日本代表の右サイド争いは激しい。
圧倒的なスキルと駆け引きを武器に攻撃に創造性をもたらす久保建英、守備力も高く様々なタスクワークを担えるダイナミックな堂安律、縦へのスピードを生かした推進力とクロス精度で違いを作る伊東純也。
それぞれ異なる武器を持つ実力者が並ぶ中で、今季所属クラブで貴重な経験を積んで、自身の成長と向き合っている選手がいる。
ブレーメンの菅原由勢だ。
33節ホッフェンハイム戦の開始3分で、相手選手を後ろから思いっきり削ってしまい一発レッドをもらったのはいただけない。2試合の出場停止処分を受けたことで、最終節にも出場はできない。
ダニエル・トゥーン監督は「ユウキは私とチームに謝罪をしていたが、そうする必要はない。彼の優れた人間性が表れている」とコメント。夏にサウサンプトンとのレンタル移籍は終わるが、クラブは来季もプレーできる可能性を探っているという。チームマネージャーのクリスティアン・フリッツは「レッドカードは交渉に影響をもたらさない。これから菅原と代理人と話を重ねる予定だ」と話していた。確かな評価がされている。
残留争いに巻き込まれたブレーメンでは、2月に監督交代へ踏み切り、トゥーン新体制がスタート。守備の安定を優先する3バック基調へ舵を切る中で、サイドに求められる役割も大きく変化した。
失点を減らすため重心をやや後ろへ置き、カウンター主体の攻撃へ移行する。その中でサイドにはスピードと強度のある選手が必要になった。
就任直後の菅原は必ずしも絶対的な存在ではなかった。出場できない試合もあり、一時は序列を落としていた。
それでも菅原は、この停滞期をただの序列低下のままでは終わらせなかった。
1対1でより存在感を発揮し、ゲームの流れをコントロールし、崩しのきっかけを作る存在になること。
その変化が形となって表れたのが、4月のノルトダービーだった。
残留争いの直接的ライバルでもあるハンブルガーSVをホームに迎えた大一番で、ブレーメンは3-1の勝利。トゥーン監督が「今季で最も重要な試合だった」と位置づけたこの試合で、菅原は右ウイングバックとして攻撃のテンポを作り続けた。
特に目立ったのは、単なる縦突破に終わらない右サイドの崩しの多様性である。
外で受けてクロス。一度預けてのリターン。内側へ切り返して持ち直し、相手守備のズレを生む。時に放たれるシュートも鋭さがある。
状況に応じて立ち位置を変えながら、アイデアを加えながら、停滞しがちなブレーメンの攻撃に流動性を与えていた。 本人が自身のプレーについてこう語っていたことがある。
「右サイドからの崩しはバリエーションが増えたと思う。流動性を出していかないとスペースは開かない。受けてからのアイデア、出して動いてどこにスペースが生まれるのか、1対1で仕掛けるところ。もっと嫌な選手にならないといけない」
そこで明確な成長曲線を描いてみせた。オランダ時代から評価されてきたキック精度や推進力に加え、試合の流れを変えられるSB/WBへ進化しようとしている。
中盤からのクロスやゴールライン際からの折り返しの精度はチーム内でもトップクラス。多くの試合で高いパス成功率を記録し、プレッシャーのかかる場面でも解決策を見つけ出し、不用意なボールロストも少なくなっている。
もちろんまだ課題は残る。
守備時の一瞬の寄せの甘さ、切り替え時の初動、クロス対応時のポジショニング、押し込まれた時間帯にラインへ吸収された際の粘り。
新体制で一度序列を落とした背景には、この守備強度とスピードへの不安があったのも事実だ。
ただ、3-3で引き分けたフランクフルト戦では、同サイドで対峙するドイツ代表SBナサニエル・ブラウンとのマッチアップでほぼ完璧に対応し、スピード勝負でも引けを取らなかった。
「マンマーク気味なんでね。個人で負けていたら話にならないと思っていた。ドイツ代表で、いい選手、という情報は入っていたので、単純に負けたくなかったです。自分が右サイドを制圧できれば、少なからず勝てる確率は上がると思っていた。これを毎試合やる必要があると思います。一喜一憂せずに」
本人は毎試合映像を見返し、自己修正を続けている。
「自分のサイドをコントロールできるようにならなきゃいけないと感じています。毎試合、自分のプレーを見直して、収穫と課題を抽出しながらやっています」
4バックにおけるSBとしてだけではなく、5バックでのWBとしても経験を積み、アタッキングサードで攻撃バリエーションを高めるプレーを見せていることには、確かな価値がある。
日本代表の右サイドで菅原のように幅も深みも取れ、配球もでき、1対1で運べる右利きのWBは希少だ。ブレーメンで菅原が積み上げている経験は、代表でも必要な要素になるのではないだろうか。
取材・文●中野吉之伴
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