ポルシェが世界耐久選手権(WEC)ハイパーカークラスへの参戦を今季限りで終了することを発表。一方でIMSAスポーツカー選手権への参戦は継続する。
2023年シーズンからLMDhマシンの『ポルシェ963』を投入し、WECとIMSAを戦ってきたポルシェ。昨年はポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)6号車のケビン・エストレ、ローレンス・ヴァントール、アンドレ・ロッテラー組がWECドライバーズタイトルを獲得するなど、耐久レースの最高峰で輝きを放ってきたが、WECでの活動は終了することになった。
2026年以降、PPMによるIMSAのGTPクラス参戦は、フォーミュラEの自社チーム活動と並ぶふたつのワークスプログラムのひとつとなる。
ポルシェでモータースポーツを含む研究開発部門を統括するミハエル・シュタイナーは次のように述べた。
「現状の事情を鑑み、来季以降WECへの参戦を継続しないというのは非常に残念だ」
声明では、IMSAでの活動継続が「北米市場および耐久レースがポルシェのブランドにとっていかに重要であるかを強調するもの」と説明されている。
なお、声明中で触れられた「現状」についての具体的な説明はなかったが、2023年からWECとIMSAの両方で展開してきたPPMの体制縮小の背景には、ポルシェの財務的課題があると見られている。ポルシェは米国での輸入関税導入や中国市場での需要低下を受け、販売台数が減少している。
今年7月、オリバー・ブルーメCEOは、2029年までに全従業員の10%削減を目指す計画を発表。販売台数は2024年の30万台超から25万台規模になる見通しを示していた。
一方、ポルシェ・モータースポーツ責任者のトーマス・ローデンバッハは9月のWECオースティン戦で、LMDhプログラムの将来に関する決定は、財政面だけで下すものではないと発言していた。彼はWECの現状に不満を示し、「シリーズには改善の余地がある」とコメント。さらに性能調整を暗に批判する形で「疑問の残る結果が多く見られた」と述べていた。
ローデンバッハは、今年6月のル・マン24時間レースでPPMの6号車が完璧に近いレースを展開しながらも2位に終わったことを引き合いに出した。
「ライバルのことを考えれば2位という結果は悪くないが、一方で6号車はほぼ完璧なレースをしたから悔しい。正直に言えば、6号車は勝って然るべきだった」
ポルシェは2026-27シーズンから始まるフォーミュラEのGen4時代に向けて参戦を継続し、これにより「電動スポーツカーの開発に有益な知見を得る」としている。
また彼らはカスタマーレーシングが同社のモータースポーツ戦略の重要な柱であると強調している。今年のWECではプロトン・コンペティションがカスタマー仕様のポルシェ963を走らせており、LMGT3クラスではマンタイ・レーシングが最新型の911 GT3-Rで参戦している。

