今まさに世界を騒がせているのが、大西洋を航行していたオランダ船籍のクルーズ船「MVホンディス号」でハンタウイルスの集団感染が発生した問題だ。WHO(世界保健機関)によると、これまで8人が感染もしくは感染の疑いがあるとされ、うち3人は死亡している。
ハンタウイルスはネズミなどが媒介するウイルスで、大きく分けて「北米・南米型」「アジア・欧州型」の2種類がある。症状としては、北米・南米型は呼吸器疾患、アジア・欧州型は腎機能障害が生じ、 致死率は北米・南米型40%、アジア・欧州型は3~15%だ。
今回の感染者は全員「アンデス株(南米型)」で、このアンデス株は過去にヒト・ヒト感染の事例がある。
クルーズ船での集団感染となると、2020年の「ダイヤモンド・プリンセス号」での新型コロナウイルス感染拡大が思い起こされる。「コロナの次はハンタか」と日本での感染拡大が心配になるが、厚労省によれば、現時点で日本国内で患者発生の報告はなく、仮に感染した乗客が日本に入国しても、国内でヒト・ヒト感染により感染拡大する可能性は低いという。
原因不明の奇病は「梅田熱」と呼ばれた
とはいえ、日本とは全く無関係かといえば、そうでもない。実はかつて、日本でハンタウイルスが流行ったことがあったからだ。社会部記者が言う。
「1960年頃から約10年間、大阪の中心部・梅田エリアで『梅田熱』と呼ばれる原因不明の奇病が流行し、119人が感染、2人が死亡しました。のちに原因はハンタウイルス感染とわかったのですが、当時の梅田には終戦後の焼け跡に建てられた小さな飲食店が密集する地域があり、ネズミが多かったと思われます」
クルーズ船「MVホンディウス」は現地時間5月10日早朝、受け入れ先のスペイン領カナリア諸島、テネリフェ島に到着。乗客らは健康状態に問題がないことを確認された上で、それぞれの出身国が手配した航空機で離島した。
帰国後は各国の当局が健康状態のチェックを続ける方針だが、これ以上の騒ぎにならぬよう、願うしかない。
(鈴木十朗)

