自転車にまつわるトラブルが、全国で相次いでいる。交差点では歩行者と自転車が言い争い、細い車道ではドライバーがクラクションを鳴らす。朝の通学路では学生の並走が注意を受け、夕方の帰宅ラッシュではスマホ片手の運転者が車と接触しそうになる。日常の風景が今、社会問題として浮かび上がっている。歩行者もドライバーも自転車ユーザーも、それぞれが「自分は悪くない」と主張する構図だ。
きっかけとなったのは、2026年4月1日から施行される自転車関連の法改正である。警察庁はこれまで指導中心だった違反処分に代え、交通反則通告制度(いわゆる青切符)を自転車にも適用する。対象は16歳以上。ながら運転(スマホ操作など)は反則金1万2000円、信号無視や通行区分違反(逆走・歩道走行など)は6000円、一時不停止や傘差し運転、イヤホン使用などは5000円の反則金が科される見込みだ。これまで「注意」で済んでいた行為が、罰金の対象となるというわけである。
歩行者やドライバーからは「ようやく厳しくなる」と歓迎の声が上がる一方で、自転車利用者の反発は根強い。とりわけ都心の車道は狭く、駐車車両を避けながら走るだけでも命がけだ。「ルール通りに走ったら、逆に危ない」という声は少なくない。道路交通法第17条第1項では車道走行が原則とされるが、自転車専用レーンの整備は進まず、歩道は人であふれている。安心して走れる場所がないというのが実情だ。
もちろん、自転車側にも問題はある。歩道を猛スピードで走り、ベルを鳴らして歩行者を威嚇する。信号を無視し、スマホを見ながら交差点を渡る危険運転があとを絶たない。警察庁の統計によれば、2024年の自転車関連事故は全国で約6万7000件も発生し、死傷者は6万人を超えた。そのうちおよそ6割にはなんらかのルール違反が関係しており、死亡事故に限れば、約8割で違反が確認されている。
イヤホンの使用についても混乱が残る。使用自体は全国で一律に禁止されていない(各都道府県の公安委員会が、個別にルール設定)。ただし、周囲の音が聞こえない状態で運転すると「安全運転義務違反」とみなされ、反則金の対象になる可能性がある。問題はその「聞こえない」の基準が曖昧なことだ。都道府県によって運用が異なり、片耳イヤホンや骨伝導タイプが認められるかどうかも統一されていない。
反則金制度でルールが明確になったように見えても、実際は線引きが曖昧なままだ。地域や警察によって運用が違えば、利用者も報道も混乱する。だからこそ、制度の実態をわかりやすく伝える努力が、行政やメディアには求められている。
(ケン高田)

