
平日と休日で起きる時間が違えば、食べる時間も変わります。
間食が多い人もいれば、昼にしっかり食べて夜は軽めに済ませる人もいます。
では、日本人の食事リズムを全体として見た場合、どのようなタイプに分けられるのでしょうか。
東京大学大学院 医学系研究科のチームは、20〜69歳の日本人1047人を対象に、11日間にわたる詳細な食事記録を分析。
その結果、日本人の食事リズムは主に4つのタイプに分類できることが明らかになりました。
研究成果は2026年4月16日付で学術誌『British Journal of Nutrition』に掲載されています。
目次
- 「朝食を食べるか」だけでは食事リズムは分からない
- 日本人の食事リズムは4タイプに分かれる
「朝食を食べるか」だけでは食事リズムは分からない
近年、栄養学では「何を食べるか」だけでなく、「いつ食べるか」にも注目が集まっています。
この分野は「時間栄養学」と呼ばれ、朝食の有無、夕食の時間、食事回数、間食の頻度などが、健康とどう関わるのかを調べるものです。
ただし、これまでの研究では「朝食を抜くかどうか」「夜遅く食べるかどうか」といった、単独の習慣に注目するものが多くありました。
しかし、実際の生活では食行動はもっと複雑です。
例えば、平日は早起きして朝食を食べる人でも、休日には昼近くまで寝て朝食を抜くかもしれません。
あるいは、夕食は少なめでも、その代わり午後に何度も間食しているかもしれません。
つまり、食事リズムを理解するには、一日の食事全体の流れをまとめて見る必要があります。
そこで研究チームは、全国26都道府県の20〜69歳の日本人男女1047人を対象に、11日間の食事記録を実施。
参加者には、食事をするたびに時刻を記録してもらい、あわせて起床時刻と就寝時刻も記録してもらいました。
また、そのうち4日間については、食事内容も詳しく記録されました。
このデータから、食事回数、間食回数、食事の中間時刻、起床から最初の食事までの時間、最後の食事から就寝までの時間、勤務日と休日の食事時間のズレなど、19種類の時間栄養学的な変数を作成。
そして、これらを「主成分分析」という統計手法で整理しました。
主成分分析とは、多くの情報を少数の特徴にまとめる方法です。
たとえるなら、バラバラに見える食生活のクセを、「この人は朝型寄り」「この人は休日にズレやすい」といった大きなパターンに整理する作業です。
その結果、日本人の食事リズムは主に4つの型に分けられることが分かりました。
日本人の食事リズムは4タイプに分かれる
1つ目は「勤務日に朝食早め・多め型」です。
このタイプは、仕事がある日に起床が早く、朝食を早い時間にしっかり食べる傾向があります。
勤務日の食事回数も比較的多く、起きてから最初の食事までの時間が短いことが特徴です。
いわば、平日の朝を軸にして生活が整っているタイプです。
2つ目は「休日に朝食抜き型」です。
このタイプでは、仕事がある日とない日で食事時間のズレが大きく、休日には食事の中間時刻が遅くなり、起床から最初の食事までの時間も長くなります。
結果として、休日に朝食を抜きやすいリズムになります。
研究では、若年層や男性、夜型傾向の人、睡眠時間が短い人、一人暮らしの人、交代勤務経験のある人などで、この傾向が見られやすいことも示されました。
3つ目は「間食多め・夕食少なめ型」です。
このタイプは、勤務日・休日を問わず間食の回数が多く、朝や午後の間食から摂るエネルギーの割合が高い一方で、夕食から摂るエネルギーの割合が低いことが特徴です。
「夕食を軽くしている」と聞くと健康的に思えるかもしれませんが、その分を間食で補っている場合、単純に夕食だけを見ても食生活の実態は分かりません。
4つ目は「昼食多め・夕食早め型」です。
このタイプは、昼食から摂るエネルギーの割合が高く、夕食を早めに終える傾向があります。
最後の食事から就寝までの時間が長いことも特徴です。

これら4つの型は、食事リズムの個人差の63%を説明していました。
つまり、日本人の食べ方は「朝食を食べる人」「食べない人」といった単純な分け方ではなく、勤務日と休日の違い、間食、昼食と夕食の配分まで含めた複数のリズムとして現れていたのです。
さらに興味深いのは、これらの食事リズムが、性別、年齢、勤務形態、睡眠の傾向などとは関連していた一方で、食事の質や肥満とは統計的に有意な関連を示さなかった点です。
研究では、食事の質を健康食インデックスで評価し、肥満をBMIや腹囲で調べました。
しかし、4つの食事リズムのいずれについても、食事の質や肥満との明確な関連は認められませんでした。
これは「休日に朝食を抜くから不健康」「夕食が早いから健康」といった単純な判断ができないことを示しています。
もちろん、今回の結果は「食事リズムは健康に関係ない」という意味ではありません。
この研究は横断研究であり、因果関係を判断するものではないからです。
また、参加者は全国から集められているものの、完全な全国代表サンプルではありません。
そのため、今後はより長期的な追跡研究や、食事内容との組み合わせを調べる研究が必要です。
それでも今回の研究は、日本人の食事リズムを包括的に可視化した重要な成果です。
私たちはつい、「朝食を食べなさい」「夜遅く食べないように」といった一律のルールで食生活を考えがちです。
しかし実際には、食事リズムは仕事、休日、睡眠、家族構成、勤務形態と深く結びついています。
健康的な食生活を考えるには、単に理想の時間割を押しつけるのではなく、その人がどんな生活の中で食べているのかを見つめる必要があるのかもしれません。
参考文献
日本人の「食事リズム」には 4 つの型があることを特定 ――時間栄養学による包括的な食行動分析――(PDF)
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400287685.pdf
元論文
Identification of chrono-nutrition behaviour patterns and their associations with sociodemographic characteristics, diet quality and obesity
https://doi.org/10.1017/S0007114526107090
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

