「サイゼリヤ」で席に着き、テーブルの札にあるQRコードを読み込もうとすると、注文画面の手前で固まる。画面に出ているのは「画面を縦にしてご利用下さい」という警告だった。
普通にスマホを構えているだけなのに、なぜか持ち方を注意される。SNSで「縦横デッドロック」と呼ばれるこの珍現象。やり玉に挙げられたのは、20万円超の最新折りたたみスマホだ。
サイゼリヤの注文方式は単純だ。テーブルにタブレット端末は置かない。電子棚札のような小さな札にQRコードが表示されており、客は自分のスマホでこれを読み取る。あとは手元の紙メニューを見ながら、4桁の商品番号と数量を画面に入力していくだけだ。
専用端末を全席に置く費用がかからず、紙メニューを生かしたまま注文だけをデジタル化できる。人手不足の時代に、これ以上ないほど合理的な仕組みである。
ただし、合理的なのは店側の話だ。通信量もバッテリーも端末との相性も全て、客のスマホ側が引き受ける。そこに今回、最先端の落とし穴が見つかったのだ。
横開きタイプの折りたたみスマホは本のように展開すると、8インチ前後の画面が現れる。この大画面がほぼ、正方形に近い比率になっている。サイゼリヤ側のシステムは縦横比から「これは横向きだ」と判定し、アクセスを止めてしまうのだ。
本人がいくら縦に構えていても無駄である。技術系の利用者からは、OSが返す向き情報ではなく画面比率から直接判定しているのではないか、という考察が出ている。
事実、Googleの折りたたみスマホ「Pixel 10 Pro Fold」を開いた状態では注文画面に入れないが、閉じて外側の小さい画面を使えば普通に注文できる。同じ横開き型のGalaxy Z Fold7やOPPO Find N6も構造が似ているため、同種の現象が起きうるという。
客が「裏技」を探さなければならない「本末転倒なセルフオーダー」
回避策はある。まずは端末を閉じて、カバー側のディスプレイで注文する方法だ。もうひとつは、画面分割機能でブラウザの表示領域をわざと縦長にするというもの。
ただし、20万円超のスマホを使うのに、わざわざ閉じて小さい画面で打ち込むのは本末転倒な気がする。分割表示にいたっては、操作に慣れた人間でなければ、まず思いつかない。便利になったはずのセルフオーダーで、客が裏技を探している。これはおかしい。
この問題は今のところ、横開き型の折りたたみスマホを持つ一部の人の珍トラブルで済んでいる。ただ、Bloombergは、Appleが今秋にも初の折りたたみiPhoneを投入する見込みだと報じている。iPhone 18 Proと同時期の発表になるとの見立てだ。
形状は本を開くようなブック型で、内側はiPadに近い比率になると予想されている。これが報道通りなら、PixelやGalaxyの話では収まらなくなる。客のスマホ頼みの注文画面はサイゼリヤに限らず、居酒屋や外食チェーンのあちこちにあるのだ。
縦開きのFlip型なら、開いても結局は縦長になるので同じ問題は起きにくい、との指摘がある。だが横開き型の利用者が増えれば、同じような相性問題は広がりかねない。客の端末がタブレットに近づいていくのに、店側のウェブ設計は「普通の縦長スマホ」を前提にしたままなのだ。
サイゼリヤの注文システムはもともと、UI(ユーザーインターフェース)設計の評価が高い。その優等生ですら最新端末ではじかれるなら、もっと簡素に作られた他店の画面では、どんな機種が引っかかってもおかしくない。合理化のツケは、客の指先とストレスへ回ってくるのだ。
(ケン高田)

