国内のコンペティションの試合はその国で開催されるのが当然と思われるが、現実にはアメリカのMLBが日本や韓国で開幕戦を迎えたり、欧州サッカーでも強豪国のクラブは国内カップ戦決勝を戦うために東アジアや中東まで足を伸ばしたりしている。
人気チームがこうした遠征を行なう件については、今や市場開拓などの目的から仕方がないと受け入れる考えもある一方で、やはりそれぞれの国の中で開催されるべきであるという声も当然ながら多い。そしてカップ戦については譲歩するも、国内リーグ戦の海外開催は絶対に受け入れられないという人々は、これまでにもこうしたアイデアが浮上しては、それを拒絶してきた。
しかしこのたび、UEFA(欧州サッカー連盟)は、今冬にラ・リーガのバルセロナ対ビジャレアル戦を12月にアメリカのマイアミで、セリエAのミラン対コモ戦を来年2月にオーストラリアのパースで、それぞれ開催を承認。これにより、欧州の国内リーグ戦が史上初めて別の大陸で行なわれる。
この歴史的決定について、UEFAはこれが「同様の事例を次々と生む前例」になるものではないと強調。「我々も基本的には国内リーグ戦を本国以外で開催するアイデアには明確には反対だ。しかしながら、現在見直し中のFIFA(国際サッカー連盟)の規定が十分に明確かつ詳細ではないため、我々の執行委員会は『例外的な措置』として、今回の2件の要請に対して承認するという、非常に不本意な決定を下した」との声明を発表した。
またUEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長も、「リーグ戦はそれぞれの自国で行なわれるべきだ。それ以外の開催は、忠実にスタジアムに足を運ぶファンを疎外し、競技の公正さを損なう要因となり得る。我々の協議でも、この懸念が広く共有されている。我々の立場は明確だ。国内リーグの一体性を守り、サッカーが本来の土壌に根付いた存在であり続けると保証する」と語っている。
ラ・リーガ、セリエAによって、今回の海外開催のアイデアが出されて以降、欧州のサポーター団体は「クラブのルーツを奪う」「クラブを伝統やコミュニティーから切り離された娯楽商品へと貶める」といった理由から、これに猛反対する意思を示し、UEFAに対しては協議の場を設ける機会を要請していたという。 にもかかわらず、UEFAが承認したことについて、英国の日刊紙『The Guardian』は、「UEFAの幹部らが、この決定が現実的かつやむを得ない判断だったと考えている理由のひとつは、この計画を推進する側と法的対立に陥る可能性があり、仮に敗訴した場合には『雪崩を打つように海外開催が広がる』恐れがあったためだ」と報じている。
同メディアによれば、「国内リーグ戦を海外で開催するという道が最初に開かれたのは昨年。アメリカに拠点を置くプロモーター会社『Relevent Sports』が、FIFAとの間で和解に合意したのがきっかけだった」と指摘。同社は、「リーグ戦の国外開催を禁止するFIFAの方針は不当だ」として訴訟を起こしていたが、和解によってこれを取り下げた。
FIFAは2018年、同社が企画した「バルセロナ対ジローナ戦のマイアミ開催」を拒否していたが、「その後、こうした国外開催を防ぐための明確な規則作りは実際には進んでいない。2024年にこの問題を検討するための作業部会が設置されたものの、まだ何の結論も出していない。さらに今年、『Relevent Sports』は2027年から2033年までのUEFAのクラブ大会(チャンピオンズリーグなど)の世界的な商業権を獲得している」(『The Guardian』紙)。
同メディアはまた、「UEFAは今後、加盟協会が今回と同様の要請を行なう際には事前にUEFAとの協議による合意が必要だと明かしたが、関係者全員が明確な規制整備に本腰を入れない限り、同様の事例が再発する可能性は依然として高いと見られている」と警告する。欧州サポーター団体「フットボール・サポーターズ・ヨーロッパ(FSE)」も、UEFAが国内試合の海外開催に反対の姿勢を見せた点を評価しつつも、再発防止を強く求めたという。
ちなみにFSEは、今回の騒動の発端となる要請を行なったラ・リーガとセリエAに対して、海外での試合開催計画撤回も要求。また、こうした動きが他のリーグにも広がる可能性を懸念しているが、「世界最高峰リーグ」とされるプレミアリーグがこれに追随して国内試合を海外で開催する意向は今のところはないようだ。
構成●THE DIGEST編集部
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