東海道新幹線から車内ワゴン販売が姿を消し、すでに1年半が経過。かつて車内に響いた「お弁当はいかがですか」という声は消え、旅の胃袋を支える主役は今、ホーム上で驚くべき進化を遂げていた。
以前の情熱を継承しつつ、デジタル技術で武装した「高機能・駅弁自販機」が、旅行者の強い味方として台頭しているのだ。
駅弁事情に詳しいフードジャーナリストが解説する。
「ワゴン販売の終了直後は、食べ損ねる『駅弁難民』の増加が危惧されました。しかし現在、主要駅では地元の有名店とコラボしたAI搭載型の自販機が急速に普及しています。単なる冷凍食品の自販機とは異なり、緻密な温度管理によって『作りたて』に近いクオリティーを実現。店舗が閉まっている深夜や早朝の乗客からも、絶大な支持を得ています」
例えば小田原駅の改札内には、新たな駅弁自販機が登場。土地の利を生かした逸品が、ボタンひとつで購入可能になった。京都駅では新幹線ではなく在来線の0番線ホームだが、多様なニーズに応えるべく、ハラル認証を受けた駅弁自販機まで設置。あるいは自販機限定の「激レア駅弁」にありつける駅もあるというのだ。
こうしたきめ細やかな対応は、デジタル化が進んだからこそなしえた「新時代のホスピタリティ」と言える。
指定した店舗で受け取って乗車できる「完売の悲劇」なし
いや、自販機だけではない。事前予約システム「駅弁予約とっておき」の活用はむしろ、自販機以上に盛況だ。
「東京、名古屋、新大阪といった主要駅から乗車する場合、スマホで事前に好みの弁当を予約しておけば、指定した店舗でサッと受け取って乗車できます。行列に並ぶロスがなく、お目当てが完売している悲劇も防げる。まさにタイパ至上主義の現代にマッチしたスタイルでしょう」(前出・フードジャーナリスト)
かつてのワゴン販売が持っていた「旅の情緒」は形を変えて、利便性の極致へと昇華。ワゴン販売がなくなったのは寂しいが、大きな混乱は今のところ見られない。
流れる車窓を眺めながら、選び抜いた駅弁の蓋を開ける。その至福の瞬間を守るため、駅ナカのグルメ革命は今日も進化を続けている。
(滝川与一)

