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岸田戯曲賞W受賞の蓮見翔×大石恵美、演劇と「笑い」のルーツを語る 見えてきた未来への課題

岸田戯曲賞W受賞の蓮見翔×大石恵美、演劇と「笑い」のルーツを語る 見えてきた未来への課題

映画やお笑いから出発し、それぞれ異なるルートで演劇にたどり着いた蓮見翔と大石恵美。岸田國士戯曲賞を同時受賞した2人は、創作の原点にある「笑い」の違いをたどりながら、演劇とお笑いの境界、そしていまの演劇界が抱える課題と可能性について率直に語り合った。(前中後編の後編)

演劇における笑い、ふたりの笑いのルーツ

――ここまでのお話で、おふたりの創作の核に「笑い」の要素があることがよくわかったのですが、それぞれの演劇と笑いにまつわるルーツについてお聞きしていいでしょうか。

大石 もともと私は映画が撮りたくて、立教大学の映像身体学科で学んでいたんです。そこでは監督として俳優と協働するんですけど、俳優たちが何を感じ、考えながら演じているのかが摑めなくて。

例えば、あるセリフを言ってもらうとして、うまく言える人とそうでない人がいますよね。しかもこの「うまい」の感じ方も人それぞれじゃないですか。じゃあ、まずは自分でもやってみようと思って、映画美学校のアクターズコースに入ったんです。

蓮見 そうか、映画から。僕もなんですよ。

大石 蓮見さんは日大の芸術学部ですよね。美学校では演技について学んだので、講師には劇作家や俳優もいて。そこで松井周さんの「サンプル」とか岩井秀人さんの「ハイバイ」に出会い、彼らの会話劇がめっちゃ面白かったので、自分でも書いてみたいなと思ってそのまま演劇のほうに進んだ感じです。

蓮見 僕が日芸に行ったのは、爆笑問題さんの出身校だったから。最初はやっぱお笑いがやりたかったんですよ。でもそこで一緒に演劇やらないかって誘われて。ダウは演劇サークルが母体で、最初はコントばっかりやってたんですけど、メンバーみんな役者志望だから演劇もやらなくちゃと思って。

いざやってみると楽しいんですよね。楽しいからここまで続いてる。大石さんはなんで一人芝居をやるようになったんですか。

大石 もともとはダダルズも複数の俳優と会話劇をやってたんです。でも、私は人に何かを頼むのが絶望的に苦手で、集団で創作をすることにすごく疲れちゃって。

だから、ひとりでやるっていうのは、私が創作を続けていくための最後の砦だったんです。気楽ではあるんだけど、毎回どうにかしてひとりで展開を捻りださなきゃいけないから大変です。

蓮見 すごいっすよ、ほんと。

――逆に蓮見さんはダウ90000が8人組であることをつねに念頭に置きながら創作するとなると、それはそれで制約も多いと思いますが。

蓮見 もう、最悪です(笑)。なんでこんなに大勢いるんだよっていう。みんな同世代なんですけど、5年ぐらい続けてきて、若者が8人揃うような設定がもはや尽きてますから。

大石 それぞれの持ち味に合った設定を割り振ってかなきゃいけないですしね。

蓮見 それもそうだし、やっぱり一人ひとりに売れてほしいっていう気持ちもあるんで、ちゃんと全員に笑いと見せ場を平等にちりばめなきゃいけない。お恥ずかしい話ですけど。メンバーのバランスがよかったんで、そこに毎回助けられてますね。

大石 もともと、お笑いはどんなものを観てたんですか?

蓮見 さまぁ~ずさんがすごく好きで。あと、コントでいえばラーメンズさん。小林賢太郎さんは演劇もやってらっしゃるし、かなり影響を受けてますね。

さまぁ~ずと松本人志

――お笑いからの影響は、いまでも実感していますか?

蓮見 創作活動の原点になってるのは間違いないですね。それこそ、さまぁ~ずさんの単独ライブって、昔からエキストラをバンバン入れるんですよ。自分がコントつくるときに舞台上をにぎやかにしたくなる感じとか、影響受けてるのかなって思ったりしますね。

それもあって、自分でつくるようになってしばらくはライブ自体あんまり観ないようにしてました。やっぱりどうしても似ちゃうだろうから。いまはまた純粋にファンとして観に行けるようになったんですけどね。大石さんはどなたから影響を受けてるんですか?

大石 はい。これはすごく迷いながら名前を挙げさせてもらうんですけど、原体験っていう意味でいうと、私は松本人志の笑いですね。

蓮見 ダウンタウン直撃世代ではないですよね?

大石 兄が『ダウンタウンのごっつええ感じ』のDVDを全巻持っていて、それを私も小学生の頃から観てたので。それこそ松本人志の作品から、笑っていいのかわからないけど、でも笑ってしまうっていう、居心地の悪さが肌感覚で伝わってきて衝撃だったんですよね。

でも今こうして名前を挙げて、手放しで面白いっていうのは無理がありますよね。原体験なのは事実だけど、同時に、自分は一体何を笑っていたんだろうと考え込んでもしまう。存在が自分の中に入り込んでいるから、完全に切り離すこともできなくてむずかしいです。

蓮見 なるほどなあ。悩ましいですね。

――強い影響を受けているだけに、距離感を測りかねているということですよね。では、演劇における「笑い」と、いわゆる「お笑い」の違いはどういうところだと思いますか。

大石 ダウ90000のお客さんは、全員が演劇好きというわけじゃないですよね?

蓮見 むしろお笑い好きの方が多いと思います。『ロマンス』も長いコントだと思って観てた人はいるんじゃないですかね。要所要所で拍手が起こったり、コントライブみたいな笑いが生まれることがあるので。
そういう経験をすると、多くのコント師が目指してる笑いって、実は演劇の場でこそ生まれるんじゃないかと思ったりすることがあって。

大石 どういうことですか?

蓮見 コントには必ず何かしらの設定があるから、演者は設定上の役柄になりきってネタをやるわけですよね。でもお客さんからしたら、舞台上にいるのはどこからどう見てもそのコント師本人なんです。

賞レースなんかとくにそうだけど、芸人がもともと持ってるイメージと外れたことをやると途端にウケないですもん。その点、演劇は目の前の役者じゃなくて、登場人物が言うことやることに対して笑いが起こるじゃないですか。もちろん役者の演技力に左右もされるだろうけど、強いて言えばそこが大きく違う。

――演劇の方が、舞台上の出来事に対しての純粋な笑いが生まれていると。

蓮見 だからダウに関しては、正直それが実現できてなくて。結局、メンバーの個性に合わせて当て書きのようなことをしてるし、お笑い好きのファンたちも観にきてくれてるので。

役者自身のことを知らなくても、やってることが面白いから笑いが起こるっていうのが演劇における笑いの理想ですよね。しかも、演劇はただでさえ笑いが起こりにくい雰囲気で、ハードルも上がってるわけだから。

大石 なるほど。でも今みたいな話って、笑いを重視してるからこその見方っていうか、どうしても笑いの有無をシビアに判定しちゃうけど、演劇って笑い以外の要素もたくさん含まれてるから。むしろ笑いがなくても成立する舞台こそ演劇の豊かさのひとつだ、みたいな見方をする人もいるはずじゃないですか。

蓮見 そりゃあ、当然いますよね。そっか、そういう人たちからすると、僕らは笑いのことしか考えずに、演劇の豊かさを批判してるヤツみたいになっちゃうってことか(笑)。

大石 そうかも(笑)。

蓮見 いや、でもなあ、笑いはあったほうがいいでしょう。あったほうがいいし、締まるとこ締まってないと、ねぇ? それこそ冒頭でも言ったけど、演劇はこの期に及んでお高く止まって偉そうにしてる場合じゃないですよって話じゃないですか。

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