒトの選手が付きづらい曖昧なゾーンにポジションを取ってから、上田はトップスピードに乗って味方からのパスを引き出した。
わずか2か月前、「僕はビルドアップに参加して、降りて組み立てるタイプでもない」ということで、自分が作ったスペースを味方のために供給していた上田は、そのスペースに降りて活用する頻度を増やしていた。
フェイエノールトの前エース、サンティアゴ・ヒメネス(現ミラン)に対し、アルネ・スロット監督(当時。現リバプール)は「ヒメネスはもうちょっとビルドアップなどチームプレーの改善が必要。今はゴールを決めているからいいが、ストライカーは決まらない時期があるもの。特にフェイエノールトから次のステップに進んだとき、ゴール以外での貢献が大事になってくる」と懸念していた。
一方、上田のプレーを観察していると、スロット前監督やファン・ペルシ監督からのオーダーを一つひとつ取り組んで、自分のモノにしているのが伝わってくる。エクセルシオール戦からユトレヒト戦までの2か月間で、明らかにプレーゾーンが広がったのは、その表われのひとつだ。ノーゴールの日があっても、今の上田なら信頼を失なわないだろう。
エースストライカーの活躍は、味方の成長や自信に直結する。まだブレイク夜明け前の23歳、タルガリネは今季2アシスト。どちらも上田のゴールだ。特にユトレヒト戦のアシストは、冒頭で紹介したようにファン・ペルシ監督が手放しで褒めた質の高いものだった。
ベテランのラリンにとっても、上田へのアシストはフェイエノールト移籍後、初めての得点関与ということもあり、試合後はテレビインタビューや記者会見登壇など、メディアから高い注目を集めた。昨季は右SBジバイロ・リードがドンピシャリのクロスを上田に送り、アシストを記録したことが契機となって大活躍し、「オランダ代表待望論」が湧き上がった。
良いクロス、良いスルーパスを送っても、ストライカーが決めなければ、チームメイトも報われない。しかし「綺世に出せば、自分にとっても、チームにとってもおいしい」と上田にボールが集まる。普段はカットインシュートを狙ってばかりいるハジ・ムサだが、ユトレヒト戦では効果的なスルーパスを上田に通した。
味方からの信頼を自信に変えた上田は、まるでセルクル・ブルージュ時代のような馬力あふれるドリブルやシュートをユトレヒトGKに見舞った。リーグ戦8試合で8ゴール、得点王争いトップというスタッツは素晴らしい。それに加えてプレーコンテンツの高さ、チームメイトにもアシストというスタッツを残す役割も見事。だからこそ、幻のゴールがあったとは言え、ノーゴールに終わったアストン・ビラ戦でも、上田の評価は高まり、さらにユトレヒト戦でチームを救ったことで、ベテラン実況の口から「キプリッチを彷彿させる」と言わしめたのだ。
取材・文●中田 徹
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