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データを用いてナポリ、ローマ、ユベントスを徹底分析「根付きつつあるガスペリーニ哲学」「トゥドル監督にとって最優先の課題は」セリエA序盤戦総括(前編)【現地発コラム】

データを用いてナポリ、ローマ、ユベントスを徹底分析「根付きつつあるガスペリーニ哲学」「トゥドル監督にとって最優先の課題は」セリエA序盤戦総括(前編)【現地発コラム】

開幕から6試合を消化して10月の代表ウィークを迎えた2025-26シーズンのセリエAは、首位のナポリから、ローマ、ミラン、インテル、ユベントスが2~3ポイント差で続く形でトップ5を形成と、早くも順位表が固まってきた感がある。

 ただ、このトップ5の中での順位はまだ、対戦相手、チームの出来上がり具合、パフォーマンスと結果のズレなどによる「誤差」の範囲内と捉えるべきで、あと5試合戦って11月の代表ウィークを迎える頃になれば、シーズンの全貌がよりはっきりと見えてくるだろう。

 とはいえ、この6試合の戦いぶりからだけでも、各チームの状況はある程度見えてくる。ここでは、目先の結果よりもピッチ上でのチームのパフォーマンスに注目し、客観的な判断・評価の材料としてデータを使いながら、トップ5それぞれの現状と見通しを整理してみよう。データは『Opta Analyst』、『FBref』、『MARKSTATS』という3つのサイトを参照している。

 勝点15で首位を走るナポリは、中位~下位勢から取りこぼしなく5勝を挙げた一方で、ミランとの直接対決(アウェー)を落としている。こちらの記事(10月1日/デ・ブライネを「遊軍」として起用するコンテ監督の狙い、ナポリが目指すべき到達点は――「いまはまだ、試行錯誤を重ねている段階」【現地発コラム】)で見た通り、アントニオ・コンテ監督が、昨シーズンの優勝チームに、新戦力の目玉であるケビン・デ・ブライネをいかにして組み込むかを模索している状況にある。

 データを見ると、ボール支配率(62.2%)はリーグ1位、アタッキングサードのみの支配率であるフィールドティルト(69.9%)とディフェンスラインの高さ(52.4m)もリーグで2番目と、ボールと地域を支配し、主導権を握って試合を進めるスタイルがはっきりと表われている。

 ボールと地域を支配しても、ラスト30mで相手の最終ラインを攻略できなければ、ゴール、そして勝利には結びつかないが、この点でもナポリは十分な数字を記録している。得点(12)、そして作り出した決定機の質と量を示すゴール期待値(xG、1試合平均1.9)はいずれもリーグ2位。シュート数(同16.0)、枠内シュート数(同6.17)、ペナルティーエリアへのパス本数(同9.0)でもトップ3に入っており、攻撃最終局面のボリュームも十分だ。

 チャンスメイクはクロス(同22.2本=リーグ2位)が主体だがスルーパス(同3.5本=リーグ1位)も多く、ドリブル突破(成功数同6.5回=リーグ11位)は少ない。シュート1本あたりのxG(0.12)はリーグ1位で、決定機の質も高い。

 6試合で失点6はリーグ7位タイだが、得失点差(6)ではリーグ2位タイと、攻守のバランスは十分に取れている。PPDA(相手のボール保持機会あたり許したパス本数)10.7はリーグ8位、敵陣でのボール奪取数(1試合平均5.17)はリーグで下から6番目と、プレスの強度はそれほど高くないが、被シュート数(同10.3本)は4位、被枠内シュート数(同2.5本)は2位、被枠内シュート率(24.4%)もリーグで3番目に低い数字で、自陣低い位置での守備は堅固だ。

 こうしてデータを見ると大きな穴は見当たらず、攻守のバランスがよく取れていることがわかる。今後デ・ブライネがチームの中で機能し始めれば、さらなるパフォーマンスの上乗せが期待できるだけに、現状でこのレベルなら、今後も優勝戦線の主役を演じ続ける可能性は高いと言えそうだ。

  同じく5勝1敗の首位タイながら、得失点差で2位につけるローマは、6試合がいずれも中位~下位チームとの対戦であり、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ新体制の真価が問われるのはこれから。代表ウィーク明けにはインテル戦が組まれており、これが最初の試金石になりそうだ。

 ガスペリーニ監督といえば、マンツーマンディフェンスに基盤を置き、攻守ともに1対1のデュエルを重視するアグレッシブなスタイルが看板。それはデータにもはっきりと表われている。ボール支配率(59.3%)、フィールドティルト(65.8%)はいずれもリーグ3位、ディフェンスラインの高さ(50.2m)もリーグ4位。

 象徴的なのは、プレス強度を示すPPDA(8.6)、敵陣でのボール奪取数(1試合平均8.17回)がいずれもリーグ2位という数字だ。積極的に前に出る守備で、攻撃時はもちろん守備時にも敵陣で試合を進めようとするガスペリーニ哲学が、すでにチームにしっかり根付きつつある。

 気がかりなのは、敵陣で試合を進めている割には、ラスト30m攻略の質がやや低い点。7得点はリーグ9位タイ、ゴール期待値(1試合平均1.16)、シュート数(同12.8本)、枠内シュート数(同4.67本)はいずれも10位前後と、攻撃最終局面のデータは明らかに物足りなさを残している。

 ドリブル突破成功数(同5回)、スルーパス(同0.5本)がいずれもリーグ下位なのに対し、クロス本数(同12.7本)はリーグ5位と、チャンスメイクをクロスに頼っていることがわかるが、そのクロス成功率は19.7%(リーグ13位)と低い数字に留まっている。右ウイングのマティアス・ソウレが3得点を挙げているが、それ以外の得点はMF、DFでストライカー陣のゴールはゼロ。攻撃の完成度を高めていくのはこれからの課題ということか。

 それを補って首位タイの座をもたらしているのは、わずか2失点というリーグトップの堅守。すでに見たプレス強度の高さ、敵陣でのボール奪取の多さに加えて、被シュート数(1試合平均9.67本)はリーグ3位、被枠内シュート数(同2.83本)もリーグ4位と、自陣でのゴールプロテクションでも安定した守備を誇っている。6試合通算のゴール期待値3.7(リーグ1位)に対して2失点しか喫していないGKミル・スビラールの活躍も特記すべきだ。

  イーゴル・トゥドル監督の下で陣容を少なからず入れ替え、新たなスタートを切ったユベントスは、3勝3分(勝点12)で首位から3ポイント差の5位。開幕3連勝の後はチャンピオンズリーグ2試合を含め5連続ドローとやや煮え切らない感はあるが、以下で見る前線の構成をはじめ、チームがまだ構築途上で固まっていない状況の中、インテル、アタランタ、ミランという上位陣と対戦してこの結果、この順位は決して悪くない。

 ボール支配率(58.6%)、フィールドティルト(61.3%)はいずれもリーグ4位で、強敵相手の試合が多かったにもかかわらず、主導権を握って試合を進める力があることを示している。ただ、敵陣まではスムーズに前進できても、ラスト30m攻略に関しては課題を残しているように見える。

 象徴的なのは、ファイナルサードへのパス本数(1試合平均34.8本)ではリーグ4位にもかかわらず、ペナルティーエリアへのパス本数(同7.8本)はトップ5の中で最も少ない7位に留まっていること。これはパスだけでなくキャリー(ドリブルでの持ち上がり)についても同じで、ファイナルサードへの侵入数(同19.2回)はリーグ1位だが、ペナルティーエリアへの侵入数(同3.83回)はリーグ13位。押し込みながらも攻め切れない課題がはっきりと浮かび上がってくる。

 シュート数(1試合平均16.0本)、枠内シュート数(同5.33本)はいずれもリーグ3位と、決して悪くないように見える。しかし、そこから生み出されたゴール期待値(同1.21)はリーグ9位。決まる確率の低い強引なシュート、遠い距離からのシュートが多く、攻撃の量に質が伴っていないことは明らかだ。

 今シーズンのユベントスは、契約最終年を迎えたドゥシャン・ヴラホビッチを売却し、昨季パリ・サンジェルマンからレンタルしていたランダル・コロ・ムアニを買い取って攻撃の中心に据える構想で移籍マーケットに臨みながら、この2つのオペレーションのどちらも完遂できず、シーズン開幕後も前線の陣容が固まらない困難に直面した。結果的には、リールとの契約満了でフリーになったジョナサン・デイビッドに加え、純粋なセンターフォワードではないロイス・オペンダを獲得。ヴラホビッチは残留という形に落ち着いた。

  ここまでのところFW陣で最も好調に見えるのは、CLを含めて8試合で4得点をあげているそのヴラホビッチ。しかし、契約満了前の1月に移籍する可能性も残っているためかトゥドル監督はヴラホビッチを中核に据えず、デイビッド、オペンダをスタメン起用しながら、毎試合異なる前線の構成を試しており、いまだ基本形が固まっていない状態だ。

 ヴラホビッチ、デイビッド、オペンダはそれぞれタイプがかなり異なるストライカーであり、その持ち味を活かすために求められる戦術メカニズムも異なっている。その点をどう整理し、チームの基本形を確立していくかが、トゥドル監督にとって最優先の課題だろう。

 幸いなのは、守備に関してはある程度計算が立っているところ。PPDA(10.7)はリーグ7位でナポリと同レベル、敵陣でのボール奪取数(1試合平均7.17)はリーグ5位と、プレス強度は際立って高いわけではなく、被シュート数(同12.2本)もリーグ10位だが、被枠内シュート数(同2.5本)、被枠内シュート率(20.5%)はいずれもリーグ2位、PKを除いた被ゴール期待値(xGA、0.75)もリーグ3位と、ゴール前の守りは十分に堅い。

 上で触れた通り、インテル、アタランタ、ミランという強豪との対戦が含まれており、しかもインテル戦が4-3の乱戦だったことを考慮に入れれば、評価に値する数字だと言える。

 トータルで見ればここからさらに上、優勝戦線への参入を狙えるかどうかは、前線の構成を確立し、それに合わせた戦術の微調整を通して、攻撃のクオリティーを高められるかどうかに懸かっていると言えそうだ。

 後編では残る2チーム、ミラン、インテルのミラノ勢について掘り下げたい。

文●片野道郎

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配信元: THE DIGEST

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