主演の山下智久をはじめ、おなじみのキャストが再集結した映画『正直不動産』(5月15日公開)が控えるいま、映画のキーマンとなる人物たちを軸に、2シーズンにわたって放送され、スピンオフも作られたドラマシリーズを振り返っていきたい。
■嘘がつけなくなった営業マン、永瀬の成長ぶり

「正直不動産」の軸となるのが、主人公の永瀬財地(山下)。爽やかな笑顔の裏で息を吐くように嘘を並べて次々と契約を掴み取り、陰で“ライアー永瀬”と呼ばれていた成績至上主義者だったが、ある地鎮祭の際に古い祠を壊した祟りによって嘘がつけなくなってしまう。
契約直前にもかかわらず、悪徳オーナーの思惑による家賃が安いからくりを暴露してしまうなど、自分や会社に不利に働くような業界の闇の部分まで大っぴらに話してしまう“正直営業”スタイルへと転じた永瀬は、様々な思惑がうごめく不動産業界で悪戦苦闘しながらも、自分本位だったキャラクターから客に寄り添う人間へ、少しずつ成長していく。

そんな永瀬の成長のきっかけとなるのが、まっすぐひたむきな性格で“カスタマーファースト”がモットーの営業スタイルを貫く後輩、月下咲良(福原遥)の存在だ。夢見がちで効率の悪い理想主義者の月下だが、決して客を見捨てない姿に永瀬もほだされ、よきコンビとしてトラブルを乗り越えていく。

またドラマでは、永瀬がかつて生活苦から不動産詐欺に遭いそうだったところを登坂寿郎社長(草刈正雄)に救われたことや不動産業に対して情熱を持っていることが明らかに。恋仲へと発展していく榎本美波(泉里香)との関係など、グレーな存在から徐々に人間らしさを獲得し、ここぞのタイミングで「私は嘘がつけない人間なんです」という決め台詞を放つヒロイックな存在になっていく成長ぶりで物語を牽引した。

■永瀬とは違う“正しさ”を持つ桐山の信念とは?
そんな永瀬のライバルで、今回の映画でもキーマンとなるのが市原隼人演じる桐山貴久だ。もともと登坂不動産の社員だった桐山は、入居直前に急遽家賃が値上がりした賃貸物件の後始末を永瀬に押し付ける(オーナー側ののっぴきならない事情があったことが明らかになるが)など、ビジネスとして割り切る現実的な合理主義者。

ドラマでは、永瀬と共に取り組んだある大型案件を通じて、建設業に携わっていた父親が責任をすべて押し付けられて命を絶ったという悲痛な過去を抱えていたことが判明。きれいごとだけでは済まされないという思いから永瀬とぶつかり合うものの、永瀬の“正直営業”を目の当たりにして和解、そしてそのまま会社を去り、不動産ブローカーとして独立した。

そんな桐山の抱える大型案件が今回の映画のメインエピソードとして語られ、さらなる過去が明らかになっていく。
■“ライアー永瀬”を作ったクセ者が集うミネルヴァ不動産

個性豊かな登坂不動産の面々に幾度となく立ち塞がるのが、鵤聖人(高橋克典)率いるミネルヴァ不動産だ。

契約のためなら違法すれすれの手段も辞さないあくどい不動産屋で、そのやり方に疑問を抱きつつも、一人息子を養うためにモラルとの間で葛藤しながら信念を貫く花澤涼子(倉科カナ)や、誰にも壁を作らない“正直すぎる”新人、雪野遥香(見上愛)などクセ者ばかり。

そのなかでもエースとして君臨するのが、「正直不動産スペシャル」から登場した神木涼真(ディーン・フジオカ)。登坂不動産の元社員で、嘘も厭わない悪魔的な営業スタイルを永瀬に仕込んだ師匠。気合いの入った時に華麗なタップを踏むという変わり者だ。

もともと営業成績は芳しくなかった神木は「1位になること」を息子と約束した矢先に交通事故で妻子を亡くした過去を持ち、タップダンスも息子に教えるために習っていたという悲劇の男。スピンオフの「正直不動産ミネルヴァSPECIAL」でも妻子への愛惜が語られるなど、徐々に血の通った人間として描かれていった。
■積み重ねてきた“正直”が試される映画『正直不動産』
そんな個性豊かなキャラクターたちが続投する映画『正直不動産』では、顧客が巻き込まれた海外の不動産投資詐欺をはじめ、ミネルヴァによる悪質な地上げなど、様々な困難に永瀬たちが立ち向かっていく。

“ライアー永瀬”時代に仲介した売れないミュージシャン、山口ヒロト(岩崎大昇/KEY TO LIT)の賃貸トラブルに、彼の幼なじみである月下が奔走。一方の永瀬は、桐山が故郷のけやきの市で主導する、東京ドーム4個分に相当する約6万坪の土地をめぐる大規模開発計画に巻き込まれてしまう。

なかなかうまく進まず、神木の影もチラつく計画に友人として協力しようとするも、桐山に「甘い考え」と一蹴され、登坂社長からは「関わるなら覚悟を決めろ」と進退を迫られる永瀬は、葛藤しながらも正直さを武器に人々の心を動かしていく。

永瀬の正直さをはじめ、桐山の秘められた過去など、ドラマシリーズで積み上げられていったキャラクターの魅力が花開き、物語に深みをもたらしている映画『正直不動産』。基本的な説明が入るなど、ドラマを観ていなくても楽しめる親切設計になっているので、ぜひ劇場に足を運んでみてほしい。
文/サンクレイオ翼
※岩崎大昇の「崎」は正しくは「たつさき」
