
空から落ちてきたシータを抱きとめようとするパズー。『天空の城ラピュタ』静止画より (C)1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
【画像】え、「元ネタあったんか!」 こちらが『ラピュタ』飛行石のモデルが登場する戦後の名作『沙漠の魔王』です(4枚)
想像以上にガッツリ元ネタがあった「飛行石」
1986年に公開された映画『天空の城ラピュタ』は2026年で公開40周年を迎えます。本作は宮崎駿監督の自由な想像力と緻密な描写が結実した、爽快なファンタジー活劇です。
とはいえ、宮崎駿監督も人間です。完全にゼロからイメージを構築しているわけではありません。それまでの膨大なインプットが、その想像力の背骨になっています。
実際、『天空の城のラピュタ』の「ラピュタ」自体、『ガリヴァー旅行記』(著:ジョナサン・スウィフト)に登場する「ラピュタ」から拝借したものです。
そして、本作のキーアイテムである「飛行石」もまた、元ネタがありました。
『ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ』(文春文庫)に収録されたインタビューで、この「飛行石」のモチーフに関して、言及している箇所があります。少し長いですが、引用しましょう。
「『冒険王』という昔の雑誌に、どぎつい四色刷りで、福島鉄次という人が描いた『沙漠の魔王』という絵物語が載っていたんです。(中略)何を隠そう、そこに石を持つと飛べるという話が出てくるんです。ひとつの宝石で、それを持っていると飛べるんです。だから、あんまりオリジナルを主張できないんですよ(笑)」
はっきり、そして確かに「元ネタ」であることを明言しています。楽しそうに語る宮崎駿監督の顔すら浮かんでくるようです。
さて、この『沙漠の魔王』(著:福島鉄次)という作品について、少し解説を加えます。戦後間もない1949年から1956年にかけて『冒険王』(秋田書店)で連載された作品です。アメリカンコミックのようなタッチで描かれた本作はコマ割りこそされていますが、文章が添えられており、マンガより絵物語とした方がしっくりきます。
アラビア風でもあり、アフリカ風でもある、異郷の地における少年の大冒険を描いた本作は、凄まじい情報量とテンションで、独自のファンタジーを築き上げました。
ロボット兵士、潜水艦、戦車、巨大な魔王……その世界には宮崎駿監督が大好きなモチーフばかりが登場します。実際、宮崎駿監督は、少年時代から『沙漠の魔王』が大好きで、繰り返し読み込んでいたのです。
では『沙漠の魔王』における飛行石はどのようなものだったのでしょうか。
そもそも『ラピュタ』では青く光る、反重力の物質として登場しました。またラピュタの場所を光線で示してもくれます。
一方で、『沙漠の魔王』の飛行石はというと、名前はそのまま「飛行石」です。ルビーのような宝石であり、持つと空を飛ぶことができます。ビジュアルの描写は少なく、むしろ「空を飛べる」という機能が強調されていました。
もしかしたら今現在、『沙漠の魔王』という作品、あるいは福島鉄次という作家は、時代の流れに、埋もれつつあるかもしれません。しかし、宮崎駿監督をはじめ、多くのクリエイターに、多大な影響を与えました。
つまり宮崎駿作品には、『沙漠の魔王』のエッセンスが、含まれています。さらに、宮崎駿作品に影響を受けたクリエイターたちにも、もちろん受け継がれているのです。
参考:
『ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ』(文春文庫)
