2026年北中米ワールドカップ(W杯)に向けたブラジル代表のエントリーメンバーが、今月18日に発表される。最大の焦点は、そこにネイマールの名前があるかどうかだ。
この天才を巡る議論には、ルラ大統領も加わっている。「もし出場を望むなら、プロフェッショナルにならなければならない。クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシを鏡として自分を省みるべきだ。名前ではなく、自らのフットボールで挑むことを望まなければならない」
OBの間でも評価は分かれている。盟友ロナウジーニョが「個人的な友人であり、世界のフットボール界における最大の才能の一人だ。大きな助けになると確信しているからこそ、選出されることを願っている」と語る一方で、レジェンドのライーは冷徹だ。「最高の状態にはなく、多くの身体的な問題を抱えてきた。かつての最高のレベルを取り戻せず、スピードも失っている。もちろん今でも良いパスを出し続けているし、クラック(名手)ではあるが、今の彼が現代表に必要とされるレベルにあるとは思えない」
世論もまさに二分しており、調査機関『Quaest』が4月10日から13日にかけて実施したアンケートによると、47%が「招集に賛成」、45%が「反対」と答え、8%が分からないと回答している。
ロドリゴに続いてエステヴァオがW杯絶望的となる怪我に見舞われ、ネイマールの価値は増している。だが、アンチェロッティ監督が求めているのは100%のコンディションだ。2025年1月のサントス復帰後も度重なる怪我に悩まされているが、これまでの歴代監督の下では、プレーできる状態であれば、ほぼ常に招集されてきた。しかしブラジルメディア『Costa Norte』が「アンチェロッティが指揮を執るようになり、ネイマールはついに、自分をメンバー外にできる十分な重みを持った指揮官と対峙することになった」と強調するように、イタリア人指揮官の就任で特別扱いは剥奪されている。
ちなみにネイマールが最後に代表のユニホームを纏ったのは、左膝を負傷し、途中交代となった2023年10月17日の南米予選ウルグアイ戦だ。つまり昨年5月に発足したアンチェロッティ体制の下では、まだ一度も招集されていない。 一方、チームメイトの間では求心力は健在だ。ブラジルの老舗ラジオ局『Super Rádio Tupi』は「周りは技術的、かつ精神的な指針と見なしており、ピッチ上での振る舞いに影響を与える存在だと捉えている」と綴っている。
すべてはサントスで回復した姿を見せられるかどうか、だ。しかし、その局面で起きたのが、5月3日の練習中に発生した「ビンタ騒動」だ。ブラジル大手メディア『R7』は「ロビーニョ・ジュニオールが屈辱的なドリブルを仕掛け、それに対してネイマールが激しい蹴りを見舞った。それが両者の口論を招き、34歳のベテランが18歳の若手の顔面にビンタを浴びせるという事態に発展した」と報じた。
事態はロビーニョ・ジュニオールが、サントスに法的措置を求める通知書を送付するまでに発展したが、周囲のチームメイトたちは、キャプテンに対する処罰を公に要求してロッカールームの空気を悪化させたとして、むしろ被害者側を非難。クラブもクカ監督も穏便に済ませようとするなど、周りの圧力を受けたこの若手は、「謝罪は受け入れた。よくあることだ。彼も僕たちと同じ人間だし、誰もが間違いを犯すものさ」と矛先を収め、急転直下で和解の方向へと舵を切っている。
スポーツサイト『Bolavip』ブラジル版は「もし暴行が真実であると証明されれば、ネイマールは世論を完全に敵に回すという、取り返しのつかない不利益を被ることになりかねない」と断じるなど、当初はメンバー選考への影響が懸念されていた。だが、このまま事態が収まれば、W杯への道が閉ざされることはなさそうだ。
世界的な名将、アンチェロッティの招聘も今のところ特効薬とはならず、国内でのW杯熱は期待されたほどには高まっていない。ブラジルで最も権威ある世論調査機関、『Datafolha』(データフォーリャ研究所)が4月に実施した調査では、54%もの国民が北中米大会に対して「特別な関心を感じていない」と回答した。これは過去最も高い数字である。近年タイトルから遠ざかっている結果でもあるが、ブラジルの有力週刊誌『VEJA』は、ネイマールと代表の現状を重ね合わせ、次のように論じている。
「2010年に鮮烈な代表デビューを飾った早熟の天才ネイマールは、34歳となった今、ブラジル・フットボールそのものを体現する存在となった。すなわち、どこか均衡を欠き、主要タイトルの欠乏に苛立ち、失われたアイデンティティを追い求めている姿そのものである」
国民を二分し、世界のフットボール界が注視するネイマールの招集。その可否が明らかになるXデーまで、残り11日だ。
文●下村正幸
【動画】バルサ時代のネイマールの華麗なるドリブル、シュート、パス【画像】ブラジル代表の主要メンバー! 決勝トーナメント、ラウンド・オブ32で日本代表と対戦する可能性も【北中米W杯】
【画像】ロナウド、カーン、ベッカム、カンナバーロ、イニエスタ、モドリッチ、C・ロナウド、エムバペ、メッシ――サッカーW杯、歴代スター選手特集Part.2(2002年大会以降)

