【3人の演技合戦も楽しめる】
その物語を牽引する重要キャラは三島、本庄、そして「Q-1グランプリ」の総合演出を担当する坂田泰彦(ムロツヨシさん)です。
三島は生真面目なクイズ王。このすごい記憶力と知識で勝ち抜いてきたクイズ界のエースですが、あまり明るいタイプではありません。
本庄は自由奔放で華やかなタイプ。相手を挑発するパフォーマンスなど強気の態度で、スター性はこっちの方があるかも。
そんなふたりを闘わせて番組を盛り上げるのは総合演出の坂田。実はこの人がいちばんクセ者で、視聴率のためならなんでもする、常識はずれなことでもOKというテレビ界のモンスターなのです。
この3人を演じる中村倫也さん、神木隆之介さん、ムロツヨシさんがいいんですよ〜。
最初、三島と本庄のキャスティングは「逆のほうがいいんじゃないの?」と思ったのですが、見ているうちに、やっぱりこれがベストだと。三島の精神的な重みを中村さんがズシっと受け止めて演じ、本庄の軽やかさとしたたかさを神木さんが緩急つけて演じていて素晴らしい。
そしてムロツヨシさん! 仕事はできるけれど、手段を選ばないから「この人は敵が多いだろうな」と思わずにいられないテレビ業界人を好演。笑顔で楽しそうにえげつない仕掛けをかましてくるんですよ。いわゆるヒール役でもあるのですが、ムロさんが愛嬌たっぷりに演じていて最高に憎たらしい!
【クイズの世界は底なし沼】
本作を観て、クイズってハマると底なし沼なんだと思いました。圧倒的な教養と記憶力、ロジックにも強く、頭の回転が速いという人ほどクイズ沼にハマると抜けられなくなりそう。なぜなら、超難問に対し頭脳をフル回転させて、知識を総動員して正解を勝ち取ったとき、ものすごいカタルシスがありそうだし……。優勝なんてしちゃったら万能感に酔いしれそう。本庄もそんな感じだったし。
そんなクイズワールドとキャラクターの人間性をあぶりだしたのは吉野耕平監督。問題がスクリーンいっぱいに広がる映像マジック、三島や本庄の脳内が問題に反応して解き明かしていくビジュアルは楽しかったし、三島と本庄の本質に絞り込んでいく演出はスリリングで「さすが!」 としか言いようがない。
吉野監督は『ハケンアニメ!』(2022)もよかったし、エンタテインメントの裏側を描くのが上手いんですね。
この映画を観る前と見たあとでは、クイズ番組の見方が変わるかも。クイズファン、ミステリーファンには特におすすめしたい作品です。
執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©2026 映画『君のクイズ』製作委員会
『君のクイズ』
2026年5月15日(金)より全国ロードショー
原作:小川哲『君のクイズ』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
監督:吉野耕平
クイズ監修:QuizKnock
出演:中村倫也 神木隆之介
森川葵 水沢林太郎 福澤重文 吉住 白宮みずほ 大西利空 坂東工
ユースケ・サンタマリア / 堀田真由 ムロツヨシ

