
【北中米W杯出場国紹介|最終回:日本】前回大会で得た自信と前向きな悔しさ。3年半で積み上げてきたもの。目標に掲げる優勝は夢物語では片づけられない
史上初の二期目となる森保一監督が率いる日本代表は、北中米W杯での優勝を目標に掲げている。
もちろん、非現実的と捉える声もあるが、大手ブックメーカーの優勝オッズは100倍前後となり、前回カタール大会の開幕前が250倍前後だったことを考えても、単なる夢物語と片付けられないところまで、成長してきているのも確かだ。
その裏付けとして、カタール大会で得た自信と前向きな悔しさ、そこから3年半でチームと個人が積み上げてきたものがある。
第二次森保ジャパンの強みは、カタール大会の経験とその後のアップデートにある。エースの上田綺世(フェイエノールト)や三笘薫(ブライトン)といった東京五輪世代をベースに、過半数の選手が残り、その多くが所属クラブやリーグのレベルも含めて、着実な成長を見せている。そこに中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)や佐野海舟(マインツ)などが組み込まれる構図だ。
カタール大会では“奇策”だった左右ウイングバックに攻撃的なタレントを用いる3バックも、右の堂安律(フランクフルト)や伊東純也(ゲンク)、左の中村や三笘、あるいは前田大然(セルティック)が、当たり前のように守備のタスクをこなすことで、3-4-2-1をベースに可変性の高いメカニズムが形成されている。
2シャドーと左右ウイングバックに関しては堂安、伊東、三笘、中村など、両ポジションをこなせる選手が多いのも、柔軟なプランを可能にする要素だ。
また守備に関してもハイプレス、ミドルブロック、ローブロックなど状況に応じた対応は、第一次森保ジャパンより、はるかに整理されているのは頼もしい。
そうした戦術的な進化の背景には、キャプテンを務めてきた遠藤航(リバプール)や南野拓実(モナコ)、鎌田大地(クリスタル・パレス)など、チームの軸となる選手が、森保監督と共にカタールから積み上げている部分が少なからずある。
同時に攻撃担当の名波浩コーチ、セットプレー担当の前田遼一コーチ、さらにドイツで多くの経験を積んだ元代表キャプテンの長谷部誠コーチなどが加わり、戦術的なアップデートを助けている。裏方として支える分析チームの充実も大きいだろう。
大会直前には中村俊輔コーチが加わった。明確な役割としてはPK担当になる。これまで日本は4回のベスト16を経験しているが、2010年の南アフリカ大会でパラグアイに、前回のカタール大会ではクロアチアにPK戦で敗れている。
北中米W杯はグループステージの初戦から決勝まで最大8試合、そのうち5試合が決勝トーナメントとなる。その意味でもPKの強化は必要不可欠な要素で、その役割に限らず、豊富な知見がチームのプラスに働く期待がある。
開催国を除く世界最速の予選突破を決めた日本は継続して強さを示してきた。一方で、イランに競り負けて、準々決勝で姿を消した2023年のアジア杯のように、ある種の脆さを見せる試合があったことも確かだ。
ただ、そうした失敗も一つひとつ糧にして、成長に繋げられるのも、森保ジャパンの強みだ。特に期待されるのが、ターンオーバーの底上げ。昨年9月のアメリカ遠征では、スコアレスドローだった1試合目のメキシコ戦から、移動を挟む中2日で、大幅にスタメンを入れ替えてアメリカ戦に臨んだが、0-2で完敗を喫した。
しかし、そのアメリカ戦こそ、長い目で見れば、大きな意味があることを森保監督は示唆する。実際、今年3月のイギリス遠征では、ほぼ同格に位置付けられるスコットランドを相手に、後藤啓介(シント=トロイデン)や鈴木唯人(フライブルク)、佐野航大(NEC)など、フレッシュな選手やこれまでスタメンの経験が少ないメンバーで挑み、後半一気に三笘や堂安、鎌田など主力を投入して得点を奪い、1-0で勝ち切った。
これは11人交代OKという特殊なルールを活かした采配でもあったが、5枚交代がベースとなる本大会にも十分に活かせるはずだ。
その一方で、“聖地”ウェンブリーでのイングランド戦では、怪我で招集できない選手を除く、ベストメンバーと見られるスカッドで、前半にリードを奪って逃げ切るという、カタール大会のドイツ戦やスペイン戦、0-2からの大逆転で、歴史的な勝利となった昨年10月のブラジル戦とも違う勝ち方で、確かな手応えを得ることができた。
もちろん相手がハリー・ケインなど多くの主力を欠いたこともあるが、ゲームプランとして確かな手応えを得られる試合となったのは間違いない。三笘の決勝弾は鮮やかなカウンターから生まれた。
カタール組の一人である谷口彰悟(シント=トロイデン)を中心に、右の渡辺剛(フェイエノールト)、左の伊藤洋輝(バイエルン)が組む3バック、その背後を守る鈴木彩艶(パルマ)とともに、粘り強さと柔軟性を見せて、プレミアリーグで活躍するアタッカー陣を封じ込めた。さらに試合を締める段階では、成長著しい鈴木淳之介(コペンハーゲン)を左ウイングバックに投入して守備の強度を高めるなど、試合の状況に応じた起用も勝因となった。
決勝まで最大8試合を想定すれば、いわゆる“戦術カタール”と呼ばれる、前半を耐えて後半に逆襲するプランだけで、安定して勝ち続けることはほぼ不可能だ。
理想を言えば、優勝候補の列強が相手でも、できるだけボール保持を長くして守備の時間を減らしたいところだが、森保監督が第一期からテーマに挙げていた“臨機応変”がチームには浸透している。
ここまで目に見えているものはベースであって、おそらく本大会に向けて、何かを仕込んでいることは、取材を通じて、森保監督もほのめかしている。それが何かは蓋があくまで楽しみにしたいところだ。
カタール大会からのメンバーを軸に、ラージグループを広げながらチームを進化させてきた森保ジャパン。遠藤や南野をはじめ、怪我人の多発が悩みの種になっているが、森保監督が今、揃えられる最高のメンバーで、本大会に挑んでいってくれるはず。
まずは5月15日に発表されるメンバーが、アクシデントなく、オランダとの初戦を迎えられることを願いたい。
文●河治良幸
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