恐れていたことが現実になった。「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物エトミデートを使用したとして、医薬品医療機器法違反(薬機法違反)の罪で起訴された元広島東洋カープの羽月隆太郎被告の初公判で、衝撃の証言が飛び出した。
5月15日に広島地裁で開かれた公判では、被告人質問で羽月被告が次のように説明。
「周囲に使っているカープ選手がいたので、自分も大丈夫だという甘い考えが勝ってしまいました」
冒頭陳述などによると、羽月被告がエトミデートを使い始めたのは2025年の春頃。東京遠征中にバーで、知人から中東発祥の水タバコ「シーシャ」であると騙され、吸入したのがきっかけだという。
タバコも電子タバコも吸わず、プロ野球選手として人一倍、体に気を使っていたはずの羽月被告が転落したのは、典型的な「誘い文句」から。
くだんの知人は羽月被告に対して大麻の合法成分「CBD(カンナビジオール)のようなもの」と説明。不眠症とコンディション調整に悩んでいた羽月被告に、
「これを使えば眠れる」
「ドーピング検査にも引っかからない」
「吸っている選手もいる」
と悪魔の囁きで誘い込む。そして電子タバコ風の「シーシャ」を渡したという。
エトミデートは無臭であり、騙されて吸引しても本人はそれが違法薬物だとはなかなか気付かない。レモンティーやアールグレイ、ライチ、ピーチ、バニラやメントールなど、若い男女が好みそうな香りをつけ、SNS上では「映える」カラフルで可愛い容器に入れられたものが散見される。「シーシャ」のほか「笑気ガス」「リラックスリキッド」と紹介されている。
即効性があり、吸引すると浮遊感や多幸感を抱くが、効くのは30分と短く、何度も繰り返し吸引することで、短期間のうちに依存症を引き起こす。ゾンビたばこと言われるゆえんは、依存するとゾンビのごとき動きを見せて歩行困難になるからで、ふらつき、けいれんや意識障害、多臓器不全という命に関わる症状が出る。簡単に手に入る一方、他薬物より死に至りやすい、実に危険な指定薬物だ。
これから厳しい非難と疑惑の目が向けられる
被告人質問で羽月被告は、違法性の認識はなかったと証言。その後、テレビのニュースでエトミデートが違法薬物であると知ったが、使用を続けてしまったのはやはり、「周囲にも使っているカープ選手がいた」からだった。
エトミデート使用の有無は、尿検査と血液検査ですぐわかる。羽月被告が広島県警に逮捕されたのは今年1月27日で、キャンプ前に全選手を検査するには十分な時間があったはずだが…。
公判は1日で結審し、羽月被告には拘禁刑1年、執行猶予3年の判決が言い渡された。だが、甘い対応に終始してきた広島カープと球団オーナー、筆頭株主のマツダ、そして選手たちにはこれから、厳しい非難と疑惑の目が向けられることになる。
羽月被告がバラした「薬物を使っているカープ選手」をめぐり、第二ラウンドが始まるかもしれない。
(那須優子/医療ジャーナリスト)

