
本作は商業映画監督デビュー作『みなに幸あれ』(23)が国内外で注目された下津優太が監督するSFサイコエンタテインメント。組体操という「集団行動」における人間の行動心理とその狂気をコミカルかつシリアスに描きつつ、個性が強調されるいまの時代に集団に埋没することの幸せとはなにかを問いかける。主演、山田杏奈が家族に問題を抱える、引っ込み思案な普通の高校生の主人公、愛を演じる。愛のクラスメイトであり、海外帰りで日本の学校の協調性を重んじる集団行動に馴染めない転校生、優を青木柚が演じる。そして、不敵な笑みを浮かべ集団を導く校長をピエールが演じる。

唯一無二の存在感で映画やドラマを牽引し続けるピエール。コミカルな役から狂気を孕んだ人物まで自在に演じ分け、その自然体な芝居で観る者を一瞬で物語へ引き込む稀有な存在だ。近年も数々の話題作に出演し、強烈な印象を残し続けている。そんなピエールが本作で演じるのは、生徒たちを集団へと導いていく謎の校長。穏やかな口調と柔らかな笑顔で生徒たちに接しながらも、その言葉にはどこか滲み出る不気味さがあり、学校という枠を超え、周辺地域、そして宇宙全体をも静かに支配していく重要人物だ。
今回解禁された場面写真では、そんな校長の支配力に満ちた異様なカリスマ性が切り取られている。生徒たちの上に乗り、騎馬戦のように担がれながらも微動だにしない姿。愛(山田)へ優しげな笑顔を向けながら、底知れない不穏さを漂わせる姿。そして、校長室へとやってきた愛と優(青木)を前に満面の笑みで出迎えるカットでは、校長室中を支配する異様な熱量が伝わってくる。さらに、生徒たちを従え、両手を広げながらなにかに呼びかける姿は、いまにも「ヤーッ!」と声が聞こえてきそうな、笑ってしまう狂気が充満している。
重要な役どころとなる校長役について下津監督は「中盤のリズムに乗るシーンは、『Netflixで⾒たやつだー!』と思いながらモニターを⾒ていました(笑)。愛と優に⽴ちはだかる壁のようなボス感は、本当にピエールさんだからこそ出せたものだなと思います」と、その圧倒的な説得力を称賛した。
組体操が世界を救うという、可笑しな設定でありながら、人間の集団心理の恐ろしさを突きつける本作。異様な世界観の中心で集団を導くピエールの本物の狂気に期待が高まる。
文/鈴木レイヤ
