
俳優として確固たるキャリアを築き、共演を重ねてきた中村倫也と神木隆之介。互いに絶大な信頼を寄せる2人が、5月15日(金)公開の映画「君のクイズ」で再び相まみえた。クイズ番組の決勝戦を舞台に、知識とプライドを賭けて火花を散らす天才プレーヤーを熱演。撮影現場で感じた緊張感から、役を通して見出した互いの新たな一面、そして「答えのない世界」で生きる俳優という職業への向き合い方まで語り合った。
■「決め手は中村倫也主演」互いへの揺るぎない信頼
小川哲の同名小説を映画化。クイズ番組「Q-1グランプリ」決勝戦、挑戦者の三島玲央(中村)は、対戦相手・本庄絆(神木)が、問題を1文字も読まれる前に解答し、優勝するという不可解な事態を目の当たりにする。ヤラセを疑う三島。彼は本庄がなぜ「ゼロ文字」で正解したのか、その謎を突き止めていく。思考の限界に挑む2人のクイズプレーヤーによる、壮絶なクイズ・ミステリー・エンターテインメントだ。
――まず、本作への出演の決め手や、脚本を読んだ時の率直な感想をお聞かせください。
中村倫也:最初に吉野(耕平)監督の企画だと伺い、原作を読みました。非常にスリリングでよくできた物語で、これを吉野監督が映像化するのはぴったりだと思いました。それが一番の決め手です。台本は原作からさらに設定が工夫されており、ト書きの段階で監督の中に明確な映像表現があることが分かりましたので、自分は役に集中すれば面白くしてくれるだろうと確信しました。
神木隆之介:僕の決め手は一つだけです。企画書に「主演・中村倫也」と書かれているのを見て、即座に「参加したい」と思いました。その後頂いた台本は、初めてご一緒する吉野監督の演出プランがト書きに描かれていて、どういう映像になるのかとワクワクしました。展開もスピーディーで、一読者として夢中で読み終えました。
――神木さんは「決め手が中村さん」とのことですが、その理由をもう少し詳しく聞きたいです。
神木:もう、全面的に信頼しきっているので。「屍人荘の殺人」(2019年)の時に撮影も宣伝もずっと一緒で、僕にとって本当に信頼できる“お兄ちゃん”になりました。そんなお兄ちゃんが主演の映画なら、喜んでどこまでもついていくだけです。その一心でした。
中村:面白い縁だよね。隆が主演の作品で出会い、「屍人荘」でバディを組み、アニメやドラマでも共演して。今度は僕が主演の作品に隆が来てくれる。歴史を感じます。
――中村さんは、相手役が神木さんだと聞いていかがでしたか?
中村:うれしく、ワクワクしました。聞いた瞬間に、回答席に座る隆の姿が目に浮かんだんです。「めちゃくちゃ決まった目でいるんだろうな」と(笑)。三島にとって本庄はライバルであり、同志でもある複雑な存在。そういう関係性を隆なら見事に表現してくれるだろうと思いました。気心の知れた仲なので頼もしくもありましたね。
■緊張感に満ちたクイズシーンの裏側
――お二人は、もともとクイズは得意な方ですか?
中村:得意も何も、競技として本格的にやったことは全くないです。本作で描かれるような競技クイズは、バラエティー番組とは全くの別物ですから。嫌いではないですが、得意ではありません。
神木:僕はクイズが好きですが、全然答えられません(笑)。テレビで「東大王」(TBS系)のような番組を見ていても、問題が数文字読まれただけでボタンを押すじゃないですか。「なぜ分かるんだ」と、いつも驚かされています。でも、物事の歴史がひも解かれていく過程は面白くて、勉強になります。
――実際にクイズプレーヤーを演じてみていかがでしたか?
中村:テレビを見て「なぜこの段階で解けるんだろう」と思っていましたが、そこにはしっかりとした理由や理屈があるのだと知りました。知識量や傾向と対策など、地に足のついた競技なのだと。演じてからはクイズ番組の見方が変わりましたね。もちろん、自分でできるとは思いませんが(笑)。
――回答席で対峙したお互いの印象はいかがでしたか?
中村:(神木さんを見て)「やべえ奴だな」と思いましたよね(笑)。クランクインがQ-1グランプリのシーンだったのですが、本庄というキャラクターを完璧に準備してきてくれたことがすぐに分かり、うれしくなりました。
神木:僕が演じた本庄が危うさを持つ「天才」なら、三島は「難攻不落の要塞」でした。どんな状況でも崩れない、積み重ねてきた実力で相手を倒していくイメージです。撮影中も、役を通して「どこかで弱点を見つけないと、このままでは負けてしまう」という焦りを感じさせるオーラをまとっていました。
■魂が共鳴する「ソウルメイト」のような関係性
――お二人の目が鋭く、見ている側もひりひりするような緊張感がありました。
中村:特にこの人(神木さん)の目は怖かったですよ(笑)。
神木:(笑)。口を読むシーンは、実際に遠くにいる方がリアルタイムで問題文を読んでくださるので、本当に口元を凝視しながら演じていました。あの真剣さはリアルだったと思います。
中村:あのセットには独特の緊張感がありましたね。予告映像を見るだけでも、あの時の感覚が体によみがえってきて、見るのが嫌になるくらいです(笑)。
――三島と本庄はライバルであり同志でもあるとのことですが、神木さんは2人の関係に名前をつけるとしたら何だと思いますか?
神木:「ソウルメイト」でしょうか。本庄は、三島を倒すべき相手とは見ていなかった気がします。ただ、自分のことを唯一理解してくれるプレーヤーだと感じていたのではないでしょうか。だからこそ、予告編にもあるように「三島さん、答えてください」と、彼にだけ問いかけたのだと思います。
中村:厄介な奴ですよね(笑)。でも、クイズプレーヤーでなくても、そういう関係性はあると思います。自分でもよく分からない自分を理解し、包み込んでくれるような出会いが、長く続く人間関係を築く上で重要な要素なのかもしれません。
■「答えのない世界」で模索する俳優業の醍醐味
――三島は人生をクイズに捧げた男ですが、お二人が「俳優という仕事に人生を捧げている」と感じる瞬間はありますか?
中村:一番忙しかった時期は、一日22時間くらい仕事をしていましたから、物理的には捧げていました。精神的な面で言うと、僕は飽き性なので、数カ月ごとに環境とやるべきことが変わるこの仕事は性に合っていると感じます。
神木:僕は「捧げている」という感覚はあまりないです。ただただ「楽しい」という気持ちだけで続けてきました。むしろ、睡眠時間を削ってでもゲームをしてしまうので、趣味の方に捧げているかもしれません(笑)。でも、周りの方々に「捧げている」と思っていただけるなら、それはこの職業を全力でやっている証拠なので、とても誇らしいです。
――本作の題材であるクイズには明確な「答え」がありますが、俳優業には正解がありません。その苦しさを感じることはありますか?
中村:僕は昔から国語のテストが嫌いだったんです。「筆者の伝えたいこと」を答える問題に、「そんなの、人それぞれでいいじゃないか」と。限定された答えにはめていく作業が退屈に感じる性分なのでしょう。不確かなものだからこそ模索するのが楽しいし、「答えは皆さんで見つけてください」と委ねられる今の仕事は、豊かだと感じています。
神木:答えがないからこそ不安になる時はあります。自分たちの意図がうまく伝わらないと落ち込みますし、「ちゃんとできていただろうか」と正解を探してしまう自分もいます。でも逆に、正解がないからこそ何でもできるという自由度もある。新しいものを生み出せるのは、そこが楽しさでもあります。たまにSNSを見て落ち込みますけどね(笑)。
◆取材・文=磯部正和/スタイリスト=松本ユウスケ(anahoc)(中村)、吉本知嗣(神木)/ヘア&メーク=Eimy(Three Gateee LLC.)(中村)、大野彰宏(神木)/衣装協力=CROQUIS-速写-、JNBY(中村)、UJOH/M(神木)

