
2014年のTVアニメ第1シーズン放送から12年。シリーズ累計3000万部を突破する大人気作「魔法科高校の劣等生」の中でも、屈指の人気を誇るエピソードが、アニメーション制作・エイトビットの手によりついにスクリーンへ! 2026年5月8日公開の劇場版「魔法科高校の劣等生 四葉継承編」は、司波達也と深雪の兄妹関係を根底から揺るがす最大の転換点となる。今回、司波達也役の中村悠一、司波深雪役の早見沙織、そしてすべての鍵を握る四葉真夜役の斎藤千和に直撃。過去最大の長台詞に挑んだアフレコの裏側や、10年以上の付き合いだからこそ語れる「お互いから継承したいもの」まで、たっぷりと語ってもらった。
■12年越しの待望エピソード 重厚な世界観と“抜け感”の魅力
――2014年のTVアニメシリーズ開始から12年。ついに原作小説でも屈指の人気エピソードである「四葉継承編」が劇場版として描かれます。映画化を知った際の率直なお気持ちからお聞かせください。
中村 僕は、劇場版でどういうお話をやるかまでは分かっていなかったのですが、台本を読んで、ボリューム的にも映画でじっくり描くのが一番合っているんじゃないかなと感じました。
早見 直近までやっていたTVシリーズは割と高校の学園モノに近い空気が大きかったので、それとは全然違う収録現場になるんじゃないかなと思って。「ついに来たか!」とドキドキしました。
斎藤 最初に映画の話を伺った際は「へえ、やるんだあ」ぐらいの感じだったんですけど、台本を読んでみたら、セリフ量が多くてビックリしました(笑)。これほど四葉家にフォーカスが当たったエピソードはこれまでなかったので、すごく嬉しかったですね。内容的にもかなり攻めたお話なので、劇場で長い時間をかけて見ると、より面白くなるエピソードだなと思いました。

――12年続く「魔法科」シリーズですが、改めて皆さんが感じる本作ならではの魅力とは何でしょうか?
中村 (しばらく悩んで)……演じている側なので、よく分からないんですよね。でも最初のシーズンをやらせてもらった時に感じたのは、僕らは現場で大真面目に真剣に収録しているんだけど、オンエアを観ていて「あれ? このシーンなんかおかしくない?」って(笑)。
早見 分かります。やっぱりツッコミは入りますよね(笑)。
中村 達也たちも僕たちも大真面目にやっているんですけど、客観的に見ると「おかしいだろ」っていう。例えば今回も、四葉本家のシーンで急に旅館の「和室」っぽい部屋が出てくるんです(笑)。でも僕らは、それを当たり前に受け入れて演じているんですけど、よくよく考えたらあの和室は謎だよねって。
斎藤 それまではずっと豪華な洋館だったのにね(笑)。
中村 そう。でも達也たちは当たり前にそこにガラッて入っていくじゃないですか。この作品は、そういうギャップも込みで楽しんでもらえているなというのは、第1シーズンの頃から感じていますね。
早見 たしかに、すっごい重厚な世界観の中にちょっと“抜け感”があるというか。そのバランスが最高だなって個人的には思っています。世界観や魔法の細かい設定などをしっかり追いたい人もいれば、「お兄様を見てます!」っていう人もいて。見る人が楽しみ方を選択できるのがいいですよね。
斎藤 魔法というファンタジーを描いているのに、世界の各勢力の均衡だったり、骨格がしっかりしていて、私たちの世界にも通ずるところがあるんですよね。だから、どんな楽しみ方をしたとしても、その頑丈な物語の枠の中で楽しめるのが魅力なのかなと、ポッと出の私も思っております(笑)。


■過去最大の長台詞!? 本音と嘘が交錯する真夜の真意
――今回の劇場版は、間違いなく真夜が物語の鍵を握っています。過去一番と言っていいほどセリフが多かったのではないでしょうか?
斎藤 もう本当にやめていただきたいです(笑)。今回は、真夜様がひたすらお喋りになるお話でした。
――(笑)。達也との対話シーンでは、ほぼ独白に近いような、長尺の会話劇でしたね。あのシーンはどのような意識で演じられたのでしょうか?
斎藤 あそこは中村くんと二人で収録したんですけど、彼がただただ「頑張れー」って応援してくれてました(笑)。普段お二人が説明しているような世界観の部分を、今回は私がガッツリ説明させていただいたんですが、個人的には「これって真夜様の本音? それとも嘘?」ってずっと悩んでいましたね。
中村 難しいよね、あれは。
斎藤 監督さんたちにも「これはどのセリフが本音なんですか?」って一番最初にお聞きしました。あと、とにかく専門用語の羅列がいっぱいあるので、それをどう分かりやすく伝えるかというところはすごく意識しましたね。あと、少し“余白”を作ることも心がけました。
中村 真夜様って、なかなか正解を与えないキャラクターですもんね。
斎藤 そうなんです。言ったことが全部本当なのかもしれないし、全部が嘘かもしれない。そこは一種、神の境地みたいな、掴みどころのなさというのは意識していました。

――達也としては、その真夜の長台詞を受ける側でした。中村さんはいかがでしたか?
中村 まあ、僕は聞いてただけなんで(笑)。
斎藤 そんなことないよ、喋ってたよ。
中村 多少は喋るけど、やっぱり今回は受け手なんで。共演者として「斎藤さん大変そうだな」っていうところと、解釈がいくらでもできる難しいシーンだなと思っていました。でも完成した映像を見させていただくと、真夜の本音がどこにあるのかを、見ている人が想像したくなるような作りになっているんですよね。達也がいなくなった後のシーンとかも踏まえると、やっぱりどこか憎めないキャラクターだなと、改めて感じましたね。
――今回、達也と深雪の関係性にも変化が生じます。長年演じてきたからこその、お互いの芝居へのアプローチや意識の変化はありましたか?
早見 お兄様はこれまでと同じくずっとブレない中、深雪さんが一人で「うわーっ」て激しく揺れ動いている構図が多かった気がします。ここまでの強い想いを封じ込めながら常に隣にいたんだっていうのは、今回特に伝わるんじゃないかなと。
中村 そうだよね。これまで深雪の心情って、要所で必要なところでしか言ってなかった気がするんですけど、それが第3シーズンあたりからだんだんと匂わせ始めているんですよ。
早見 ちょっとずつ漏れ出てきて、今や全く押し殺せなくて。今回はもう、感情を煮詰めて煮詰めて、それが一気に溢れてきているようなお芝居でしたね。

――対する達也は、それでも感情の揺れを見せないという凄みもありました。
中村 映画の終盤、いろいろなことが判明した直後に二人のシーンがあるんです。あそこの達也はいつも通りにも見えるんですけど、衝撃的な事実を告げられた直後なので、少なからず動揺はあるだろうとも思うんです。それでも、深雪の今の状況を見て、彼女が納得いくようなアプローチをしていて。兄として、自分の迷いを見せないように努めていたのかなと思ったりはしますね。
早見 見ている側としては「もうたまらん」です(笑)。普段とは少し違う気持ちを持ったんじゃないかなとか、妄想しちゃいますよね。あの最後の二人のシーンは絶対に見てほしいです!


■「透明感」や「脳」を奪い合う!? キャスト陣が互いに“継承”したいもの
――タイトルの「継承」にちなんで、3人の中で「お互いのこのスキルや性格を継承したい(自分のものにしたい)」と思う部分はありますか?
中村 (即答で)そんなの早見さんだよね。
早見 ええー!? いやいやいや、やめた方がいいですよ(笑)。
斎藤 私も! この透明感が欲しい(笑)。
中村 じゃあ僕は早見さんの歌唱力を奪います。それでワーナー(※早見の所属レーベル)からデビューします(笑)。
早見 あはは(笑)。私はお二人から欲しいものがあって、まず中村さんの「視点」です。中村さんって、物の見方がすごく素敵だなと思っているので。あ、だから「視点」と言うか、むしろ「脳」ですかね?
中村 「脳」? 全部取られるんですけど(笑)。
早見 そして千和さんは、人生を謳歌する「マインド」や「軌跡」がすごく素敵だなと思っていて。人生を「斎藤千和」さんという一人の人間として味わって生きている感じが憧れなんです。
斎藤 本当? すごい辛い瞬間もあるけど大丈夫?(笑)
中村 じゃあ僕も斎藤さんからもらっていいですか? お芝居をする上での、感情と計算の「割合」が素晴らしいんですよ。
早見 へえー、素敵!
中村 アフレコって画に合わせるとか技術的なルールがある中で、感情だけでお芝居はできないじゃないですか。斎藤さんは感情的なシーンでも、拍とかを完全に無視しないでちゃんとルールに従っていて。昔からそのバランス感覚がすごいなと思っていました。
斎藤 嬉しいです。じゃあ私は、中村くんの「ブレなさ」と「安定感」かな。どんな役をやっている時も、マイクから席に帰ってくるとちゃんとニュートラルな中村くんに戻れる。すごく珍しいタイプだし、安心と信頼の中村くんがいてくれたからこそ、今回もすごくやりやすかったです。
中村 いや、お互いを褒め合うって、気持ちがいいですね(笑)

――素晴らしい関係性ですね。では最後に、映画館へ足を運ぶファンの方へ、見どころとメッセージをお願いします。
中村 「魔法科」として非常に大事なお話になっています。ドラマ中心に進んでいくところも多いですが、劇場で見て絶対に損をさせない作りになっています。今回は本当に深雪と真夜さんがすごくいっぱい喋ってくれるので(笑)、その熱量を劇場の音響の中で見ていただきたいです。僕らも映画館で見た時にどういう風になるのか楽しみにしているので、皆さんもご期待いただければと思います。
早見 スクリーンで見る「魔法科」ならではの、映像と音楽のかっこよさに痺れていただきたいです。そして何より、この「四葉継承編」によって深雪と達也の二人の関係性にまた一つ大きな動きが出る、本当に大事な物語です。これまでシリーズをご覧になっている方も、ここから入ってみようかなという方も、ぜひ皆さんに見ていただきたいなと思います。
斎藤 今までのシリーズの続きではありますけど、四葉家のお話としてわりと独立しているので、「これから入る」という方でも楽しめるお話かなと思っています。アクションとしての“動の戦い”はもちろん、真夜と達也のような会話劇の中での“静の戦い”もあって、どちらも見どころ満載です。満足度の高い作りになっていると思いますので、ぜひ劇場でご覧いただけたら嬉しいです。
――ありがとうございました!
◆取材・文=岡本大介


